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管楽器のためのフィナーレ/解説

全体解説

 今年の課題曲4、管楽器のためのフィナーレ、作曲の伊藤康英さんによる解説がスコアにありのますので、少しそれに沿って書いてみたいと思います。

 まずこの曲は、『古典的な主題労作に基づく変則的なソナタ形式』で書かれているとあります。主題労作とは、主題(メロディ)を構成する小さな音のまとまり(動機・モチーフ)を細かく分割し、それらを変化・発展・展開させながら組み合わせて楽曲全体を構築していく手法です。これについてはあとでまた書きますね。

 ソナタ形式とはなんでしょうか。みなさんきともう勉強されましたよね。この楽曲に触れた人たちがいろいろな音楽や形式に興味を持って学ぶことも、伊藤さんは望まれているのだと思います。ソナタ形式は18世紀、ハイドンやモーツァルト、ベートーベンなど古典派の時代に確立された楽曲の形式。交響曲やソナタのとくに第1楽章で多く使われた形式です。典型的なものとしては、たとえばベートーベンの交響曲第5番「運命」の第1楽章、モーツァルトの交響曲第40番の第1楽章、ベートーヴェンのピアノソナタ「悲愴」や「熱情」などたくさんあります。音を探して聴いてみてください。

 提示部で、第1主題と第2主題の2つの主題が出てきます。2つの主題の性格の違い、たとえば第1主題はリズミックで第2主題は流れるようなメロディであったりします。
 展開部では、提示部で出てきたテーマや動機を使って音楽が発展、変化していきます。
 再現部では、提示部で出てきた第1主題と第2主題が戻ってきます。
 提示部の前に序奏(イントロ的なもの)、最後にコーダ(アウトロ的なもの)がつくことも多いです。

 では、管楽器のためのフィナーレではどうなっているのでしょうか。楽曲の全体を俯瞰する意味合いからも把握しておくのがいいと思います
 冒頭から7小節目までが「序奏」。8小節目から[D]の前までが、提示部第1主題。[D]から[F]の前までが、第2主題。[F]からが展開部。[I]からが再現部、第1主題。[J]から第2主題。[L]からコーダという構成ではないかと思います。

構造

 「敬愛する作曲家の晩年のハ長調作品を、モティーフの展開に関連付けて引用しました」とあります。きっとこの曲だと思います。

モーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」の終楽章。
 「さらに、吹奏楽の古典名曲への敬意も込めました」とあります。きっとこの曲ではないかと思います。

ホルスト第1組曲の「シャコンヌ」。それぞれどこに出てくるのかは、のちほど書きますね。

 謎解きはこのくらいにして、では、この曲を演奏する上で大切なことはなんでしょうか。ハーモニーを感じてみることも、とても大切です。もちろんほかの曲でもそうなのですが…。その上で、それぞれのモチーフのキャラクターを統一したり特長をきちんと出すことが、とても大切だと思うのです。アーティキュレーションや強弱、重心や山、歌い方、それぞれのキャラクターが立つようにすることで、とても立体的な演奏になると思います。

 どんなモチーフが出てくるのか、拾い上げてみました。

モチーフ1

モチーフ2

 これを忘れてるよ、とか、これは違うのでは?、とかあるかもしれません。それぞれの譜例のあたまに書いてある数字は、最初に出てくる小節数です。1枚目の画像が提示部までに出てくるモチーフ、2枚目が、展開部以降に出てくるモチーフです。概ね出てくる順にまとめてみました。

 9~30は、リズミック系の第1主題に出てくるモチーフ。35~53は、レガート系の第2主題に出てくるモチーフ。9は、冒頭の主題を上下ひっくり返したように見えますね。53は、冒頭の主題の変形に見えます。59から展開部。73は65(全音符の方)を逆さまにした形、74は65(4分音符の方)を逆さまにした形ですね。65は途中からキャラが変わります。レガート系からアクセント系へ。演じ分けましょう。この73がきっと、モーツァルトのジュピターだと思うのです。そして81は、59の変形。拍子の違いにも注目。ここがホルストだと思うのですが…。83は53を速くしたもの、あるいは81の変形ですね。

 それぞれのモチーフ、どこに重心を置きますか。どこに向かいますか。どんなアクセントにしますか。どんなスタッカートにしますか。同じモチーフでも性格が変わって出てくるものもあります。それぞれにキャラを作って統一し、演じてみてください

 もちろんどの曲もですが、この曲は特に打楽器の果たす役割が大きいと思います。場面の演出、表現や推進力(特にコーダ)、よく研究してみてください。

 もし、このホームページの『基礎合奏スケール』(楽譜倉庫にあります)をされているバンドでしたら、この曲に取り組むにあたり、c-moll、g-moll、C-durをされるといいと思います。

トロンボーンパート解説

 トロンボーンパートについて見ていきます。この曲のトロンボーンセクション、3rdはもちろんテナーではなくバストロンボーンがいいと思います。そして全体として音域が低めです。特に大切な動き、たとえばFの2小節目(57)の他パートとの掛け合いや、Hの4小節目(80)、Lの2小節目(127)からの大切な動きなど、低い音域から始まりますね。この音域が苦手な人も少なくないかもしれません。特にLは豪華で包容力のあるしっかりとした音でクリアに欲しいところです。太い息で、響きの研究をしてみてください。

 Hの7小節目(83)からのオクターブの動きはトロンボーンだけですね。大切です。オクターブは下をしっかり。2nd,3rdが思ったより大きめに吹いた方が安定します。それから、2回出てくるグリッサンドですが、Jの1小節前(104)は木管楽器の動きに寄り添うようにニュアンスを合わせて。Mの2小節前(136)はアクセント系のグリッサンドではなく中身のしっかりつまった太いグリッサンドで全体を下から押し上げるようなイメージでいくといいのかな、と思います(1st,2nd)。張った音で。でも、正解はないのでバンドのサウンドづくりに合わせて工夫してみてくださいね。

 それでは、いい演奏になりますように。

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2026年度課題曲IV
解説/福見 吉朗

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