夕映えの丘/解説
全体解説
今年の課題曲1、『夕映えの丘』、作曲の森山さんは社会学者さんでもあるのですね。そして合唱を中心に作曲されているようで、合唱の朝日作曲賞も受賞されています。歌を多く書かれている方だけあって、この曲もどこか合唱曲のようです。どの曲でも有益なのですが、特にこういう曲では、楽器で合わせるだけではなく歌って合わせてみる。合唱をするつもりで取り組んでみることもとても有益だと思います。また、どこか物語のようなところもあるので、それぞれの動きに歌詞をつけてみるなどもイメージを広げる助けになると思います。
さて、どうして『夕映えの丘』なのでしょうか。もしかしたら、夕日に映える丘を見ながら、あるいは夕日が注ぐ丘の上で、なにかを回想しているようにも感じます。そういうストーリーを想像してみるのもいいと思います。なぜこんなことを書くのかというと、楽曲にどれだけ思い入れられるのかは、もしかしたら演奏の成否を最も左右する要素なのではないかとすら思うからです。
次に、出てくるおもなメロディ、モチーフを示しておきます。
[1]が、メインの旋律。A5小節(9)とB(15)で繰り返され、後半F(53)とG(61)で戻ってきます。G(61)では2グループに分かれて1拍ずらした輪唱のような形で現れます。
[2]は、メインの旋律に対する対旋律ですね。A5小節(9)とB(15)に現れます。
[3]は、森山さん曰く「気分を盛り上げる」メロディ。A2小節前(3)に現れ、後半G2小節前(59)にも現れます。
[4]は、中間部で使われるメロディ。悲しみのメロディのように感じますね。D(32)に現れますが、C(24)で金管が奏でる動きが発展してこのメロディになるとも言えると思います。
[5]は、希望を取り戻すメロディという感じがしますね。E(40)に現れます。
[6]は、A2小節目(6)でピッコロ、フルートが、終結部79小節目でユーフォニアムが奏でます。なんだか回想のきっかけ(幕開けと終結)を示しているような気もしますね。
おもなメロディ、動機を把握しておくこと、同じ動きはどこに出てきたのか、出てくるのか、その統一と、前との違いはなにかを考えてみることは演奏の助けになると思うのです。
次に曲の構成を見ていきましょう。序奏があって、A5小節目(9)からメインテーマが出てきます。B(15)でそれが繰り返されるのですが、C(24)で悲しみがやってきます。ここが中間部といってもいいと思います。E(40)で希望を取り戻してエネルギーが増し、F(53)でメインテーマが雄大に戻ってきます。それがさらにG(61)で拡大され、H(71)からの終結部に向かいます。どこがクライマックスなのか、全体を俯瞰して起承転結をつけることは大切です。強弱指示や楽語(DolorosoやGrandiosoなど)もこまかく書かれていますので、意味など調べてくださいね。楽語はほとんどがイタリア語なので、元々の意味や由来なども調べられるといいですね。
曲の中に出てくるいろいろな動き、一見関係がなさそうに見えて、じつはとても関係がある、ということがあります。たとえばA5小節目、テナーサックスとバスクラに出てくる[2]の動き。メインメロディに対する対旋律ですね。これに対してファゴットとホルンに出てくる動きがあります。この2つ、関連性のない別の動きのようにも見えますが…
いちばん上がホルンとファゴットの動き、2段目がテナーサックスとバスクラに出てくる[2]の動き、3段目がバス(バスクラ、テューバ、コントラバス、トロンボーンも音は同じ)です。音を聞いてみると…
楽譜の赤丸で示したところ。音がぶつかって解決しているのがわかりますか。倚音的な動き。この美しさを感じてほしいと思うのです。そして、B(15)の部分では…
ファゴット、アルトクラ、テナーサックス、ユーフォが奏でる[2]の動き(いちばん上)に対して、2段目はホルン、3段目はトロンボーンと低音(バスクラ、バリトンサックス、テューバ、コントラバス)です。ホルンとトロンボーンは一見ただのベルトーンのように見えて、じつは[2]の動きをなぞっているのですね。[2]の動きの各1拍目が休符であることから、低音もセットで捉えるといいと思います。そしてB5小節目(19)、リズムのかみ合いと、A5小節目からのような倚音的動きにも注目してください。ぶつかって解決する美しさ。
こんなふうに、一見関係がなさそうな動きがじつは関連し合っているということが少なくありません。こういうのを見つけて意識を向けて行く、これ大切だと思います。これをただのベルトーンとしか捉えず無機的に演奏するのとでは雲泥の差だと思います。
そしてそのあとB7小節目(21)、他パートに先行してアルトクラ、テナーサックス、ホルン、トロンボーンが2拍目でフォルテになっていることに注意。メロディの動きを受けて際立つように。この動きに導かれるように他パートのクレッシェンドがあるようにも見えますね。
もちろんハーモニーも大切です。たとえば…
冒頭3小節目に出てくる「気分を盛り上げる」メロディは、こんなハーモニーになっています。
音も聴いてください。
この最後のぶつかり、この響きの美しさを、全員が身体に(意識に)入れて演奏するからハーモニーが出来るのです。ただ自分の音のことだけ考えて演奏するのとでは雲泥の差だと思います。響きを、よく感じる。その中での、自分の音の居場所。
その同じ「気分を盛り上げる」メロディ、後半G2小節前(59)では、こんなハーモニーを伴っています。
音も聴いてください。
コードネームとか理屈はわからなくていいのです。響きを、よく感じてみてください。この2つのハーモニーの違いは、とんな心の変化によるものだと思いますか。聴きくらべてみてください。そしてこの部分、ホルンにしかない内声がありますが、ハーモニーを決定づけるので大切です。
バランスと強弱表現にも注意を注ぎたいです。メインテーマが戻って来るF(52)、それがさらに拡大されるG(61)では、メインテーマを奏でる楽器が減る(アルトサックス2、テナーサックス、トランペット、ユーフォニアム)ので、しっかり欲しいところです。特に音が下がったところは沈みやすいと思います。それに対して1拍遅れで追いかけるピッコロ、フルート、オーボエ、クラリネット群とアルトサックス1は対等に欲しいところです。
トロンボーンパート解説
トロンボーンパートについては、小編成なので2パートしかありません。その2パートだけでなにかをしているという場面はじつは少なくて、どこかのパートと関連して、あるいは共同作業しているという場面が多いです。ときには1番と2番が別々のグループに属している場面もあります。ですので、パートで合わせるというよりは、同じことをやっている、あるいは関連のあるグループで合わせるということが有益だと思います。
H(71)からのファンファーレキャラクターはトランペットパートとセットです。3連符はトリプルタンギング「TuTuKu」または「TuKuTu」が必要だと思います。とくに「Ku」の発音が弱くなりがちだと思うので、ゆっくりやって「Ku」をはっきり出す練習をしてください。この部分、トランペットだけではなくホルンやユーフォニアムとも合わせてみてください。
それでは、いい演奏になりますように。
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