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トイズ・パレード/平山雄一

全体解説

 この曲は、課題曲に多くある4拍子のマーチですが、個性的な楽しい曲ですね。作曲の平山さんは、『アメリカのミュージカルで登場人物たちが全員で合唱しているような場面』をイメージしたと書かれています。テンポも含めて変化に富んだ曲ですので、平山さんも言われていますが、いったいどんな場面なのかを想像したりみんなで物語を作ってみたりしてイメージをふくらませてみるのもいいと思います。さて、この曲のTutti率(全体に占めるTuttiの部分の割合)ですが、約47%で、これは課題曲のマーチとしては平均的だと思います。

 楽譜を見てまず気づくことは、アーティキュレーションの指示は細かくされている割に、強弱の指示が少ないということです。強弱指示がないところは、『その前と同じ』とも取れるのですが、『表現の余地が残してある』というふうにも見えるように思います(のちほど述べます)。そして逆に、パーカッションにはアーティキュレーション指示が少ないです。平山さんは『課題曲の通例を参考に』と書かれていますが、打楽器の人はぜひ、自分と同じ動きの管楽器のアーティキュレーションをチェックしてくださいね。打楽器単独の動きもありますが、管楽器と同じ動きも少なくない。その管楽器がどんなふうに演奏するのか、それをわかっておくことは大切ですよ。

 旋律中の、また、各あとうちの8分音符にスタッカートがたくさんあります。たとえばあとうちの8分音符はスタッカートが書いてなくても短めに演奏するのが通例だと思います。それをわざわざ書いているのは、ことさらに短く欲しいのか、それともわざわざ書いてくれているのか…、多くは後者のように思えるのですが、たとえばあとうちにしても、それがどんなあとうちなのかのイメージを持つことは大切ですね。つまり、アーティキュレーションを『律儀に守る』というのではなく、その意図を推し量り、そのパッセージのイメージを持つことが大切だと思います。

 ホルン、トロンボーンに多く出てくるあとうち、いつも言っていることですが、単なるリズム打ちではなく、すべてがハーモニーです。ハーモニーの響きと流れをよく感じて。長い音にして合わせてみましょう。 楽譜倉庫 に、あとうちハーモニー練習楽譜がありますので活用してください。一応コードネームが書いてありますが、理屈よりもまず、響きをよく感じて。合わせる時にはぜひ、低音楽器も一緒に。

 イントロには特にクレッシェンドは書いてありませんが、3小節目のあたまが到達点、山になります。それを意識に入れておくことは大切ですね。[A]から、旋律はmf、そのほかはmpです。[B]2小節前、旋律以外にクレッシェンドがあり、1小節前で旋律と同じmfに。旋律の動きが中低音の動きにリレーされる感じですね。そして[B]や[E]、[J]の木管トリル、意思を持ったディミヌエンドで。ディミヌエンドがあるトリルとないトリルの吹き分けを意識して。

 [B]2小節目、旋律以外の動き、3拍目のスタッカートは少し意識してみると、裏からの低音の動きが効果的になるかもしれませんね。低音は、Tuttiの中でしっかり顔を出すように。こういうところ、場面を想像してみましょう。それから[C]には強弱の指示がありません。前と同じfと捉えることもできますが、少しテンションが上がるのもアリだと思います。そのあと3小節目は前とのコントラストを。なにしろこの曲の場合、場面のコントラストを意識することが、ひとつのポイントだと思います。

 ハーモニーにも工夫が施されています。その響きを、個々がよく身体に入れて演奏しましょう。たとえば[D]や[H]の部分、エンディングの部分などは特に、全部テヌートにしてゆっくりのテンポで合わせて響きを感じる『響きの譜読み』をしてみてください。全体のハーモニーの響き、その移り変わりを、個々がちゃんと感じて。[D]5小節目と6小節目のそれぞれ3,4拍目や[I]3小節前~2小節前など、そこだけ取り出して響きを感じてみたり、あるいは鍵盤で鳴らしてみたりするのも有益だと思います。たとえば[D]の部分、ピアノの音でゆっくりのテンポの音源をつくってみました。ハーモニーの響きを感じてみてください。

 そして[D]の旋律、1拍目裏の4分音符には珍しくアーティキュレーションがつけられていません。これは長めにするのとマルカート的にするのと両方アリなように思います。考えてみましょう。

 [E]にも強弱がありませんね。その前と同じfでもいいのですが…、なにしろイントロからトリオに至るまで、起承転結というかテンションの変化を全体を俯瞰して見据えておく、設計図を描いておくことは大切だと思います。それから、[E]7小節目3,4拍の4分音符、[B]7小節目にはなかったアクセントがあります。さて、その意図は何でしょうか。ちなみにオーケストレーションは同じですね。

 トリオの旋律、レガートの中の跳躍を美しくつなげて。そのためには下の音にたっぷりの息を。この部分に限らずですが、声で歌ってみる練習も有益ですよ。これはハーモニー練習などにも言えることです。ところで、『leggiero』の意味は?

 [G]の旋律、オーボエと1stクラ、1stアルトがユニゾン、そのオクターブ下が2ndアルト、下が少ないのです。さらに上の音域が少し高めなので、2ndアルトしっかりめに鳴らしてあげるといいかもしれません。クラリネット2,3は、その間でハーモニーです。そして5小節目からはフルート、オーボエ、エスクラ、1stクラが旋律、2,3クラと1,2アルトがハーモニーなのです。サックスが珍しく内声に来ることで、リッチなサウンドになるかもしれませんね。これらの旋律グループのバランスとサウンドの作り方、工夫してみてください。

 [I]からの『poco a poco accel.』は、『手拍子しながら歌って合わせる練習』と、『指揮なし合奏』を、ぜひやってみてください。

トロンボーンパート解説

 それではトロンボーンパートを見ていきましょう。イントロ、アクセントがついていますが、書いたようにアーティキュレーションは『律儀に守る』のではなく、どんなパッセージなのかをよくイメージして。このリズム(モチーフ)は、[C]の低音メロディ、トリオへのブリッジにも使われていますね。気づいていますか。3ヶ所とも、木管のこまかいリズムとの関係に意識を向けてみたり打楽器さんたちと合わせてみたりするといいと思います。[B]2小節前、こういうところはハーモニーを大切に。[B]1小節前の動きは木管のメロディからバトンをもらう感じで受け渡しスムーズに。2拍目のB音は5ポジションの使用も検討しましょう。[E]1小節前、[J]1小節前も同じです。

 [C]アウフタクトからの旋律は、少しゆっくりレガートでも練習してみましょう。息の流れのつながりに意識を向けて。3小節目と7小節目でそれまでのユニゾンからハーモニーになることに注意。[D]1小節前の決めは、身体の中に8ビートを持ってリズムを冷静にきちんと。もちろん、何度も書きますがハーモニーを大切に。[D]からのあとうち、書いたようにハーモニーの流れを合わせてみてください。その中で、1stの半音ずつ下りるライン(D→Cis→C)、意識に入れてみましょう。そして、あとうちも『フレーズで捉える』こともポイントです。

 [E]、[J]の対旋律、まずグリッサンドですが、ポイントは、グリッサンドの途中の音も全部鳴らすこと。そして3拍目の到達点を意識して、そこへ向かってどんなスピードで上がるのか、つまり言い換えれば2拍目のどのあたりから上がり始めるのかのニュアンスを、メンバーでよく合わせましょう。もちろん2拍目6ポジションのCの音程よく合わせて(アルトクラ、テナーサックス、ユーフォとも)。手の感覚や見た目のスライドの位置よりも、まずはその動きを声で歌ってみたり、mfくらいで少しゆっくりやってみたりして、自分の耳で判断する練習をしましょう。そして、ユニゾンのところとハーモニーになるところを意識に置いて。吹き方だって変わってきます。

 [G]からのルンバ型あとうち、もちろんハーモニーを大切に。そして、1拍目と3拍目(奇数拍)にちょっと重心があって、そのエネルギーで進んでいく2ビートのような感覚がわかると音楽的になると思います。と、8分音符は軽くなりますよね。律儀にスタッカートがたくさん書いてある楽譜なのに、ここの8分音符にはスタッカートがないことに注意。低音と一緒に練習を。[K]の動き、トロンボーンにはレガートが難しいですね。最初のCは1ポジション、6ポジション、両方やってみましょう。

 それでは、いい演奏になりますように。

2021年度(2020年度)課題曲I
解説/福見 吉朗

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