FUKUMI, Yoshiro's Homepage

マーチ・シャイニング・ロード/木内涼

全体解説

 今年のマーチ2曲のうちのひとつ。課題曲ではよくある4/4拍子のマーチです。つくりはオーソドックスですが、オーケストレーションは厚く書かれていて、Tutti率(全体の中で全奏の部分が占める割合)を計算してみたら、約58%でした。後半[H](65)以降はずっとTuttiなんですよね。ですので頑張りすぎず、ペースを考えて演奏することも大切だと思います。

 6小節の前奏を経て[A](7)からテーマになりますが、この部分、『ちいさな世界』に似ていると言う人もいますね。このテーマのモチーフが、後半[I]のブリッジに使われていたり、そのあと[J](81)、[K](89)の木管のオブリガートに使われていたりと、全体で筋が通った構成になっています。せっかくそういうふうに書かれていますので、そのモチーフの音型、キャラクターを統一するなど、演奏の上でも留意したいところです。

 当然のことですが、マーチですので基本的には元々は行進のための音楽です。テンポが一定で最初から最後まで一本筋が通った中で、場面の変化やキャラクターの変化、歌をつくっていくことがまず基本的に大切なことです。歩きながら演奏とまではいかなくても、もしできればマークタイム(足ぶみ)しながら演奏したり歌ったりしてみることは有益かもしれません。もちろんバンドによって効果的な練習は変わってきますので、よく変化を観察しながら。

 打楽器はオーソドックスに書かれていますが、やはり大切です。大きすぎてはいけませんが、付け足しのようにはならないように、打楽器と伴奏型のあたまうち、あとうち、これできちんと流れができるように。あたまうちの低音は、もうひとつのメロディです。それから、管楽器のあとうちはハーモニーであるということを決して忘れないように。ただのリズム打ちではありません。ホームページの 楽譜倉庫 に『あとうちハーモニー練習楽譜』が置いてありますので、ホルンとトロンボーンの人はぜひ低音楽器を誘ってハーモニーの練習をしてください。あとうちになってもハーモニーがちゃんと聞こえるように。そして打楽器、自分と同じ動きの管楽器に書かれているアーティキュレーションをすべて把握しておきましょう。

 この曲、必要なアーティキュレーションはちゃんと書かれていて,でも必要以上には書いてありません。書かれたアーティキュレーションのニュアンスをよく感じ取って演奏することが大切ですね。たとえばアクセントは、決して『ぶつける』ではありません。あっ、『はっきりと』でもありませんよ。

 前奏、トランペットやトロンボーンの人も、ホルンや低音にある『骨のリズム』(その部分の骨格を成すリズム)をちゃんと意識に入れて演奏するといいと思います。3小節目3拍目は全員が8分休符です。この一瞬のスペースがちゃんとできるように留意したいところ。打楽器は2拍目裏の8分音符をちゃんとミュートしてください。

 [A](7)とTrioの[E](41)は低音に木管がありません。小編成なのでコントラバスはオプションですが、ここにコントラバスがあるのとないのとでは発音がかなり変わってくると思います。できれば欲しいな、と思ってしまいます。

 [C]4小節目(26)、B♭のコードが3拍目でBdimへ。これは次の小節のCmを導くハーモニーですから大切にしたいところ。特徴音の実音Hは2ndフルート、3rdクラリネット、2ndトランペットにしかありません。だからといってこの音を不自然に強調したりするのではなく、全体の響きをよく感じて。

 テーマが出てくるたびにオーケストレーションが変えて書いてあります。[D](31)には[B](15)にはなかったトランペットとトロンボーンが加わる、というふうに。各所に出てくる新しい要素はちゃんと聴かせたいポイントですね。そしてオーケストレーションが変化する分、全体の強弱もmfからfに上がっています。全体としての強弱ですので、フォルテになったからといって頑張りすぎず、全体のバランスをよく聴きたいところです。

 [J](81)の後半mfに落ちます。効果的に決めたいですね。躍動感を持ったまま、後に続くクライマックスを予感させたいところです。そのあとのフォルテを導くトランペットのベルトーン、tuttiの中で聴こえにくいかもしれませんが、力まずよく響く音で。[J]の前のホルンのグリッサンドも決め所です。

トロンボーンパート解説

 それではトロンボーンパートを見ていきましょう。この曲のトロンボーンパートはオーソドックスに書かれていて、特に変わったところはありません。3rdも特にバストロンボーンでなければならないという箇所もないので、ムリにバストロンボーンで吹かなくてもテナーバスでよいと思います。もちろん持ち替えたりする必要まではないですよ。そして、書いたように、あとうちも伴奏型もハーモニーを大切に。

 [A]5小節目(11)と[B]5小節目(19)からのハーモニーはトロンボーンだけ。美しく、そしてリズムを歯切れよく聴かせたいところ。3rdの半音進行大切にしたいです。そしてクレシェンドは別物にならずメロディに寄り添って。[C](23)アウフタクトからの旋律は、フレーズ感を大切に、そしてぜひレガートでも練習してみてください。[D]1小節前(30)は、1拍目あたままではハーモニーですが、16分音符からユニゾンになります。ユニゾン部分は少し軽めに。4拍目からまたハーモニーですね。[D](31)からのハーモニーも美しく。

 Trio、[E](41)から出てくるルンバ型あとうちは、4分音符にちょっとだけ重心を置いて、8分音符は軽く。フレーズとハーモニーを感じて。単なるリズム型ではなく、フレーズとしてのつながりが感じられるように、ということです。この形、もし各パートを複数人で吹いているセクションなら、1人ずつにしてみるのもアリだと思います。重ねた響きがいいか、1本ずつの響きがいいか、ということも考えてみる。でも、どれが正解というのはありません。

 クライマックス[J](82)、[K](89)の、トランペットやサックスとのユニゾン旋律、マルカートで堂々と。そして『歌』を持って。

 それでは、いいステージになりますように。

ページトップへ戻る

課題曲解説/目次へ