FUKUMI, Yoshiro's Homepage

勇者のマズルカ

全体解説

 2006年の課題曲『海へ・・・吹奏楽の為に』を作曲された三澤慶さんの曲。マズルカというのはポーランドの民族舞踊です。ポーランドの作曲家ショパンがマズルカのピアノ曲をたくさん書いていますね。ちなみにポーランドの国歌は『ドンブロフスキのマズルカ』という曲です(YouTubeやWikipediaで音が聴けます)。

 マズルカは3拍子の舞曲です。一般的には2拍目または3拍目にアクセントが置かれ、1拍目は符点リズムになることが多いのがマズルカ。『勇者のマズルカ』の場合、とにかく符点リズムがたくさん出てきますね。これがきちんとできないと、しまりのない演奏になってしまいます。ですのでどの楽器も符点リズムの攻略が大きなポイントになってきそうです。このあたり、2008年の課題曲『ブライアンの休日』を思い出しますね。

 時々出てくるヘミオラのビート感(たとえば[E]の5~6小節目、[G]の13~14小節、[H]3~4小節など)。こういうところでつまったり引っかかったりすることなく自然に流れるようにしたいです。さらに、16分音符の動き、スピード感を失わないようにしたいです。運指もよく練習しなければならないでしょうが、息の使い方もポイントになるかな、と思います。

 それからこの曲、打楽器が重要な役目を担っていますね。しまりのある演奏にするためには、打楽器の責任が大きそうです。どんな曲でもそうですが、今年の課題曲は特にそうですね。スネアのリズム感、タンバリンやトライアングルなどの音色にもこだわりたいです。あと、ユーフォ、テューバ、大変そうですね。テューバなど低音群は頭打ちが重くなったりすると音楽が鈍くなってしまいます。タイトにいきたいです。ただし力任せにならないように。

 [I]からのゆっくりの中間部はDes-dur。フラットが5つもありますから、濁りのない響きにするためには、各楽器とも音程を楽器任せにせず自分で音程をつかむ。歌う、声でも歌えるくらいになる(ソルフェージュ)ことが大きなポイントになると思います。

トロンボーンパート解説

 それではトロンボーンパートを見ていきましょう。まず全体をとおして、たとえ短い8分音符やアクセント音型でも、そのひとつひとつはハーモニーになっているということを忘れないようにしましょう。自分の音だけではなくパートとしての、さらには全体としてのハーモニーに意識を向けましょう。ハーモニーを取り出した練習をしてみましょう。

 冒頭、Cのコード、2拍目に鳴っている他の金管群のC音からハーモニーを取る意識。金管セクションでゆっくり確認してみるのもいいと思います。1stのE音は高くなりがちなので要注意。5小節目『sub.p』の直前までピアノの気配を感じさせないように。そしてその5小節目から半音ずつ上がっていく三和音、よく合わせましょう。それから[A]のあたま、ホルンにきれいにつながる意識を。

 [A]9小節目、3拍目にアクセントが来るマズルカの典型リズムです。この部分、ハーモニーはE♭m7がCの上に乗っていると考えるといいと思いますが、そういう仕組みよりもまず、ハーモニー全体の響きをよく感じて。そして、16分音符で動いているパート(ここではフルート)と一体になるようにイメージしましょう。2ndの3拍目B音は5ポジションで吹く手もありますね。ただしその場合Gesの5ポジションと同じ場所ではないので音程注意。

 [B]の1小節前はFの長三和音、[B]のあたまはFの短三和音。これがはっきりわかるように大切にハーモニーを作りましょう。2ndの役割が特に重要ですね。こういう長調と短調の切り替わり箇所は、このあとにも[G]の2~3小節、[P]の2~3小節に出てきます。

 [B]9小節目は[A]9小節目と同様ですが、強弱がmfに上がって、16分音符の楽器もずいぶん増えています(クラリネット群、サックス、ファゴット、テューバ、コントラバス)。そのあと、[A]11~12小節のFのコードもよく合わせましょう。ホルンや低音群とも合わせてみましょう。

 [E]からあとうちですが、4分音符ですからこれをどれくらいの長さや形で吹くかはよく検討しましょう。パートで形やハーモニーを合わせて。ここはあたまうちにテューバがいません。[F]から入ってきます。このあたりも意識してみましょう。

 [G]1~2小節はFの長三和音。それを決定づけている第3音は2ndトロンボーンにしかありません([P]も同様)。そして、3小節目はホルンへ、7小節目はホルンから、受け渡しがスムーズにつながるよう、バランス(強弱)など気をつけて。

 [H]、3rdのC音は、F管ではなく6ポジションを使うことも検討しましょう。

 [I]からゆっくりの中間部です。ハーモニーを大切に。2006年の『海へ... 吹奏楽の為に』もそうでしたが、トロンボーンのハーモニー、開離配置(各音間が離れいている配置)が何箇所か出てきます。各自が豊かな響きを持ってハーモニーを作りましょう。

 [I]の2小節間はもちろん金管セクションでよく合わせましょう。3rdのGesと2ndのDesは根音と第5音ですから、5ポジションがいい加減にならないよう、しっかり完全五度を作りましょう。もちろんテューバともよく合わせます。Des-durは、こういうハーモニーの基幹になる音に5ポジションというどちらかというと少し難しいポジションの音が来やすい調性ですので、注意深くハーモニーを作っていきましょう。スライドの位置も大切ですが、よく聴き、歌ってみること。音程は手が決めるのではなく耳が決めるのですから。

 [J]、[L]はシンコペーションのリズム、4分音符はどちらかというとベタのテヌートではなくアクセントぎみにしてうしろを少し抜く三角型がいいと思いますが、これは好みですのでそれぞれのバンドで意思を持って決めて合わせましょう。もちろんハーモニーの意識。2nd、F音を6ポジションで吹く手もありますが、どちらでも一長一短かもしれませんね。[L]はフォルテに上がりますが、硬くならず豊かな響きで。

 最後3小節フォルティシモのアクセントは、硬くならず堂々と。息の支えやユニゾンの確認のために、長めのテヌートでの練習もしてみましょう。

ページトップへ戻る

課題曲解説/目次へ