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吹奏楽のための綺想曲「じゅげむ」

トロンボーンパート解説

 生まれた子どもにめでたい名前をつけようと、縁起のいい言葉のどれをつけようか迷った末に、結局全部つけてとんでもなく長い名前になった、という、古典落語の『寿限無』を題材にしたこの曲。寿限無のお話は調べてみてくださいね。

 その長い名前というのが、『じゅげむ じゅげむ ごこうのすりきれ かいじゃりすいぎょの すいぎょうまつ うんらいまつ ふうらいまつ…』(寿限無、寿限無、五劫の擦り切れ、海砂利水魚の水行末 雲来末 風来末)まだまだ続くんですが、これ、[A]の部分のメロディ(アルトクラ、アルトサックス、ホルン、ユーフォ)にぴったりはまりますね。というか、きっとこれにメロディを付けたんですものね。トロンボーンは『じゅげむ…』のところは伴奏ですが、自分の楽譜だけじゃなくメロディもちゃんと身体に入れておくことは大切だと思います。

 さて、その[A](5)ですが、打楽器や低音群と一緒にアクセントを入れる役割。でもちょっと待って。まずひとつひとつの音の響きを順に確かめてみましょう。自分の楽譜の音符だけじゃなくて、セクションで同時に鳴ったときの響き。これを忘れないようにしたいです。単なるアクセントの打ち込みではなくて、そのひとつひとつがちゃんとハーモニーであることを忘れずに。

 そして、たとえば[A]1小節目3拍目裏のように拍の裏に音がある時は特にですが、おもての3拍目を意識しすぎたりそこでタイミングを取ったりすると逆に重くなったりしてうまくいきません。8分音符単位で拍をカウントして、その流れの中で吹く。『タイミングを合わせる』ではなく、『流れに乗る』、流れの中にいるという意識が大切。自分の中にちゃんとテンポがあること。アクセントは力まないで淡々と、でもしっかり。

 [B]の4小節目(14)から、まず1st、[B]5小節目(15)のB音は5ポジション(ちょっと近めの)も検討しましょう。アーティキュレーションや音のスピード感、アクセントのニュアンスなど、トランペットの1stとよく合わせましょう。2nd、3rdは、気をつけることは[A]の部分と同様です。アクセントは2種類出てきますね。[A]は山型アクセント、[B]は普通のアクセントですからきつすぎないように。

 [C]から、F音とC音の五度。響きをよく合わせて。3rd、1小節目は下のFがもちろんベターです。F管1ポジションでは通常低くなると思いますので、6ポジションで。1stの2小節目、2ndの3~4小節目、C音は低くなりがち、逆に1stの3~4小節目のFは高くなりがち。気をつけて。[D]の2小節前(23)、ここは全員Ges。5ポジションの音程、低音群ともよく合わせて、しっかり決めて。山型アクセントですがタンキングは軽く。

 [D](25)からは低音群とトロンボーンの掛け合いになっています。まず長い音にして響きを合わせてみましょう。2ndと3rdの4度、1stと3rdの5度、それぞれよく合わせて。楽譜どおりに8分音符で吹いた時も、この響き、ハーモニーが聞こえるように。[D]7小節目(31)はテンポが変わりますから、トランペットやホルンとブレスを合わせて。

 一転して[E]からの中間部、作曲の足立正さんは『子守歌』だと言っておられます。『子守歌には二面性がある』とも。優しさと切なさ、安堵感と緊張感…。ここではトロンボーンはハーモニーをつくる大切な役割。その二面性も含めたさまざまな色合いがちゃんと出せるように、きちんとハーモニーさせましょう。

 [E](34)から4小節間はユーフォとも一緒に合わせましょう。1st、1小節目3拍目、2小節目3拍目のE音は高くなりがち。気をつけて、きちんと長三和音第3音にしてください。3rd、2小節目のテヌート4分音符、ユーフォとともにはっきりしゃべって。[E]7小節目(40)アウフタクトから、こんどは低音群と合わせて。この小節は4和音(Gm7とAm7)になりますね。

 [F](42)からの伴奏型はトロンボーンだけ。1小節目と3小節目、1拍目裏と3拍目の8分音符は少しマルカートがいいと思います。でも響きは持って。シンコペーションですから3拍目裏の4分音符に少しだけ重心を。アクセントはきつくなく。4拍目裏のテヌート8分音符は、次につながる意識で。そして当然ハーモニーを大切に。1st、1小節目と3小節目のE音は第3音ですが、オブリガートパート(ホルン、ユーフォニアムなど)にもE音があるのでそちらもよく聞いて。

 [G]の5小節目(52)からは低音群と合わせましょう。[G]6小節目(53)はG♭M7(メジャーセブン、7音はメロディ)。テューバなど低音やユーフォニアムとともに、まずGes音とDes音の5度がきれいに合うように。メゾピアノでしかも鳴っている楽器も少ないのでかなり落として吹くことになりますが、響きが細くなってしまうとうまく合いません。『小さく』ではなく、『静かに』吹く感じで。[G]の6小節目(53)、3rdの音の終わりは低音群に合わせて。

 [I]の1小節前(65)、[I]の6小節目(71)、アクセントでクリアに。でも、乗り遅れないよう気をつけて。力が入るとうまくいきません。これも、『流れに乗る』こと。そのあとはアーティキュレーションやシンコペーションのニュアンスなど、伴奏グループでよく合わせて。

 [J](74)から、ここは2分音符も少しマルカートがいいと思います。そして、Ges音、Des音の5度、オクターブ、特によく合わせて。5ポジションですから音程難しいと思います。もちろん低音群やホルン、サックスなどとも合わせます。[K](79)は[D]と同様、[L](83)は[A]と同様。

 [M](91)、低音群、ユーフォニアムとともにユニゾン。まず音程よく合わせて。注意ポイントは、下がったC、2小節目と4小節目の1stと2ndは跳躍で下がったEs、その次のGes。歌って合わせる練習も有益です。そして書いてあるとおりマルカートで。

 [M]5小節目(95)~7小節目(97)も全体でユニゾンよく合わせて。1st、上のGesは低くなりがちなので注意。近めの3ポジションをよくとらえて。楽器にもよりますが、その前のEsの3ポジションとはずいぶん違うはずです。耳と手でおぼえて。最後の小節(99)の3rd、4拍目の裏、下のF(もちろん6ポジションがオススメ)を吹くならその直前4拍目のCから6ポジションで。

 それでは、いい演奏になりますように…。

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