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16世紀のシャンソンによる変奏曲

トロンボーンパート解説

 『ウィナーズ-吹奏楽のための行進曲』などでおなじみの諏訪雅彦さんの曲。諏訪さんも書かれているように、あたかも18世紀のバロック~古典のような様式の曲ですので、そんな雰囲気で。具体的には、発音や、音の処理、音色感。あかるいんだけれども、硬くなく。そして、拍子のビート感。諏訪さんも書かれているように、拍子の性格と、拍の重み。それから、ハーモニーを美しく作ること。このあたりがポイントになると思います。では、具体的に楽譜をみていきましょう。

 まず、この曲でトロンボーンに初めて音が出てくるのは[E]のアウフタクト。バリエーションIIからです。40小節、曲が始まって1分半くらい待たなければなりません。オーケストラなんかだと普通なんですが、吹奏楽では珍しいですよね。特に本番では、この休みの間もちゃんと集中していること。といっても、いろいろ考える必要はないです。いや、いろいろ考えないほうがいいです。ほんとに集中している人って、じつは頭では何も考えてないです。とにかく、『音楽の中にいる』こと。

 さて、[E]アウフタクトからですが、フォルテに『ma,non tanto』とあります。これは『多くなく』とか『多すぎず』という意味ですから、ほどよく品のあるフォルテでいきたいところです。そしてスタッカートの4分音符、『タッタッ』じゃなく『タンタン』にしたいですね。長く、ってことではなくて、止まった音じゃなく余韻がある音で。終わりがstopではなくreleaseの音。特にこの曲では、このことに気をつけたいです。これはもちろん4分音符だけじゃなくすべての音に言えることです。そのためには舌で音を止めないこと。そして、上体がリラックスした奏法が必要ですね。

 1st、上のEs、F、高すぎないようよく聞いて、そして心の中で歌いながら吹いてください。[E]3小節目など、付点4分音符の長さや音の処理、気をつけて合わせてください。こういうのがすっきり決まるためには、ビート感がとっても大切だと思います。2/2拍子のビートと同時に8分音符のビートも持っている感じ。特に[F]からは、このことがとっても大事だと思います。それがないと付点のリズムが決まりません。まずメトロノームと仲良く。

 さて、4分音符にはスタッカートが付いていたり、音と音の間に8分休符や4分休符が入っていたりするんですが、その『音と音の間』が『お休み』にならないように吹きます。たとえば[E]3小節目の8分休符などは、休符だからもちろん音はないんだけれども息の支えは抜いてしまわないように。休符もそのまま吹いているようなつもりで演奏する。と、フレーズや流れがうまくいく。休符は、停止や休憩ではないのです。これ、ポイント。

 [F]1小節目で付点をやっているのはトロンボーンだけですね(ティンパニーもおんなじグループですが…)。クリアにあかるく、でも、きつくなく。これがメロディと合わさってビートを醸し出すといいです。ここの2nd、跳躍で音のクリアさが失われないようにしたいです。しっかり吹こうとして力が入るとうまくいかないです。らくに吹いている感じで。それから、3rdの付点4分音符、1stと2ndに音型合わせて。[G]2小節前の2nd、トランペットをよく聞いて。

 [H]5小節前の1st、ソロです。伸びと説得力のある音で。『ソロだ』と思って力が入ってはだめですよ。力むと響きは伸びません。1拍前に2ndトランペットが同じことを吹きますね。発音のキャラクターをそろえて。Esの音程や音の切り(消え方)もトランペットと一緒になるように。

 [H]4小節目からの1stと2nd、cresc.がありますが、1つ1つの音の中でクレシェンドしないほうがいいです。4つの音が階段みたいにだんだん大きくなっていく感じのcresc.にするといいと思います。トランペットと音のキャラクター(形や響き)をそろえて。[I]1小節前の1stと3rdの4分音符の長さや消え方、全体とそろうように気をつけて。

 [I]の4~5、6~7小節の音型、[I]5小節目と7小節目の1拍目8分音符に重心がある感じで吹くといいと思います。ただしテンポはキープ。それから[I]8小節目からのcresc.は、ここも『階段』で。

 [I]9小節目の3rdのCとEsは特に、ユーフォ、テューバなどの低音群をよく聴いて音程合わせましょう。もしかしたらユーフォテューバのCはほんの少し低く、Esはほんの少し高くなるかもしれません。もちろん他の楽器との兼ね合いもありますが、歩み寄ってあげることも大切です。トロンボーンは『音程自由自在』なんですから。さらに、9小節目3拍目から10小節目にかけてのC(1stと2nd)とEs(3rd)は、もしそのほうがうまくいくのなら、音を入れ替えるのもありだと思います。

 [J]3小節目(Var. V)から、トロンボーンの澄んだハーモニーで旋律に厚みを加えたいですね。少しやわらかい発音がいいと思います。ただし、音を押したりはしないように。1つ1つの音にディミヌエンドがありますが、機械的に小さくするのではなく、響きで表現したいところです。音の最後までちゃんと支えられているかどうかもポイントですね。でも、力を入れるのではないですよ。それから、音と音の間には休符がありますが、4小節単位のフレーズを感じることが大事ですね。休符を取って全音符と2分音符にして合わせてみるのも、いい練習だと思います。[K]2小節前の2つ目、2ndのGと3rdのDは、入れ替えるのもありだと思います。

 [K]です。mfからf(ma non tanto)に上がるんですが、その位置がパートごとに違っていますね。全体では、金管低音群とサックスが遅れてフォルテに上がります。とっても細かい強弱の指示ですね。全体の音色のバランスを考えての指示だと思いますが、厳密に作っていくのならそれぞれがスコアを見て、同じ強弱グループを把握する必要があると思います。2ndは[K]1小節目2拍目裏からフォルテになりますが、だからといって、ここから違うフレーズになるということではないので気をつけましょう。

 [K]3小節目と[L]4小節目1st、カッコのGを吹くなら響きがなくなったり低くなったりしないよう(近めの2ポジション)に。

 [L]は、楽譜には特に指示はありませんが、各音をテヌートではなくややマルカート的に1つ1つの音をはっきりと発音する感じでいくといいと思います。アクセントということではなく「ことば」をはっきりしゃべる感じ。もちろんいろいろなやり方がありますから、全体に合わせてくださいね。

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