FUKUMI, Yoshiro's Homepage

天馬の道 ~吹奏楽のために

トロンボーンパート解説

 この曲は、どこか『和』の響き。一昨年の『架空の伝説のための前奏曲』や、2004年の『吹奏楽のための「風の舞」』と、ある意味共通するところがあると思います。和の響きと感じられるのは、4度や5度の響きを多用しているためですが、完全4度や完全5度の音程は、厳密に合わなければ濁りが目立ってしまいます。まずそういうところに注意する必要がありますね。こまかいパッセージやタンギングなどのテクニックも問われます。

 [A](9)から、さっそく4度5度のハーモニー。うなりがなくなるように音程、もちろん響きも合わせます。1st、1小節目から2小節目へはスラーではないことに注意。2小節目のD音はクリアに入ります(ただしアクセントではない)。もちろん、3rdのG音との完全5度をよく合わせましょう。合奏の中で聞き取れるかどうかはわからないけれど(いや、聞き取りましょう)、1stクラが前の小節から同じ音(オクターブ上ですが)を吹いています。

 [A]2小節目(10)4拍目3連符は旋律グループの動きと一緒。乗り遅れないように。悪い意味で歌う意識が強すぎると、こういうリズムは重たくなってしまいます。自分の中に冷静な部分を必ずいつも持っていること。リズムやテンポは冷たく正確に。さらに、ここはブレスをすると思いますが、テンポの流れをちゃんと感じて、その中でブレスできるように。

 [A]5小節目(13)3拍目の付点2分音符も、低音楽器とともにG音D音の完全5度(完全4度)、純粋な響きに。そしてオルガンのようにまっすぐ。ただし硬くならないように。

 Piu mossoの1小節目(15)、1stのGes音は音程注意。普通の3ポジションよりもかなり近めです。2ndのDesと4度を合わせましょう。それから、響きは細くならないようにやわらかく。

 [B](19)から、一段マルカートのイメージ。Leggiero(レジェッロ)って、どういう意味でしょう? 調べてみましょうね。ここも引き続き、4度5度中心の響きです。

 [C]1小節目(28)2拍目、3人で楽譜を見くらべてみましょう。それぞれアクセントの位置が違いますよね。ここはベルトーンのような効果を狙っています。3人そろってF→Es→D→Cというラインが聞こえるようにアクセントをつけます。3人のアクセントのニュアンスが同じになるように。

 [E]2小節目(41)と4小節目(43)の3rd、レガートがごつごつしないように、ただしグリッサンドにはならないように気をつけて。練習のために、たとえば2小節目をタンギングなしで吹いてみましょう。とちゅうにアクセントがついたりしませんか? 息は音の変わり目で段差ができないように、1本の流れで。タンギングをしないとグリッサンドにはなるのですが、それも瞬間的に。右手の力と上体の力を抜いて(力が入るとごつごつしてしまいます)、スライドはすばやくリズムどおりに。タンギングしないで吹いても、聞いている人には楽譜のリズムや音程がちゃんと聞こえるように。それができたら、そこにレガートタンギングをつけて。

 [F]からテンポが上がります。作曲者も書かれているように、ここでは低音群や打楽器とともにトロンボーンが曲の流れにおいて重要な役目を担います。そのビートのきざみが正確でないと、その上でメロディなどが歌えませんし、音楽に躍動感が出ません。テンポ感、ビート感が当然大事です。そのためにはどうすればいいかというと、たとえば拍のおもてにある8分休符。あとうちの時など、『んタんタんタ』と重みを置いてはダメ。休符は『お休み』ではありません。音符も休符も全部まとめて支えたままで。休符のところにも『音のない音』があると思って吹きます。テンポの『流れ』を感じて。

 [G](62)から、このテンポの16分音符はシングルタンギングで行くかダブルタンギングを使うか、微妙なところだと思います。人によって変わってくるでしょうね。ただ、ダブルができないから、しかたなく無理矢理シングルで、ってのはダメですよ。両方マスターした上で、よりよいほうを選ぶこと。ダブルでいくなら[H]の1小節前(71)は『KTKT.T.T.』か、『TTKT.T.T.』で(どちらかというと後者のほうがお薦めか…)。

 さて、何度か出てくる、[G]1小節目のリズム、あたまの4分音符と8分音符のタイの1拍半をどう吹くか…。このあたりは人それぞれですが(ただしもちろんパートの中ではそろえてくださいね!)、1拍半をベタではなく、ややマルカート。『ターータカター』ではなく、音の途中は保った上で(やせないで)、『ターンタカター』でよく、むしろそのほうが自然かもしれませんね。ただし、2拍目のあたまが『止める』にならないように。息は流れたままで。さらに、16分音符が重くならないように。しっかりはっきり吹くことも大切ですが、それを意識しすぎると、こういう16分音符は、くどくなります。打楽器奏者がそうするように、16分音符のほうが4分音符よりも自然に小さくなってよいのです。

 [H]の1小節前(71)、1stは、4個目の16分音符のDは当然4ポジションで。そしてこの小節、16分音符にまず意識が行くと思いますが、2拍目の8分音符が転ばないように要注意です(どのパートも)!

 [K]の1小節前(99)、堂々としたマルカート。しっかりした音で、短すぎないようにたっぷりと。[K](100)からも、たっぷりとした息でよく歌って。3小節目(102)の4拍目D音は4ポジションで。

 Grandiosoの2小節前(134)から、16分音符をシングルでやるにしてもダブルを使うにしても、テンポに注意。走ったり遅れたりしないこと。インテンポ。

 Grandiosoの小節(136)、4分音符に『Bell up!』と書いてあります。ベルアップで^^;。気をつけることは…、楽器だけじゃなくて顔、だけじゃなくて上体を起こしてベル(楽器)を上げるように。そして、きつい発音や硬い音を聞かせるのではなく(きたない発音はベルを上げるとまるわかりです)、リラックスしてよく響くクリアな音で。ffは力が入ってはダメ。

 その次Allegroの小節(137)、替えポジションですが、1st、最初(2拍目あたま)のD音だけ4ポジション(そのあとのDは1ポジション)、2nd、B音は5ポジション、あるいはB音は1ポジションで2拍目裏のFを6ポジション(3拍目裏のFは1ポジション)、3rd、2拍目裏のC音だけF管を使わず6ポジション(そのあとのCはF管)を、それぞれ検討してください。こういう早い動きは難しいので、よく練習してください。右手と上体はくれぐれもリラックス!

 最後から3小節前のフォルテピアノはトロンボーンとユーフォだけ。はっきりと!

ページトップへ戻る

課題曲解説/目次へ