行進曲 「煌めきの朝」
全体解説
この曲を作曲された牧野圭吾さんは、作曲当時は北海道の高校2年生(現在は3年生)。とはいえ、エレクトーンや和声を学ばれているそうで、第30回TIAA全日本作曲家コンクール室内楽部門で奨励賞に入賞されているのですね。Amabileという曲のようですが、どんな曲なのでしょうか。ぼくが同賞で奨励賞をいただいたのが第29回なので、その半年後ということですね。
この「煌めきの朝」、課題曲マーチのスタイルを踏襲していますが、拍子は2/4拍子で書かれています。Tutti率(全体に占めるTuttiの割合)は約44%。平均的ですね。若々しいさわやかさに満ちた曲ですので、さわやかな演奏を期待したいです。16小節の序奏のあと、前半はAABA、ブリッジを挟んでTrioはまたAABA。転調も特徴的で、大きく見ると、ハ長調で始まって、Trioの前のブリッジで変ロ長調、Trioで変イ長調、最後にはハ長調に戻ってきます。そしてハーモニー的には、sus4から解決する動きが多いということ(下譜例)。数えてみると、曲全体で15回ほど出てきます。こういった特長に意識を向けてハーモニーづくりをしていくのも有意義だと思います。
イントロが16小節。[A]からはmpの音楽ですが後半にクレシェンドがあってmfへ。[B]から楽器が増えますが強弱の指示がありません。その前と同じmfと取ることも出来ますが、解釈の自由が与えられているとも考えられますね。ここを『楽器が増えたmp』としても面白いと思います。3小節目からのピッコロ、フルート、エスクラはmpから始まっていますね。そしてここも後半クレシェンドしてフォルテへ。
[C]の低音旋律はffですが、合いの手伴奏系はmfと2段も低い強弱が与えられています。楽器が多いからでしょうか。これは、そういう遠近感が欲しかったのではないかな、とも思えます。さて、シンバルとバスドラムの強弱はどうしましょうか。mfの指定はないですから、どういう遠近感でつくるのか、工夫の余地があると思います。そして[E]ですが、見ての通りオーケストレーションは[B]と同じです。いや、違いがありますね。シンバルがあるかどうかです。[B]との変化をどうつくるのか。ここも強弱の指定はありません。後半クレシェンドしてffへ。そういう起承転結をつけることが大切になってくると思います。
[F]。これはイントロとまったく同じオーケストレーションで、調性が長2度下のB-durになっています。ただし、イントロはf、ここはff。同じものが出てきた時は、前との変化をどうつくるのか、そんな観点も大切ですね。
旋律やオブリガートの歌い方で特に大切なこと…。句読点をどこに置くか。山はどこなのか。そして、長い音。長い音は、次に向かっていく音と、そこでおさまる音、だいたいその2つに分かれます。どちらなのかを考えること。それからこの曲の場合は特に、アーティキュレーション。スタッカートがついた音やマルカート系の部分とレガート系の部分をどんなふうにコントラストをつけるかも大切ですね。
伴奏系については…、この曲では課題曲マーチにしては珍しく、打楽器にアーティキュレーションがちゃんと書かれています。意味を考えて、そして、管楽器の中に仲間がいるかを探してください。それから、ホルンやトロンボーンにたくさん出てくるあとうち。毎回書いていますが、これは単なるきざみではなくハーモニーです。長い音にしてハーモニーを確認してみてください。 楽譜倉庫 にあとうちハーモニー練習楽譜をアップしてあります。低音楽器と一緒に合わせてハーモニーの響きをたしかめてみましょう。あとうちになった時にもそのハーモニーの響きが感じられるように。
トロンボーンパート解説
さて、ここからはトロンボーンパートを見ていきます。[A]、ハーモニー、強弱はpですから他より一段下がって主張し過ぎず。松葉(ディミヌエンドやクレッシェンド)も、作為的にならず自然に。8分音符は短すぎずハーモニーが感じられるようにしましょう。11小節目からのクレッシェンドは別々にしないで15小節目のmfを見据えて。
[C]アウフタクトからの旋律は、mfくらいでレガートにして練習もしてみてください。テンポも落としてみて。イントネーションや息の流れ、フレーズ感、いろいろな部分で得るものが大きいですよ。
Trioに入って[G]にあるハーモー。これは、特に強弱の変化やニュアンスは書いてありませんが、メロディのフレーズ感に寄り添うように演奏するといいと思います。ただし、メロディはmp、こちらはp。[H]1小節前の8分音符は低音の動きに同調するように演奏するといいと思います。ホルンも一緒ですね。
[K]アウフタクトからの旋律、イントネーションをゆっくりよく練習してください。前半4小節はH-dur(ロ長調)、後半はA-dur(イ長調)。[K]直前のB音の16分音符は5ポジションの使用も検討してみましょう。
[L]からのオブリガート、ここでは替ポジションの提案だけしておきますね。9小節目2拍目、曲の最後から6小節前2拍目、それぞれD音は4ポジションの使用も検討してみてください。
それでは、いい演奏になりますように。
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