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行進曲「春」/福島弘和(委嘱)

全体解説

 今年の課題曲委嘱作品。作曲の福島さんは過去に『稲穂の波』(1998年)、『道祖神の詩』(2000年)と、2曲の課題曲があります。それらを聴いてみるのもいいと思います。

 さて、この曲に関してはまず、アーティキュレーションなどが必要最小限しか書かれていません。たとえば強弱に関して、福島さんのエッセイには、『mpのフレーズの次に続くフレーズにはmfと書きましたが、mfの部分で突然大きくするのではなく、その間の音量設定の変化は、奏者側で色々と工夫していただけると良いと思います。』とあります。たとえば[A](17)はmf、[B](33)アウフタクトでfになりますが、その間、なにも変化がないとは限らなくて、いろいろ運びを工夫するのもありだということです。[B](33)からを見てみても、5小節目(37)アウフタクトからレガート中心の音楽になり、9小節目(41)アウフタクトから戻ってきたところでは、ハーモニーが[B]とは違いますよね。そのあたりをよく感じてみたりすると、ストーリーが見えてくるのではないでしょうか。そういう物語、起承転結を考えて曲全体を組み立ててみるのもいいと思います。

 『今まで自分が聞いた中から好きな部分を足して足した分だけの数で割ったような、ハイブリッドなスタイルのマーチ』と書かれています。冒頭はどこかアルフレッド・リードのようでもあり、トリオの雰囲気はホルストのようであるかもしれません。そして、テンポ設定が108~112と、マーチングマーチ(120くらい)よりも少し落ち着き気味の設定です。そのテンポ感をよく身体に入れてください。ハーモニーもきめ細かく大変工夫されていますので、ゆっくりやってその響きをよく感じてみることは必須です。たとえば例を挙げると、[A]12小節目(28)2拍目から([B]12小節目(44)2拍目からも同じ)『Bdim7(+G)、Cm、F♯dim7(+F)、Gm』の響き、よく感じてみてください。

 ホルン、トロンボーンの伴奏音型については、長い音にしてハーモニーの流れを確認してみてください。楽譜倉庫に、あとうちハーモニー練習楽譜2019がありますので活用してください。合わせるときはぜひ低音楽器と一緒に。楽譜通りの伴奏型になっても、そのハーモニーの響きと流れが感じられるように。すべての音からハーモニーが聞こえるように

 オーケストレーションもそう厚くなく、Tutti率(曲全体に占めるTuttiの割合)は43%ほどです。フレーズの終わりが8分音符の時と4分音符の時と書き分けられています。そのニュアンスがちゃんと出るようにしてください。冒頭から出てくる、そして曲の中に何度も出てくる付点のリズム(芽吹きのリズム)、付点リズムは場合によっては3:1ではなく4:1くらいの方が小気味良かったりもするのですが、この曲の場合は2小節目の16分音符のモチーフとセットで出てくるので、正確な3:1が良いと思います。

 冒頭3小節目、7小節目、8分音符に前からタイでつながっているグループ(トランペット、ホルン、1stトロンボーン、スネアドラム)は、同じ仲間として音の終わりのニュアンスをつくってください。[A]2小節目(18)、3小節目(19)などのように、8分音符2つにスラーがかかっている旋律グループと、スラーのない伴奏グループとがありますが、伴奏グループの8分音符を旋律のニュアンスに合わせて1つ目の8分音符を長くするのもありですし、また、合わせずに別のアーティキュレーションとして処理するのもありだと思います。バンド全体で決めて統一してください。[B]2小節目(34)、3小節目(35)などは、同じパートの中に2つのアーティキュレーションがあったりもしますよ。

 [B]5小節目(37)からは伴奏のみmfに強弱が落ちますが、単に楽譜に忠実にするだけではなく、それはなぜなのか、どんな流れが隠されているのか考えてみることも大切だと思います。[C](49)アウフタクトからの第2マーチにあたる部分、特に1回目の低音の対旋律は音程が聞こえにくいので大切に。特に各小節あたまの音、B、A、Es、B…、この音程がちゃんと聞こえるよう大切に。ただしアクセントをつけたり大きくしたりするわけではないです。そして細かいことですが、[B]7小節目(55)、低音、2拍目あたまのEs、ここのハーモニーはDなのですが、♭9thの音が拍のあたまに来ているのをゆっくりやって感じてみることも有益だと思います。その次の小節(56)、木管1拍目あたまのEsも同様です。

 また、[B](33)アウフタクトのトロンボーンなどのメロディ、低音の対旋律、に限らず、各動きは、いちどレガートにして少しゆっくり練習してみることは有益です。息の流れ、フレーズのつながり、起承転結、音程確認、いろいろプラスになることがあると思います。

 [D](57)アウフタクトから、1小節ずつずれて出てくる各モチーフが浮き出るようにしてください。[G]1小節前(80)の『空間』、大切にしてください。[G]2小節前(79)の決めの個所にも、あえてアクセントなどが書いてないことに注意。どう表現するのかを任されているからこそ、よく考えて意思を持って演奏したいところです。

 [I](113)アウフタクトから、単に正しい音程で演奏するというだけでなく、調性(Es-moll→as-moll→es-moll→Es-dur)が感じられるといいです。低音の音階進行、大切に。そのあと低音のB音に乗ってハーモニーの色あいが変化していきます。それをよく感じて。各声部は声で歌えるようにするといいです。それはでも、ここに限りません。歌って合わせてみることも大切です。

トロンボーンパート解説

 それではトロンボーンパートです。冒頭の付点リズムは書いた通り3:1で。3小節目と7小節目それぞれあたま、1stはトランペットとホルンのグループです。[A](17)から、休みの小節も音楽の流れの中にいること。2小節目(18)、4小節目(20)、狙って入るというよりも、流れの中でそのまま吹く感じで。[C](49)、[E](65)、[K]2小節目から(134)、[L]2小節目から(150)は、書いたようにレガートでも練習を。上のDの音は必要に応じて4ポジションの使用も検討してみてください。

 [I](113)アウフタクトからの部分は特に音程など難しいところです。チューナーを使う前に、もちろんスライドが正確な場所に行くことも大切ですが、それぞれの動きを声でも歌えるようにしてみてください。まずそれがいちばん大切で効果があると思います。もし階名唱ができると、とても有益だと思います。そして低音楽器と一緒にゆっくり合わせて響きの流れを確認してみてください。大切ですよ。

 それでは、いい演奏になりますように。

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