コンサート・マーチ「虹色の未来へ」/郷間幹男
全体解説
今年の課題曲マーチのもう1曲です。作曲の郷間さんはご存じ、ウィンズスコアの社長さんで編曲家、そしてトロンボーン経験者でもありますね。課題曲は初登場です。課題曲のマーチとしては、オーソドックスなつくり。Grandiosoの序奏付きイントロのあと、前半はAABA、トリオはABAにコーダというシンプルなもの。Tutti率(全体の中での全奏の部分の比率)は、約30%。
序奏、Esのユニゾン(大切ですね)から始まって、4小節目に向かってだんだん広がっていくのをよく感じて。低音は下がっていくほどに少しクレシェンドの意識がいいと思います。4小節目のB♭sus4→B♭のコードはもちろん[A]を引き出すドミナント。3拍目に4→3と動くパート、大切です。ハーモニー感。ぜひ冒頭から全体で声で歌っても合わせてみたいところ。そして、練習として、5小節目に全音符でE♭のコード(Es、G、B)を置いて解決感を味わってみるのが有益だと思います。4小節目の吹き方、方向性がつかめると思いますよ。
[A](5)からはテンポをキープ。126という少し微妙な、一般的な課題曲マーチの132より少しだけ落ち着いたテンポ設定ですね。その感じは大切にしてほしいと思います。いわゆる『歩くマーチ』と『アレグロマーチ』の中間のテンポです。5小節間、[B]1小節前(9)あたまのドミナント(B♭)を到達点とした方向性を持って。打楽器、全体に渡ってですが、自分と同じ動きの管楽器のアーティキュレーションは必ずチェック&把握を。
[B](10)に入ったらシンプルな構成。[C]で旋律に加わるフルート、オブリガートのオーボエ、アルトクラ、テナーサックス、ユーフォニアム、[D]4小節前(22)アウフタクトで旋律に加わるオーボエ、トランペットなどなど、新たな要素が浮き立つと音楽にストーリーが出来ていいと思います。[C]の旋律はmf、オブリガートはmp。4小節目(21)にクレシェンドして5小節目で合流です。
マーチでは当然、伴奏系だけでの練習を。あたまうち、あとうち。打楽器を中心に(大きくという意味ではなく)つくってみるのをお勧めします。そこに管楽器が加わる。管楽器の人たちも、いちどバスドラム、スネアドラムを体験させてもらうといいかもしれませんよ。リズム、ビートの起源は打楽器ですからね。
そして低音の動きは単なる4分音符の刻みではなく、ラインを意識して。ベースライン。さらに、[B](10)からなら、付点2分音符+4分音符で『Es- B As- G F- C B- As G- G As…』という流れ、いわば骨格になるラインを感じてみるのもいいと思います。拍子感を持つことにもつながると思いますよ。そして、あとうちはハーモニーです。ホルン、トロンボーンの人たちは、あとうちを長い音にして低音楽器と一緒に合わせてハーモニーを感じてみましょう。声で歌っても合わせてみましょう。ホームページの 楽譜倉庫 に『あとうちハーモニー練習楽譜』がありますので、ぜひ使って練習してみてください。
[D](26)、2小節目(27)4小節目(29)、同様に10小節目(35)のあたまに少し重心を感じるといいと思います。低音のメロディはテヌートやレガートでも練習を。2小節目、4小節目、低音→トランペットの付点リズムのリレー、[E]4小節前(35)、同様に、低音→ホルン→トランペットの付点リズムのリレー。ここに限らず、付点リズムはちゃんと3対1に、いや、むしろ4対1くらいのつもりで演奏するのがいいかもしれません。軽やかに出来るようになるポイントのひとつは、やっぱりレガートでも練習してみることだと思います。
Trioに入って、[G](57)のピッコロ、なかなか浮き立たないと思います。『大きく吹こう』ではなく、『豊かに歌おう』。ここから全体がmfに上がりますが、楽器も増えているので、強弱変化はそれで十分表現できると思います。ピッコロを聴いて。
[H]2小節目(66)4小節目(68)それぞれ2拍目、8分音符2つで次の拍が休符のパターンは、リズムがコケる要注意ポイント。3拍目にも音があると思って。休符でなく『音のない音符』です。実際に3拍目に音を入れて合わせてみる練習も有益だと思います。そして、実際には3拍目のあたまは全体が8分休符。その空間を正確に感じて。
トロンボーンパート解説
それではトロンボーンパートについて。冒頭ユニゾンから2小節目でオクターブに分かれますが、ここに限らず、上と下の人数バランスなど偏らないよう工夫していいと思います。4小節目1stのEs→Dは3→4(ポジション)をお勧めしたいです。[A]2小節目(6)3小節目(7)のリズムはトロンボーンだけ。ですが、スネアに寄り添ってみてください。そしてsus4は完全4度が重なった響き、よく合わせてみてくださいね。
[D](26)の低音メロディ、書いたように、レガートまたはテヌートでも練習を。そして息の流れはレガートの感じを忘れずに。[E]3小節前(36)のD音は4ポジションを、1st、1小節前(38)3拍目のD音、同じく4ポジションがお勧め。
[E]5小節目(43)、ユーフォニアムなどのオブリガートを1拍目裏からなぞるのですが、これって何だと思いますか。音にしてみるとわかりますが、ディレイのような山びこのような効果があるのですね。付点リズム小気味よく。
Trioの2小節間、4分音符は低音群と音の形を同じにしますか? いろいろあっていいと思いますが意思を持って。[G](57)からのルンバ型あとうちは、4分音符に少しだけ重心、8分音符は軽く。[I]1小節前(73)低音の8分音符の動き、rit.してテンポが遅くなった分だけ音符の音価(長さ)も長くなっていくことを忘れずに。
それでは、いい演奏になりますように。