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吹奏楽のための「ワルツ」/高昌帥

全体解説

 作曲の高昌帥氏は、2002年の『ラメント』以来2度目の課題曲登場ですね。この曲は、同じような旋律が繰り返すように見えますが、それが少しずつ変化し、またその和声も変化していきます。ハーモニーとその流れをよく感じてみることは大切ですね。また、テンポ変化が楽譜にいろいろ書いてありますが、『書いてあるからそうする』ではなく、フレーズ、旋律の音の重心や抑揚、山を音符からよく感じ取って自然な流れで演奏したいですね。そしてぜひやってみてほしいのは、指揮なし合奏です。このことはブログ『ワルツは難しい? -指揮なし合奏のススメ-』に書きました。

 旋律については、ハーモニーを把握すること、非和声音の把握と、それを感じてみることは必須でしょうね。また、その非和声音の音価(音の長さ)にも注目すべきです。音価の長い音はエネルギーが大きい。たとえば[1]の7小節前(12)、ハーモニーはCm。旋律の実音Es→D→C、2拍目のD音は経過音とも捉えられますが、3拍目のC音から音価を半分奪って符点4分音符になっています。それだけエネルギーを持っている。ひとつの重心になりえます。

 [1]の4小節前(15)からハーモニーは1小節ずつDm7→D♭7→Csus7→Fです。3小節前(16)の実音E→Gは二重刺繍音という非和声音ですが、E音がG音から音価を半分奪ってやはり付点4分音符になっています。その分エネルギーを持っている。そんなふうにハーモニーや音の流れを感じていくと、自ずと抑揚ができてくる。作為的にならず、自然の流れをよく感じ取る。なにしろ大切なことは、理屈はわからなくてもハーモニーをよく感じてみることです。その中での、自分の音の1つ1つをよく感じてみる。味わってみる。ピアノやハーモニーディレクターでハーモニーを弾いてみるのもいいですし、伴奏パートだけゆっくり演奏してもらうのもいいです。

 もうひとつのポイントは、長い音。この曲で言ったら、概ね2分音符以上の長さの音。長い音は、たいてい2つに分かれるのです。そこでエネルギーがおさまる音と、その先に向かってエネルギーが高まる音。そのどちらでもない音はほとんどないはずです。それを見きわめて、同じ認識を持って演奏することが大切ですね。そういうエネルギーの出し入れを、よく感じること。

 [2]の1小節前(35)と[6]の1小節前(101)の leggiero から、8分音符の動き、楽器ごとの発音の違いを考慮して、音符の『しゃべり方』をよく合わせて、きれいにつなげてください。[2]のあと、たとえば2の3~4小節目(38~39)には、2つの動きのつながりがありますね。ひとつは[バスーン、バスクラ、バリトンサックス、ユーフォ]→[アルトクラ、テナーサックス、ホルン]→[オーボエ、エスクラ、べークラ、アルトサックス]とつながる8分音符のB♭音のつながり。もうひとつは、[アルトサックス、テナーサックス]→[ベークラ、エスクラ]→[フルート、ピッコロ]とつながる、8分音符2つずつの流れ。この2つの流れがありますね。それぞれ取り出して合わせてみてください。そのあとの部分も同様に2種類の流れがあります。

 ハーモニーのポイントをいくつか書いておきます。まず[3]の2小節前(46)からD♭のコードですが、1小節前(47)3拍目でC7になって、[3](48)はF(ベースはA)。1小節前3拍目のC7はたった1拍ですが、次のFを引き出すドミナントなのでとても大切です。だからテヌートがついていますよね。特に低音のB♭→A、大切に。[7](114)の前からのD♭→Cも同様です。そのほか、ハーモニーをよく味わってほしいところはたくさんありますが、たとえば[4]の10小節前(60)からとか、[8]の10小節前(126)からとか、[8](136)からの金管soliのハーモニーとか。特に4小節目(139)のF7♭9(F、A、C、Es、Ges)の響き、よく感じて。響きがよく身体に入っているからハーモニーになる。低音楽器は、長い音にして練習して動きのラインをよく味わってみてください。

 そして、伴奏型。これ如何で、どんなワルツになるのかが決まります。3拍子の音楽といってもいろいろありますね。ワルツもあればマズルカもある。ワルツにも、ウインナワルツのように特徴的なものなど、いろいろあります。どんな性格のワルツになるのかを決める大切な役割が、伴奏型ですね。いろいろ研究してみてください。

トロンボーンパート解説

 それではトロンボーンパートについて。3rdはできればバストロンボーンがいいですね。低音楽器との共同作業が多いので、低音とも一緒に練習を。伴奏型については、書いた通りです。時々出てくるオクターブの動きは下をしっかり。音程注意。

 [8]の3小節前(133)からの金管soli、豪華に、そして優雅に。それぞれ自分のパートを声でも歌えること。声で歌って合わせてみること。そして旋律の動きを全員がわかっていること。ハーモニーの響きによく意識を向けること。流れの中でのひとつひとつの響きをよく味わって。メロディの非和声音や重心の話は最初に書きました。Vivo(147)から4小節間、ヘミオラ(2小節で1つの大きな3拍子のようになっているリズム)をよく感じて。2ndトロンボーン、[8]の4小節目(139)あたまのB♭は5ポジションの使用も、Vivoの2小節目(148)4小節目(150)それぞれ最後の8分音符Dは4ポジションの使用も、それぞれ検討してみてください。

 ハンドによってそれぞれの演奏があっていいと思うのですが、ぼくはなんとなくどこかチャイコフスキーのバレエ音楽のような感じもするのです。くるみ割り人形の『花のワルツ』とか聴いてみるとイメージが膨らむかもしれませんね。63小節や129小節の決めの部分とか、そんな感じがしませんか? なにしろいろいろなワルツを聴いてみるとイメージが膨らむと思います。

 それでは、いい演奏になりますように。

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