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マーチ・ワンダフル・ヴォヤージュ/一ノ瀬季生

全体解説

 今年の課題曲マーチ2曲の中の1曲。タイトルが示すとおり、海をイメージした曲ですね。オーケストレーションが厚く書かれていて、Tutti率(全体の中の全奏の占める割合)は41%にもなります。そして、ホルン、トロンボーンなど、音域が高めです。曲の響きはそれによって華やかになりますが、スタミナや響きの問題など、演奏者が解決すべき課題も出てきますね。

 構成は典型的な課題曲マーチ。AABAの前半部分、3回出てくるAの部分、[B]で旋律に新たに加わるフルートピッコロ、オブリガートのアルトクラ、テナーサックス、ユーフォ、[D]で新たにフルートピッコロに出てくる2つめのオブリガート、このあたりがちゃんと浮き出ると、立体的になると思います。トリオも基本的にはAABA。同様に、新たな要素を大切に。[I]はイントロと同じですが、さて違うところはどこでしょう。

 イントロ、[I]、リズムやテンポ感、ていねいに。タイを取ってみる、サックス、トランペット、ホルンは8分休符を音符にしてみる、長い音を8分音符の刻みにしてみる、それから手拍子しながら歌ってみるなどの練習を。打楽器のみなさん、同じ動きをしている管楽器のアーティキュレーションは必ずチェック&把握を。4小節目、低音のみなさん、2拍目あたまのFis、音程注意。声で正確に歌えますか?

 [A]からの旋律、もちろん[B]、[D]も同様ですが、フレーズの切れ目、その中の山、重心、また、非和声音も調べてみてください。当然、ハーモニーの響きを感じて演奏を。

 [C]は低音が旋律ですが、それ以外の刻み楽器のリズムを打楽器がなぞっていません。もちろんハーモニーを大切にしつつ、少しクリアに演奏することが必要でしょうね。音型の違いも見えやすいので、統一を。もちろん2小節目4小節目のあたまに少し重心を感じるといいと思います。そのあと5小節目(27)アウフタクトからの旋律、6小節目(28)あたまの8分休符って何でしょう? フレーズの切れ目? ここってフレーズの切れ目なのでしょうか? どう演奏したらいいのかも含めて、考えてみてください。

 Trio(39)、2小節目のトロンボーンに第3音(D)がないのはなぜでしょう? トリオ1小節目のトロンボーン、2小節目のトランペット、サックス、それぞれ16分音符を省いて符点8分音符を4分音符にして、全体で少しゆっくりハーモニーの響きを感じてみましょう。sus4→3の響き。[E]からはあとうちがありません。また、低音が2分音符の動きになりますが、推進力を持続して。どうしても緩みたくなってしまうと思いますが、マーチなのですから最初から最後まで1本筋が通っているべきだと思います。もちろん録音して客観的に聴いてみることは有益ですね。

 要素が多い部分(イントロ、[D]、[I]など)でスッキリと整理された演奏を聴かせたり、ちゃんと聴こえて、でも、出るべき動きの邪魔をしない演奏をするためには、ストレスのない自然な響きが大切ですね。そういう基本的なことが試されるのがマーチだと思います。

トロンボーンパート解説

 では、トロンボーンパートを見ていきましょう。特別なことはあまりないのですが、書いたように、音域が少し高いです。1stは響きを大切にしてらくに、下の音に軽く乗るようなイメージで演奏するといいと思います。がんばらなくて大丈夫です。

 [C]アウフタクトからの低音群による旋律、ぜひ少しテンポを落として、テヌートまたはレガートで、つまり長い音にして練習してみてください。フレーズを感じて。マルカート(アクセント)で吹いた時も、レガートの時の息の流れのイメージを持って。そして、アクセントってどういう意味でしょう? 符点のリズム、3対1に。というか、むしろ4対1くらいが歯切れが良くていいと思います。

 さて、Trio。[E]からはあたまうち8分音符、[G]からはあとうちが出てきますね。特にあとうちは、とてもらくに。そして、アタックだけになるのではなく、必ず音の響きが聞こえるように。つまり、短く吹いてもたとえばドの音はドの音だと、遠くで聴いていても感じられる音で。アタックではなく響きでクリアに。そして、あとうちも、ハーモニーです。その部分のハーモニーを担っているのはあとうちだけだという場合もあります。ハーモニーを大切にしてください。ホームページの 楽譜倉庫 に『あとうちハーモニー練習楽譜』がありますので、ぜひ使って練習してみてください。

 [J]からのオブリガートも、[C]と同じく、テンポを少し落として、レガートまたはテヌートにして練習してみてください。[L]5~6小節目の動きはトロンボーンとユーフォだけ。かなり吹かないと聞こえないと思いますが、でも余裕を持って吹けるといいですね。少しベルアップしてもいいかもしれません。ただ、ベルを上げることにはリスクもありますのでよく考えて決めてください。

 替えポジションをいくつか書いておきます。まずイントロ3小節目、[I]3~4小節目の2ndのD音は4ポジションも検討してください。Trioあたまの1stのD音、4ポジションも検討を。

 それでは、いい演奏になりますように。

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