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マーチ「春風の通り道」/西山知宏


 今年の課題曲のもう一つのマーチ。これも4拍子のマーチです。4拍子マーチって、もはや課題曲のスタイルですね。しかも作曲の西山さん、『4拍子をしっかり感じながら』とスコアの解説に書いてみえます。大編成で厚く書かれていて、決めどころではとてもシンフォニックな響きがしますね。

 この曲の特長のひとつは、ハーモニーがとても緻密に書かれていて美しいことです。sus4、aug、dim、m7♭5、経過的にM7など、普通の三和音や7thではないハーモニーがとても効果的に使われています。ですので、ハーモニーの流れと響きをよく感じておきたい。たとえば[A]7小節目(11)4拍目のEm7♭5の響き。この小節は1拍ずつ、Cm→Dm→Cm/E♭→Em7♭5。低音の音階進行や、ここのほかにも、ハーモニー声部の中に美しい動きがいくつもあります。それをよく感じて。どんなハーモニーがついているのかをわかっているのといないのとでは、旋律の表現も全然変わってきますよ。ハーモニーの響きと流れをよく感じられるテンポまで落として『響きの譜読み』を。

 いつも言うことなのですが、ハーモニーの話でもうひとつ言うと、あとうちもハーモニーです。単なる刻みではありません。ホルン、トロンボーンの人は、低音楽器も誘ってあとうち部分を長い音にして合わせてみましょう。ホームページの楽譜倉庫&音倉庫に、そのための楽譜『あとうちハーモニー練習楽譜』がありますので活用してください。

 さて、この曲、変ロ長調で始まり、Trioで下属調の変ホ長調に転調。ここまでは普通なのですが、そのあと[H](79)で再び変ロ長調に戻ってきて、最後のクライマックスへ。ラデッキー行進曲など、トリオのあと頭に戻るマーチはたくさんあります。というか、それが元々本来の形なのです。でもこの曲は、調は元に戻ってもテーマはTrioのまま。この転調、もしかしたらトリオの旋律をトランペットに吹かせたかったからなのかもしれませんね。でもよく見ると、ここからフルート族、Esクラリネット、アルトサックスなど木管楽器に出てくるオブリガートに、[A]のメロディーのモチーフが使われていますね。同じモチーフが出てきた時は、その音型やキャラクターの統一が大切。

 『4小節目に現れる音型が曲全体を通しての主要な動機』なのだそうです。4分音符8分音符8分音符の形。2小節目にもすでに出てきますし(サックス、トランペット、トロンボーン)、[A]のテーマもTrioのメロディーも、このリズムで出来ています。たとえば2小節目を見てみてください。この音型をシンコペーションと捉えるかそうでないかで、表現が変わってきます。2拍目3拍目でシンコペーションですね。どちらが正解というわけではないですが、曲をとおして統一しておく必要はあるのかな、と思います。

 前奏が終わって[A](5)アウフタクトから始まるメロディーですが、ひとつのフレーズの中にレガートのところとそうでないところとがあります。[E](42)アウフタクトから始まるTrioのメロディーもそうですね。先に書いた『動機』の形の部分が、レガートではありません。このアーティキュレーションの対比を出すことが、メロディーの歌い方のひとつのやり方かな、とも思います。Trioのメロディーには、legatoでもcantabileでもなく、leggiero(軽く、優美に)とありますね。そして9小節目(50)から4小節間のespress.も、それまでとの対比を出したいところです。

 [C](21)の低音のメロディー、少し要素が多いせいか際立ちにくいですが、荒くならず歌を持って演奏したいところです。そのあと[C]4小節目(24)からの各ソロ、うまく際だたせてバランスよく。[C]8小節目9小節目(28,29)2拍目のユーフォ、テナーサックス(9小節目のみ)、3拍目のグロッケン、印象的に。Trioの1小節前(39)ホルンのfp<も、木管楽器の連符をより際だたせてくれます。効果的に決めたいところです。

 もちろんマーチですので、テンポが安定して最初から最後まで一本筋が通っていること、打楽器の扱い方や、あたまうちあとうちで流れができることなど、基本的に気をつけるべきことは他のマーチと変わりません。『マーチ・シャイニング・ロード』の解説も読んでみてください。低音のあたまうち、ホルンやトロンボーンのあとうちの人たちは、いちどバスドラム(あたまうち)とスネアドラム(あとうち)をやってみるのも、なにかプラスになるかもしれませんよ。

 それではトロンボーンパートを見ていきます。Trio前半に少し休みがあるほかはほとんど吹きっぱなしなので、ペース配分を考えてメリハリを持って。調性がBdurとEsdurなので、上のD音はパッセージによっては替えポジションとして少し遠めの4ポジションの使用も検討しましょう。

 前奏、ファンファーレ的な4分音符の動き、トランペットやサックスとともに堂々と。[A](5)あとうちはラクに軽く。ハーモニーの流れやフレーズを感じて、5小節目(9)からの『poco a poco cresc.』はメロディーに寄り添って。[B]4小節目(16)の動きはトロンボーンだけ。2拍目3拍目はハーモニー重視で行くのがいいと思います。1stの符点リズムもレガートの流れに乗って。

 [C](21)からのメロディー、レガートにしての練習もしてみてください。フレーズ感と『歌』を持って堂々と。4小節目(24)のディミヌエンド、もちろん全体でなのですが、ソロを引き立てるように少し早めのディミヌエンドがいいと思います。ここから音楽が変わりますから気持ちを切り替えて。[D](32)のオブリガートも、少しテンポを落としてレガートでも練習してください。マルカートになっても『歌』を持って

 [E]8小節目(49)の1st2nd、ほんの短い動きですが、美しく印象的に。ホルンと共にハーモニーなのですが、いちばん上の音はトロンボーンです。天使が、次の小節のespress.を導き出す。[F]8小節目(65)は、木管の『molto espressivo』に寄り添って! そして11小節目(68)は一転、トランペットとともにファンファーレキャラクター。堂々と。[G](70)から3小節間は低音群との練習を。[H](79)からのオブリガートも、もちろんレガートの練習もしてください。[I]6小節目7小節目(96,97)4拍目、1stのFと2ndのDはそれぞれ4ポジション(Fは近め、Dは遠め)の使用を検討してみてください。

 それでは、いいステージになりますように。


I  スケルツァンド/江原大介

II  マーチ・シャイニング・ロード/木内涼

III  インテルメッツォ/保科洋

∨ メタモルフォーゼ〜吹奏楽のために〜/川合清裕


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