マーチ「クローバー グラウンド」/鹿島康奨
全体解説
作曲された鹿島さんによると、この曲のイメージは、延々と緑が続く緩やかな丘陵なのだそうですね。その地面を覆うクローバー、また、大地の緑と空の青のコントラスト…。そういう風景を思い浮かべてイメージをふくらませてみるのもいいと思います。
オーケストレーションは概ね厚く書かれているのでよく鳴ると思います。打楽器も概ねオーソドックスな使い方。Trioに入るところに出てくるWindChime、印象的に。Trioの音楽を予感させたいですね。Trio前半にはTriangle。バランスに留意して透明感のある音色で。
イントロ、各動きのキャラクターを立てて。4小節目のクレシェンドが効くように少しだけ工夫が要るかもしれませんね。
[A](7)、[B](15)は、旋律はmf、オブリガートと伴奏はmp。それが各7小節目のクレシェンドで旋律と同じmfに追いつく。この遠近感は大切にしたいです。伴奏は[B]の前のディミヌエンドでまたmpに戻ります。[B]で新たにメロデイに加わるフルート、5小節目(19)アウフタクトから新たに加わるトランペット、この音色の変化も大切にしたいです。トランペットはアーティキュレーションも違えて書いてありますので、キャラクターの違いを出したいところです。
[E](33)からのメロディはトランペット中心に作りたくなるかもしれませんが、木管メロディはf、トランペットはmf。しかもアーティキュレーションも違います。その遠近感とキャラクターの違いは大切にしたいです。4小節目(36)のクレシェンドで合流します。
Trioへのブリッジが8小節間ありますが([F]の部分)、各キャラクターを立ててしっかり鳴らしたいところ。爽やかなTrioとコントラストをつくりたいです。Trioからはあとうちがなくなりますが、テンポは絶対にキープしたいところです。そしてまた同じ8小節間のブリッジ([I]の部分)が出てきますが、これを前と同じにするか、テンションなど何か変化をつけるかは考えどころだと思います。
Trio後半でテンポが落ちるマーチは時々ありますね。1999年課題曲の「マーチ・グリーン・フォレスト」が思い出されます。[J]1小節前(81)のritでテンポ108につなぎますが、ritとPiu menoは違いますから留意したいです。木管楽器の旋律の音1つ1つがしっかり鳴らないと軽くなってしまいそうですね。でももちろんフレーズを感じて。そして[L](100)からは元の132にちゃんと戻したいところです。
[L](100)アウフタクトのフルート、複数で吹いてもいいけれど音色感はソロで、と作曲の鹿島さんは書かれています。できればソロのほうがいいかもしれませんね。そのほうがむしろ音が通ると思います。[L]1小節前(99)、4拍目に残るクラリネット、♭9→根音(2nd)、sus4→3(1st)と解決してA♭7に。それが[L](100)のD♭につながるわけですから、強弱はmpでもハーモニーは聞こえたいところです。3拍目で終わる楽器のディミヌエンドの行き先にわざわざppと書いてあるのはそういう意図だと思います。
トロンボーンパート解説
それではトロンボーンパートを見ていきましょう。この曲のあとうちは、9割以上トロンボーンが受け持っています。これまで何度も書いてきましたが、あとうちも、ハーモニーです。メロディもオブリガートも低音もほとんどユニゾンの中で、あとうちだけがハーモニーを担っている、そういう意味でもハーモニー、大切にしたいです。長い音にしてハーモニーの流れを確かめてみましょう。 楽譜倉庫 に『あとうちハーモニー練習楽譜』があります。ぜひ活用して下さい。
あとうち、もしかして拍に合わせて身体や楽器を動かしたりしていませんか? 縦ノリではなく流れやフレーズを感じて。2拍とか4拍とか、何拍かをセットで捉えましょう。もちろんブレスもたとえば2小節毎とか決めてください。[A]6小節目(12)、[B]6小節目(20)、それぞれ3拍目に出てくるシンコペーションは、メロディからヒントをもらってみてください。
[C](23)アウフタクトからの低音メロディ、フレーズを感じて。ぜひテンポを少し落としてレガートでも練習してみてください。
[F](42)、[I](74)それぞれアウフタクトからの動きも、テンポを落としてレガートでも練習してみてください。2小節目(43、75)のFは6ポジションの使用を検討してみてください。スタッカートの8分音符短すぎず、つぶを出すくらいの意識で。各音の音程がちゃんと聞こえるように。5小節目(46、78)、6小節目(47、79)、7小節目(48、80)、1stと2ndは途中で音が交差していますね。たとえばこれを入れ替えてそれぞれ1小節間音が変わらないようにしても、トロンボーンセクションとしては楽譜通りの音になります。でも、両者は違って聞こえますね。どちらがより良いかは合奏で検討してみてもいいかもしれません。
Trio(50)ハーモニー、1stの動きは十分聞こえますからがんばりすぎず、[G](52)からの音楽を予感させるものにしたいです。音は少し長めがいいと思います。やわらかく。上のFは高くなりがちですが、D♭の第三音ですので気をつけて。もちろんホルンもよく聴いて。同じ音の1stホルン、オクターブ下の4thホルンと3rdトロンボーン。
[H]の2小節前(61)の合いの手も十分聞こえますからがんばりすぎず、ソフトにシンコペーションを効かせたいです。テューバともよく合わせてみましょう。[H]1小節前(62)はA♭7♭9。響きをよく感じて。