ある英雄の記憶~「虹の国と氷の国より」/西村 友
全体解説
『虹の国と氷の国』って何だろう、と思っていたのですが、ある幼稚園の子どもたちがアイディアを持ち寄って創作した冒険物語なのだそうですね。もともとはその劇付随音楽から主題を集めて創った序曲なのだそうです。とっても豪華な序曲ですね。物語の内容からイメージや場面を想像して組み立ててみるのも良いと思います。
少し複雑なハーモニーがあったり、拍子が変わったり、アンサンブルの難しそうなところがあったりはしますが、曲としては、わかりやすい構成だと思います。金管かなりきついですね。きざみの伴奏型などは軽く吹いてスタミナ配分にも留意したいところです。
冒頭、『Eroicamente』。トランペット→トロンボーン→低音とつながるファンファーレキャラクター、音型やニュアンスをよく合わせて。そして、[A]に入るあたりまで、ゆっくり合わせて響きの確認、響きの譜読みを。ハーモニーの移り変わりをよく感じて身体に入れる。ちなみに4小節目からのハーモニーは、4小節目がG♭M7、A♭(9)、5小節目がBM7、D♭(9)、[A]のあたまがE♭(9)です。
[B](12)のアウフタクトからの『pesante』の旋律の4分音符と、その4小節前(8)から始まる『marcato』の伴奏型 の4分音符、それぞれどんな長さとニュアンスにするのか、よく考えて意思を持って。各旋律に出てくる符点リズム、普通に吹くと16分音符が弱く聞こえてしまうと思います。16分音符は少し意識的に大きく吹くつもりで。
[D](24)の『Allegro con feroce』からテンポが上がって伴奏型は3連符主体のリズムになります。が、旋律の符点リズムは3連符に惑わされず符点リズムキープで。この3連符と符点リズムの違い、コントラストはひとつのポイントですね。そして伴奏型各楽器の3連符のつながりはもちろん大切にしたいところです。つながりというか、流れですね。途中から入ってくる楽器は狙いすまして入るのではなく、その前の休符からもうテンポの流れの中にいることが大切。
[F](36)、[M](92)は、ハーモニーの移り変わりをよく感じてみましょう。わかりやすいハーモニーです。Cm7、F7、B♭M7、E♭M7、Am7、D7、Gm…。響きの譜読み。作曲者さんも書かれているように、ハーモニーの変化にも表現のチャンスを見つけてください。たとえば4小節目から5小節目(39~40、95~96)、6小節目(41、97)以降のハーモニーの変化など…。旋律にはアーティキュレーションのスラーが書いてありますが、もちろんフレーズはもっと長く。5小節目(40、96)のアウフタクト(39、95の4拍目)も、歌い方のひとつの要素。そしてそこからフルート、オーボエが 新たに加わる音色の変化…。
[H](53)、[O](109)、アンサンブルが難しいところかもしれません。まず各人が3連符のビート感をちゃんと身体に入れること。そしてやはり狙いすまして入るのではなく流れに乗って、そして聞いて合わせるというより自分のパートをしっかり演奏する意識の方がうまくいくかもしれませんね。
[I](57)から中間部。『malinconia』。変ホ長調→変イ長調、[J](66)はホ長調、5小節目(70)から1小節ずつト長調→嬰ヘ長調→ホ長調→変ホ長調と目まぐるしく調性が変わります。もちろんハーモニーを大切に、その響きを身体に入れておくことが大切なのですが、特に、[I]の3小節目(59)、5小節目(61)、それぞれ3拍目のC7♭9、7小節目(63)3拍目のF7♭9の響き、9小節目(65)のA♭M7(トロンボーンには9の音も入ります)の響きは、よく感じてみてください。[J](66)に入ってからのハーモニーもよく感じて。5小節目(70)からは特に注意深く響きを確認。響きの譜読み。6小節目(71)3拍目のD♭7♭9、8小節目(73)3拍目のB♭7♭9は特に響きをよく感じてみてください。
[P](117)からはほんとうに『Soar』で。フルートやクラリネット、ホルンなどこまかいリズムや動きがありますが、のびのびと大きな流れを感じて演奏したいところですね。『』で書いたそれぞれの楽語の意味はもちろん調べてくださいね。
トロンボーンパート解説
それではトロンボーンセクションを見ていきましょう。2小節目からのファンファーレは書いたとおり1小節目のトランペットや3小節目の低音とキャラクターを合わせて。[A]に入ったら書いてはありませんが、少しディミヌエンドするのがいいかと思います。
[A]3小節目(8)からの3rd、ユーフォニアムとともにマルカート。これをテューバ、コントラバスの4分音符と同じキャラクターでいくのか、それともC→H→B…の半音進行が見えるように少し長めで吹くのかは考えてみてください。
[B](12)に入って、4分音符のきざみは低音と同じキャラクターで。[C](18)から、1st、2ndの2分音符の動きはユーフォ、ファゴットと、4分音符は低音と同じキャラクター。切り替えを。
[E](28)、[L]3小節目(84)それぞれアウフタクトからの旋律、『energico』。普通に吹くと16分音符が聞こえづらくなりますから16分音符少し大きめに。そして符点リズム、3連符にならないよう正確に3対1で。3rd、カッコ書きの小音符、これは、課題曲には標準音域が定めてある関係でこう書いてあるのだと思います。できれば吹いたほうがいいと思います。[E]3小節目(30)、[L]5小節目(86)、それぞれ3拍目のBは5ポジション、1stのDは4ポジションを使う手もありますが、使うメリットとリスクをよく考えて決めてください。[E]4小節目(31)、[L]6小節目(87)は、サックスとホルンに受け渡す意識を持てるといいと思います。ffですが、オーケストレーションはそう厚くありませんので少し余裕を持って吹きたいところですね。テンポを落としてレガートでも練習を。
[F]4小節目(39)、[M]4小節目(95)、それぞれ4拍目、その前からテンポの流れに乗って軽くさりげなく。[G](45)、[N](101)、特に4分音符軽く。[I]1小節前(56)、1stのDは4ポジションの使用も検討してみてください。ただし音程注意。
中間部に入って[J]1小節前(65)、クレシェンド・ディミヌエンドがあるのはトロンボーンだけ。かといってやり過ぎず、どのくらいしたら音楽的にちょうどいいか考えて合わせてください。次の旋律を予感させる、導き出すようなイメージを持つといいかもしれませんね。
[P]2小節前(115)3rd、しっかりsf決めたいところです。[P](117)のオブリガートはテンポを落としてレガートでも練習を。16分音符少し大きめに。8小節目(124)のベルトーンは相当吹かないと聞こえないと思いますが、無理せずクオリティを守って。そしてクレシェンドは行き先の意識を持って。