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マーチ・スカイブルー・ドリーム/矢藤 学


 作曲の矢藤学さんは、中学校の理科の先生です。エンディングにトランペットソロが出てきますが、矢藤さん、中学校時代に吹奏楽部でトランペットと出会われたのですね。

 さて、スコアに、作曲者からのご注意が2つ書いてあります。『テンポは終始一貫した設定であること』と、『場面ごとに表情をつけること』。この2つ、コンクールを聴きに行くと、両立しない演奏を耳にすることがよくあります。過去の解説にも何度か書きましたが、マーチは一般的に、元は行進のための音楽ですので、テンポが一定であることは前提です。最初から最後まで1本筋が通った中で、場面の切り替え、表情の変化をつける。これがまず大切ですね。

 さて、楽譜を見ていくとわかりますが、余計なアーティキュレーションがありません。アクセントは一部の楽器にほんの少しだけ、テヌートやスタッカートは一つも出てきません。たとえば同じ4分音符でも、どんなパッセージの中に出てくるのか、どんな場面で出てくるのかで音の形は違います。余分な強弱指示もありません。アーティキュレーションにしても強弱にしても、作曲家は書こうか書かずにおこうか迷うことがあります。でも書いてしまえば、演奏者はそれをしなければならない。それは逆に制約になってしまいます。そういうものをできるだけ排したかったのかな、と思います。ですので演奏する方は、想像力、こういう場合はこう演奏する、っていうセンスが必要になりますね。

 逆に発想表記は『Giocoso』、『Cantabile』、『Brillante』、『Animato』、『Grandioso』と、マーチではあまりお目にかからないものも出てきます。もちろんテンポは変わらないわけです。作曲者がどういうイメージでそれを書いたのか考えてみることは演奏のヒントになりますね。

 この曲、シンプルですが、ハーモニーがきめ細かいです。[A]4小節目(8)などの3拍目ドミナントに♭9が入っていたり、[B]6小節目(18)のB♭は♯11だったり([D]も同様)。[F]8小節目(63)からの低音の半音進行も大切にしたいです。ちなみに63小節がB♭/F,F♯dim7、64小節から1小節ずつ、Gm,G♭aug,B♭/F,Em7♭5,E♭M7,F7♭9…([H]も同様)。それから時々出てくるsus4も、よく感じたいですね。

 [B]からオブリガートが入ってきますが、ホルンとユーフォだけで、アルトクラ、テナーサックスが入っていません。なぜだろう…、あっ、[D]には使われているんですね。そういう音色の変化、新たな要素は大切にしたいです。[B]にも[D]にも強弱指示はありませんが、もちろん[D]のほうが自然にテンションが上がる感じにしたいところです。

 [F]からのトランペット、『con sold.』の指示だけで、ミュートの種類の指定がありません。なんとなくカップミュートも試してみたいパッセージですね。ただ、『con sold.』の指示だけの場合、通常はストレートミュートを使いますので、カップミュートを使用する場合はその可否について、いちおう連盟に問い合わせたほうがいいかもしれませんね。

 さて、ではトロンボーンパートを見ていきましょう。まず、この曲はあとうち、伴奏の部分など、トロンボーンの音域が少しだけ高めです。1stは、響きを大切にして下のハーモニーに楽に乗るように軽く吹くことが大切だと思います。

 イントロ、ハーモニーを大切にして下さい。もし2小節目3拍目ののばしの音の終わりの処理がうまく決まらない時は、符点8分音付にかかるタイを取って、3拍目の音の処理を確認してイメージをつかんでみてください。

 [A]、[B]、[D]はあとうちですね。まず、過去の課題曲でも何度も書いてきましたが、あとうちも、ハーモニーです。たとえば[D]のTuttiを見てみても、メロディはユニゾン、オブリガートもユニゾン、あとはベースライン。つまり、トロンボーンのあとうちだけがハーモニーなんです。まず長い音にして少しゆっくり合わせてみてハーモニーの流れを確かめてみましょう。『楽譜倉庫&音倉庫』に『あとうちハーモニー練習楽譜』が置いてありますので活用して下さい。書いたとおり、この曲は特に、ハーモニーがきめ細かです。大切にしたいです。

 さて、あとうちで気をつけること…。フレーズを感じること。まず、音1つずつではなく、いくつかセットで感じる。それがとても大切です。縦ノリ、4分音符ノリではなく、流れを感じて。あとうちなので1つ1つの音は短く吹きますが、短く吹くことと音を止めることは違います。あたかも息は流れ続けているような感じで。

 [C](21)アウフタクトから、低音群のメロディです。書いてはありませんが、マルカートで吹きますよね。でも、レガートでも練習してみることをおすすめします。少しテンポを落として。フレーズや息の流れを確認するために。マルカートで吹いた時も、息の流れや支えはレガートの時とおんなじ感じで。

 [D]2小節前(27)も、やっぱりハーモニーを大切にしたいところです。[E]1小節前(38)4拍目の音、なんとなく決めたくなるところですが、木管のアウフタクトを邪魔しないように軽めに。

 [E]7〜8小節目(45〜46)、15〜16小節目(53〜54)のハーモニー、クレシェンドとディミヌエンドがあるのは全体の中でトロンボーンだけ。でも、書いてあるからします、ではなくて、どのくらいしたら、どんなふうにしたら全体として音楽的かな、と考えてみてください。ちょっと控えめくらいがいいと思います。1stのD音は4ポジションの使用も、3rd、[F]1小節前(55)のF音は6ポジションの使用も、それぞれ検討してみてください。

 [F](56)からのハーモニー、legatoの文字だけで、フレーズが書いてありませんが、もちろんフレーズを感じて。また、1つのパートを複数人数で吹いているセクションなら、複数で吹くか1人ずつで吹くかも検討してみてください。

 [H](80)のオブリガートもやはり、ゆっくりレガートでも練習してみてください。[H]9,10,11小節目(88,89,90)のそれぞれD音は4ポジションの使用も、[H]10小節目(89)のB♭音は5ポジションの使用も、それぞれ検討してみてください。

 [I](97)から2小節間ののハーモニー、ユーフォ、テューバと合わせてみてください。2小節目(98)はA♭のコードに9の音(B♭、3rd)が入っています。響きをよく感じて。


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