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行進曲「勇気のトビラ」

全体解説

 一昨年の『希望の空』以来2年ぶりの6/8のマーチです。作曲の高橋さんは2003年の『イギリス民謡による行進曲』,2005年の『ストリート・パフォーマーズ・マーチ』,2010年『オーディナリー・マーチ』など,課題曲もいくつか書かれています。

 課題曲マーチで6/8は少ないですよね。6/8というと敬遠されがちですが,この曲はヘミオラなどの複合的なリズムもほとんど出てきませんし,リズム的には演奏しやすい方だと思います。6/8のコツの1つは,縦ノリにならないこと。各拍は回っている感じ。拍のあたまは下に落ちていくのではなく,回り続ける。回転運動

 さて,マーチのポイント,もう1つの『主役』は打楽器です。決して脇役ではありません。スネア,シンバル,バスドラム。この3つがしっかり一体となってテンポをつくって初めてマーチがマーチになる。特にバスドラムは要(かなめ)です。そしてそこに,低音あたまうち,ハーモニーあとうち(きざみ音型)が入る。ここから作っていくことをオススメしたいです。

 これは書いていいのかどうかわかりませんが…,スネアドラム,6/8の『タッタタッタ』のリズム,普通は『R・LR・L』と叩くことが多いと思います。が,『R・RL・L』でもいいわけですよね? もしかしたらダメと言われるかもしれませんが,なにかのヒントになれば…。

 打楽器についてもうひとつ。たとえば冒頭のグロッケンですが,スコアを見ると管楽器には8分音符4つにスラーがかかっていますよね。[A]3小節目のフルート,ピッコロにはスタッカートが書いてあります。管と同じ動きをチェックすることはもちろん,管に書いてあるアーティキュレーションをすべて楽譜に書き移しましょう。もちろん,8分音符のスタッカートをいちいち止めるわけではないです。でも,管のアーティキュレーションが意識にある演奏とそうでない演奏とでは,変わってくると思います。

 ハーモニーチェックポイント。[B]のあと1番カッコ(17),1小節ずつ,Dm→B♭→F/G→Gですが,3小節目の,低音Gの上にFの長三和音が乗っている形,これが見えにくい。少しゆっくりハーモニーをのばしてみて,いちど響きを感じてみることをオススメします。3小節目→4小節目は,ほんとうはC→H,A→Gが心地よい自然な動きだと思うのですが,トロンボーンセクションそうなってないんですよね…。1stはC→D,2ndはA→H。

 [D](33)からのハーモニー,これもゆっくり確認を。『ピッチを合わせる』というよりも,『響きを感じる』。音程は,和音の響きを感じてからの話です。コードは1拍ずつ,Gm7→Caug→Fm7→B♭aug→E♭m7→A♭7→Em7→A7。その流れ,移り変わりを感じて。そしてそのあとDm→G7→C(1小節ずつ)につながります。倍くらいのゆっくりのテンポで合わせてみましょう。『響きの譜読み』です。

 [J](82),[O](126)と2回出てくるトリオのファンファーレ部分,1小節ずつA7→Dm→C7→F→E→Am→D→G。この流れも同様に,全体で響きを確かめて(感じて)みましょう。

 トリオ,スーザスタイルですね。メロディ1回目は,ずっとmfですが楽器が増えていきます。伴奏はmpですが[I]1小節前(73)でクレッシェンドして,メロディのmfに追いつきます。ですので,[F]の旋律×伴奏のmf×mpは,そのとおりのバランスで始める必要があるかと思います。

 [J](82)のファンファーレを挟んで[K](94)からの2回目は,フルート・ピッコロのオブリガートが主役。強弱もわざわざ違えて書いてありますが,これは,こう書いてなくても当然こう演奏します。このオブリガート(に限りませんが),『最果ての城のゼビア』の解説で書いた『音の方向性』も意識してみてください。そしてそれに対する主旋律ですが,強弱はずっとmp。でも,[L]1小節前から2ndアルトがそっと加わって,[M](110)でまた戻る。[N]1小節前(117)からは,今度は2ndアルトに加えてオーボエ,Esクラも加わる。ここは8小節単位のコール・アンド・レスポンス(問いと答え)と捉えても面白いと思います。

 [O](126)のファンファーレを挟んで[P](138)アウフタクトからはクライマックスですが,特に出るべきなのは新たな要素,中音群のオブリガートですね。

トロンボーンパート解説

 さて,トロンボーンセクションを見ていきましょう。スライドを動かす右手に力が入ってしまうと,6/8の『回るビート』はできません。リラックス。リラックスのひとつのポイントは…,スライドを動かすための関節の動きはどれだけありますか? ひじだけではありませんよ。全部を自由にして。

 そしてあとうち,きざみ音型もハーモニーになっていることを忘れないで。ホームページの 楽譜倉庫 に『あとうちハーモニー練習楽譜』があります。低音楽器を誘って,ぜひそれをやってみてください。ちなみにホルン版もあります。

 [C](25)アウフタクトからの旋律は,8分休符を取って前の音符を4分音符にして,全体をテヌートにした練習もしてみてください。そのときの息の支え,息の感じのまま,マルカートで。マルカートの旋律でも,フレーズ感を持って。

 [K]2小節前(92),[K]につながるハーモニー,美しく決めたいですね。トロンボーンだけだと普通の長三和音ですが,テューバなど低音群と一緒に合わせてみましょう。1小節前のあたまはB♭/C。C7sus9と捉えてもいいですが,そんな理屈よりも,何度も書きますが,ハーモニーの響きをよく感じて

 [P]からのオブリガート,替えポジションの提案をしておきます。[Q]6小節目(151)のD音を4ポジション(少しだけ遠く),[R]6小節目(159)のB音(両方または1つめだけ)を5ポジション(少しだけ近く),それぞれ検討してみてください。そしてここも[C]同様,

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