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流沙

全体解説

 2010年度課題曲『迷走するサラバンド』の広瀬正憲さんの曲。課題曲5は『吹奏楽曲の開発を意図した現代的な傾向のもの』という条件で公募されます。課題曲1~4の『楽器を始めて1~2年の生徒でも演奏できる…』との条件は外されていますので、当然難易度の高い曲になっています。

 冒頭ゆっくりのテンポ60の部分は、倍のテンポ120の4拍子でやったほうが合わせやすそうですが、やはり60の2拍子で感じることが大切だと思います。ビートは4分音符。ですが、個々の中には8分音符単位、16分音符単位のカウントがないとうまくいきません。こまかいカウントが身体の中にしっかり入っている必要があります。

 それからテンポ変化。[B]で、それまでの60から54になります。[F]で、それまでの144から132へ。[J]では、それまでの60(8分音符では120)から144へ。すると[J]あたまの3連符16分音符は、その前の32分音符と同じではなく、少し遅くなりますね。[L]も同様。[M]ではその逆に、144から60(8分音符では120)へ。それから[P]できちんと144から132に落とさないと、[Q]4小節前のaccel.ができなくなります。このようにこの曲は、流れで次へつながるのではなく、唐突にテンポが変わる箇所が多く出てきます。これが難しく、全体できちんとつくる必要があります。

 [I]の3小節目後半、[K]の3小節目後半のriten.は、いろいろなやり方があると思いますが、だんだん遅くするのではなく、呼吸をするようにそこだけゆっくりになるのがいいのではないかと思います。[Q]の前の間の取り方もポイントだと思います。それから、[S]へのrit.は、テンポ120へrit.してつなげるやり方と、それよりもう少しrit.しておいて[S]で戻すやり方とあると思います。

 まず、54、60、132、144というテンポが、きちんとひとりひとりの中に入っている必要があります。そしてもちろんそのテンポの中で、それぞれのリズム、連符が正確に演奏できている必要があります。ですので、個人練習の段階からメトロノームを使うことがより重要になってきます。accel.、rit.の部分は個人やパートではインテンポで練習しておいて合奏で作っていくのがいいと思います。

 そして、かみ合わせでできている部分。冒頭のクラリネット、[A]の木管群や、[E]のファゴット、ホルン、トロンボーン、スネア、タンバリンなど、スコアを見て拾い出し、それぞれ集まって丁寧に合わせましょう。さらに、グループごとに違う強弱指示がされている部分など、まずスコアを必ず見て、どの楽器と同じグループなのか把握し、正確に作っていく必要があります。

トロンボーンパート解説

 それではトロンボーンパートを見ていきましょう。[A]3小節目から、トランペット以外の金管群で強弱や発音を統一しましょう。[B]2小節前のキメは冷たく正確にインテンポ。

 [B]はトロンボーンセクションから始まります。新しいテンポ54、正確に。3rd、2つ目のA音をF管4ポジション(といってもほぼ5ポジションの位置)に行って、次のC音は6ポジションに行くことなども検討してみてください。1st、3つ目のAis音は5ポジションの使用も検討してください。パッセージ的に歌いたくなりますが、情緒的にならずテンポは冷たく正確に。あくまでセクションとして聴かせるように。

 [C]あたま、[D]あたまなど3連符、転んだりせず冷たく正確に3等分でキメて。そのあとのユニゾンの動き、トロンボーンはpですが、他パートはmpであることに注意。クレシェンドもまわりの動きを追い越さないよう冷静に。[D]6小節目アウフタクトで他パートと合流です。3連符は冷たく正確に。特に頭が休符の3連符は乗り遅れやすいので注意。タイミングを取るのではなく、休符の部分でもテンポの中にいること。

 [E]、[O]は、書いたようにホルン、ファゴット、スネア、タンバリンとよく合わせて、インテンポの中で1つの流れとして聞こえるように。やはり休符の部分もテンポの中にいることがポイント。他のパートが吹いているところも一緒に吹いているような感覚で。

 [H]、[J]、[L]などクレシェンドからのキメも、冷たくテンポキープで正確に。こういう現代音楽では常に冷静さを持って演奏することがポイント。書いたように[J]、[L]はテンポの変わり目ですから、特に注意深く。テンポ144の3連符が身体に入っている必要があります。

 [I]3小節目riten.の箇所は2拍3連符的にとることになると思いますが、アバウトにならないよう気をつけて、とにかく正確に。[K]4小節目から、1st、2ndの動きに出てくる32分音符も、他パートの32分音符の動きにシンクロするよう正確に。[L]7小節目から始まる16分音符の動きも、他パートが吹いている休符の部分も一緒に吹いているような感覚で。1st、[M]直前のD音は4ポジションの使用を、2nd、[M]4小節前3つ目のF音は6ポジションの使用を、[M]2小節前3つ目のC音はF管ではなく6ポジションの使用を、それぞれ検討しましょう。

 [M]の部分は、1拍ずつずれた輪唱のような形になっています。最後は合流します。クレシェンドやグリッサンドのニュアンスをそろえるため、練習として、3rdは[M]2拍目から、2ndは[M]2小節目から、1stは[M]2小節目の2拍目からを、同時に始めて合わせてみましょう。それで合わせたニュアンスを個々がちゃんと持って、楽譜通りに合わせてみる。うねり感が出るように。3連符に向かうグリッサンドをどこから動き始めるのかもポイントです。1パートを複数人で吹いているセクションなら、ここは1本ずつにしたほうがいいかもしれませんね。[N]直前のクレシェンドは、正確に音価いっぱい。

 [Q]3小節前最後のD音は4ポジションで。そして[Q]のグリッサンドは劇的に決めたいクライマックスです。が、3rdのグリッサンドはシングルロータリーの楽器ではできない音ですね。その場合はグリッサンドもどきで。インラインダブルの楽器なら、両方押してもできますが、2つ目のロータリーを単独で使ったほうがいいですね。あるいは、Dは普通の4ポジションから始めて、上がったGesだけ2つ目のロータリーを押して(G管なら2ポジション、Ges管なら1ポジション)吹く選択肢もあると思います。

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