エンターテインメント・マーチ
全体解説
今年の課題曲もマーチが2曲。こちらのマーチはどこかミュージカルのような雰囲気のある楽しい、まさにエンターテイメントな曲ですね。今年のマーチは2曲とも4拍子。マーチといえば元々は行進のための音楽ですからほんとうは2拍子系(2/4、2/2、6/8)なのですが、課題曲マーチには4拍子の曲がよくあります。その始まりは、1959年の課題曲、團伊玖磨氏の有名な『祝典行進曲』だという説を聞きました。そうかもしれませんね。
さて、4拍子ではありますが、作曲の川北氏も書いておられるように、マーチの作法に従っての音楽作りが求められると思います。allargandoなどの指示がある箇所以外ではテンポは一定であり、場面が変化しても段差などできず1本筋が通っていること。打楽器とリズム隊(あたまうち、あとうち)がきちんとマーチのリズムを作った上で、旋律が歌うこと。スネア、シンバル、バスドラムの打楽器隊は当然重要です。これは『祝典行進曲「ライジング・サン」』にももちろん言えることです。
その上で歌う旋律ですが、フレーズを捉えること。8小節、16小節の旋律の中で、どういう区切りになっているのか。そして、その区切り1つ1つの中での重心はどこか。その上で、8小節、16小節をどう組み立てるのか。こういうところを意識して初めて、旋律がちゃんと歌になると思います。これももちろん『祝典行進曲「ライジング・サン」』にも言えることです。
リズム的には、符点リズムで舌足らずになったりしないできちんと作ること。それから、8分音符が続くところで走ったりしないでテンポをキープすること。そのためには8分音符単位でカウントすること。8分音符単位で手拍子しながら歌って合わせる練習などは有効です。このときのポイントは、きちんと手拍子すること。
さらにこの曲の場合、ポップス的要素も少し顔を出します。[B]からのトランペットとトロンボーン。このあたりは『復興への序曲「夢の明日に」』の解説も参考にしてください。
トロンボーンパート解説
それではトロンボーンパートを見ていきましょう。冒頭2小節目。最後についているタイは、作曲者も書いておられるように、3小節目あたままで響きが残るように。『ミュージカルショーの始まり!!』という感じで派手に。ただし、オクターブをちゃんと合わせて。1stのFは高くなりがちなので気をつけて。4小節目の1stと2ndの4分音符は、全体で形をそろえてゴージャスに。3rdの全音符は低音群とそろえてクリアに、そしてあまり減衰しない張った音で。『前へ』と意識してしまうと音が開いてしまうと思います。身体に共鳴させるイメージで。
[B]2小節前のクレシェンド、つつましさを持って。1stのEは第3音、Esは第7音。でも、どちらも高くなりやすい音なので気をつけてハーモニーを作りましょう。[B]から6小節間はポップスのご作法で。『復興への序曲「夢の明日に」』の解説も見てください。表拍休符をしっかり感じることがポイント。4小節目は転ばないよう3拍目あたまを正確にキメて。
[C]アウフタクトからのメロディ、もちろんクリアなマルカートの吹き方ですが、ぜひレガートにして練習もしてみてください。息の支え、フレーズ、スライドなど、いろんな練習になります。そして音域が低いですので、『音を前へ』という意識が強いと、開いた汚い音になりかねません。身体に響かせるような感じで、息は太く、タンギングは軽く。符点リズム正確に。16分音符弱くなりがちです。はっきりめに。
[E]2小節前、[I]5小節前、[K]2小節前、それぞれ全体で音の形をそろえますが、符点4分音符はテヌート型の四角い音ではなくマルカート型で。『ターータタ』ではなく『ターンタタ』にしましょう。
[E]から、あとうちです。『祝典行進曲「ライジング・サン」』にも書きましたが、あとうちも、その1つ1つの音はハーモニーです。長い音にして少しゆっくりのテンポでハーモニーを合わせてみましょう。そのための楽譜『あとうちハーモニー楽譜』を作りました。ホームページの 楽譜倉庫 にアップしてあります。ちなみに、ホルン編もあります。低音楽器も誘って合わせてみましょう。そのほか、あとうちについては『祝典行進曲「ライジング・サン」』の解説も読んでみてください。
[E]8小節目は、ポップスのご作法で。3拍目あたま正確にキメて。スネアドラムとも合わせてみましょう。[E]9~10小節目、1stと2ndのD音は4ポジションで。そしてこの箇所、転びやすいですから気をつけてテンポキープ。
[G]1小節前、クレシェンドは、つつましさを持って。[G]から、ルンバ型あとうち。2009年『マーチ「青空と太陽」』、2011年『南風のマーチ』など、課題曲マーチには時々出てくるこのルンバあとうち、ここもまず『あとうちハーモニー』を使ってハーモニーを合わせてみましょう。1stのEsと2ndのBの4度、正確に。そして、4分音符に少しアクセントを置いて8分音符は軽く。
[H]から1stと2nd、サックス、ホルン、ユーフォとよく合わせますが、まずユーフォと合わせてみましょう。ここももちろんハーモニー大切に。1、2小節目はB♭のコード、3、4小節目はD♭のコード。そして、特に符点リズムが鈍くなりがちなので注意。3rdは、低音楽器と一体になって弱くならずできるだけ張った音で吹きたいです。やはりここも、身体に共鳴させるイメージで。そして舌は軽く符点リズム正確に。
[I]4小節前、1stのD音は2つとも4ポジションで。そして[I]3小節前のallargando、テンポが遅くなるぶん、8分音符の音価は長くなることを忘れないで。
[K]から、勇壮なオブリガート。これはトロンボーンだけです!! まず替えポジションの提案から。3小節目3拍目裏、5小節目最後、6小節目あたまのD音は4ポジションで。3小節目2拍目D音はどちらのポジションで行くかはお好みで。5小節目3拍目裏のF音も4ポジションで吹く手もあります。これもお好みで。
[K]1小節目と3小節目の符点リズムをまず取り出して練習しましょう。リズムが鈍くならないようクリアに。16分音符が弱くなりがちですので少しはっきりめに。右手首をしなやかに使って。5小節目のグリッサンドはトロンボーンのお家芸ですから特に強調したいところ。3拍目のHに向かって少しクレシェンド気味にしても面白いでしょう。これは各バンドのお好みで。