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復興への序曲「夢の明日に」

全体解説

 ニュー・サウンズ・イン・ブラスの編曲指揮などでもおなじみの岩井直溥氏による24年ぶりの課題曲。久々のポップス課題曲です。岩井氏の課題曲としては6曲目になります。過去5曲の課題曲も聴かれるとイメージがよりふくらむと思うのですが、特に1976年の課題曲D『ポップス描写曲「メインストリートで」』はぜひ聴いてみてほしいですね。

 さて、もちろんドラムセットの役割が重要なことは言うまでもありません。ドラムがない場合のオプションでスネアドラムとバスドラムが書いてありますが、できるだけドラムセットを使いたいです。ただ、アドリブはダメだそうなので楽譜通りに。課題曲ですからね。それから、ハーモニー。テンションノートが入っていたりして少し複雑です。その響きを捉えることが必要だと思います。

 そして重要なのがアーティキュレーション。いわゆる、ポップスの語法。タンギングなど、クラシカルな曲とおなじ吹き方で演奏してしまっては当然曲の雰囲気が出ないです。

 アメリカのミュージシャンがジャズのフレーズを声で歌う時って、『Da』とか『Du』などの濁音なのだそうです。ジャズのタンギングはほとんどこの濁音が主体です。場面にもよりますが、ロック調のこの曲の場合にもこういう発音が必要になってくると思います。この曲に限りませんが、タンギングは『Tu』だけではなくてほんとにさまざまあります。ポップス系の曲では特にそうです。

 それから、たとえばスタッカート。ただ短くするだけではなく、その短い音がテヌートになっている感じ。文字ではうまく書けませんが、四角い音。短いけれど中身がぎゅっとつまっている感じ。これがいわゆるクラシカルなスタッカートでは軽すぎますね。さらに符点音符。クラシカルな吹き方だと符点8分音符を抜いたりしますが、これも中身がつまったテヌート系で。場所によって次の音との間をセパレートにしたり間をあけなかったりしますが、基本的に、減衰系の音はあまり使わないです。

 さらに、裏拍。クラシカルな曲では裏拍の音の前の休符を感じすぎると重くなってしまいますが、こういうポップスやジャズ系の曲では、逆にあたまの休符をしっかり感じる。拍頭のエネルギーが溜めこまれたぶん、裏拍の音は強くなります。それがアーティキュレーション記号で丁寧に書いてあったりなかったりしますので、よく音符から読み取って。

 具体的に全部は書けませんが、たとえば[H]10小節目(88)金管のシンコペーションなどは、減衰した音でも、間を開けないテヌートでも変ですね。もちろんクリアに吹きますが、やっぱり中身のつまったテヌート、そして次の拍のあたまで止めるセパレートの感じ。でもなにしろとにかく理屈よりも、言葉をおぼえるように歌ったイメージでつかむのがいいと思います。『歌って合わせる』が、ソルフェージュだけじゃなく、違う意味でも重要になってくるかもしれませんね。

 それから強弱記号。楽器によって違う指示になっているところも多いです。これにはいろいろ意味合いがあると思います。まず、ことさらそういうバランスで欲しいところ(冒頭2~3小節目のアルトサックス、ホルンなど)。それから次に、場面の変化をあらわしている強弱記号。たとえばメロディで、[A]のトランペットはmf、[A]9小節目の木管はf、[B]のトロンボーンとユーフォはmpです。[A]9小節目の木管fは少しゴージャスな感じ。サックスを少し大きめに作ってもいいと思います。[B]のmpは少しクール(冷静)に、というふうに。

 ところが[A]からパーカッションとベース楽器、いわゆるリズム隊は、[C]の3小節前から大きくなるまで基本ずっとmfです。リズム隊はフロント(メロディ隊、管楽器)の場面変化にお付き合いしない。リズム隊が大きくなるところは、ほんとうに全体で盛り上がるところです。こういうことを読み取った上での組み立てが大切だと思います。

 [B]のトランペットがmfとなっているのは、ミュートで聞こえにくいからでしょうね。だから1段大きめに書いたということだと思います。岩井氏は東京音楽学校ではホルン専攻だったそうですが、その後トランペットを吹かれていたんですよね。ちなみに余談ですが『勇者のマズルカ』の三澤さんもトランペットですね。

トロンボーンパート解説

 それではトロンボーンパートを見ていきましょう。冒頭、書いたようにスタッカート軽くなく。2小節目と7小節目の2拍目、1stのそれぞれE、Fisは、トランペットなどの♯9th(Es、F)に引っ張られないよう、しっかり第3音をとりましょう。ただしこの曲のハーモニーは基本的に平均律で作ったほうがいいかもしれませんね。コードの響きをおぼえて。こういうテンションノートが入ったコードの響きに慣れましょう。

 [A]8小節目3拍目3rd、低音楽器と合わせて。スタッカート軽くなく。16分音符にはテヌートもついているつもりで。『タタッタッタタッタ』ではなく『ダダッダッダダッダ』という感じ。文字で伝えるのは難しいです。行った先のC音は6ポジションで。[A]10小節、12小節の合いの手も、中身のつまった四角い音で。8分音符2つ、つまらないようにしっかりキメて。

 [B]の旋律、ふわっとした音ではなくタイトな音で。こういう音楽を聴いてサウンドをイメージしましょう。思うだけでも違いますから。それから3~4小節目のD音は4ポジション使用も検討を。[C]2小節前からのキメも四角い音で。1小節前3拍目裏のfzなどは、3拍目あたまにタメがある感じ。『ンター』の『ン』を意識して。そして減衰しない中身のつまった四角い音で。

 [D]3小節目からの4分音符、減衰しないで四角くセパレート。[E]の1小節前など、切りをよく合わせる。タイでかかったあたまの8分音符を意識することが大切なのは言うまでもないですね。

 [E]5小節目から、一転ソフトにハーモニー。7小節目1stのM7th美しく。そのD音は4ポジションの使用も検討を。[F]1拍前からはトランペットやフルート族などとのsoliです。歌い方、抑揚などをよく合わせて。タンギングはやはり濁音がいいと思います。よく歌い込んで。

 [H]から、一転また四角い音で。2小節目の4分音符などはもちろん短く吹くんですが、短いテヌートで。3小節目3拍目裏のような裏拍のキメでは、その前の表拍のタメを意識。7小節目8小節目なども同様です。

 最後の小節に向かうグリスダウンは途中弱くならないように派手に。

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