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祝典行進曲「ライジング・サン」

全体解説

 ゆっくりの短い序奏を伴ったマーチです。タイトルどおりの華やかで堂々とした演奏にしたいですね。旋律に何度も出てくる7度跳躍(G→F)、美しくつなげたいです。そのためには息の支えや歌が大切だと思います。

 マーチというと、トリオで下属調に転調するものが多いと思います。1回転調するだけですね(トリオから頭に戻ってくる曲もありますが…)。ところがこの曲の場合、まず序奏がB-dur。マーチテンポに入るところでEs-dur。トリオでAs-durになり、トリオ後半[G]でCes、Fes、Bes、D、Gと下属調方向に転調。As-durに戻って[I]の5小節目でGes-durへ。最後はEs-durで終わるという、どちらかというと意表をつくような転調が目まぐるしく出てきます。[G]の部分は特にですが、全員がちゃんとソルフェージュできるように、自分の音を楽器を使わなくてもちゃんと歌えるくらいにしておくことが必要だと思います。

 それからアーティキュレーション。いろいろ記号が書いてある音符が多いです。そういう記号、たとえば冒頭のトランペットに出てくるテヌート。marcato指示の箇所の音符にテヌートはどういう意味で書かれたのか。たとえば[A]3小節前の金管3連符もテヌートですね。どう吹くのか。スタッカートもたくさん出てきます。そういうアーティキュレーションの解釈。想像力、イメージが問われると思います。楽譜を見ていると、『律儀だなぁ』と思ってしまいますね。

 ところがパーカッションパートにはあまり書かれていないんですよね、アーティキュレーションが。管楽器と同じ動きをしている打楽器パートは、管に書いてあるアーティキュレーション(スラー、スタッカートなど)を把握しておくことが必要だと思います。同じことをやるわけですからね。それをわかっているのといないのとでは、演奏が変わってくると思います。打楽器パートは特に、スコアを読むことは必須でしょうね。さらに打楽器は音色にもこだわりたいです。たとえばトリオ前半のタンバリンのあとうち、楽器をどれくらい傾斜させて打つかで音色や音の長さがずいぶん変わります。

トロンボーンパート解説

 それではトロンボーンパートを見ていきましょう。まず序奏。堂々と。マルカートですが、もちろんハーモニーを意識して。3rdトロンボーンはテューバとよく合わせて。低音Fに降りていく下降型は、息のスピードよりも太さ。太くしていく感じ。それから、『前へ』と意識してしまうと音が開いてしまいかねないと思います。身体に響かせる感じで。

 [B]から、ユーフォ、ファコット、アルトクラ、テナーサックスと一緒にレガートのオブリガート。まず替えポジションの提案です。1小節目4拍目、3小節目2拍目のそれぞれD音は4ポジションがオススメです。そしてユニゾンをよく合わせて。最初のEsは高くなりがちです。要注意。でももしかしたらユーフォも高くなるかもしれません。楽器それぞれにいろいろ事情があるものです。チューナー命ではなく、合奏では歩み寄りも必要かも。

 [C]アウフタクトから、低音群のユニゾンメロディ。アウフタクト4拍目のCをF管ではなく6ポジションに行き、次のBをF管の3ポジション(とても遠くてほとんど4ポジションに近い)に行く手もあります。お好みで。符点リズムのところだけ取り出した練習もしてみましょう。4小節目の16分音符の動き、右手首をやわらかくして。

 楽器を構えてスライドだけ動かしながら声で歌ってみる、また、楽器を持たず身体の前で右手を動かしながら歌ってみるなどの練習も効果的です。そして、こういうマルカートの旋律のときはいつも書きますが、少しゆっくりレガートにした練習もしてみましょう。息の支えはマルカートになってもレガートのときと同じで。そして、音域が低いですので序奏の3rdと同じく、太さ。

 [D]3小節前、3連符1つ目のD音は4ポジションの使用も検討しましょう。ただし高めになるので音程注意。1ポジションを使って1→3→5と行くのなら、あまり1つ1つのポジションでスライドを『止めよう』という意識が強すぎると右手や身体に力が入ってしまいます。むしろある程度流れるように動かすほうがいいでしょう。4→3→5を使うのなら特に手首を自由にして。1stはそのあとのD音も4ポジション使用の検討を。

 [D]から、あとうちが続きますね。あとうちも、ハーモニー。1つ1つの音がハーモニーになっていることを忘れないで。少しゆっくりのテンポでハーモニーを合わせてみましょう。テューバなど低音群とも一緒に。そのときできれば、あとうち音型ではなく2分音符など長い音にした楽譜を作って合わせてみるといいですね。そう思って『あとうちハーモニー楽譜』をつくってみました。ホームページの 楽譜倉庫 にアップしておきます。ちなみに、ホルン編もあります。1つ1つのハーモニーも大切ですが、ハーモニーの流れを感じることが大切。

 さて、あとうちのポイントは過去の課題曲の解説でも書きましたが、息はほんの少ししか消費しないので、たくさん吸い過ぎると『息余り感』を感じて苦しくなることがあるかもしれません。そんなときは、『肺の中の空気の量をちょうどいいラクなところにしておく』と思うといいかもしれませんね。たくさん空気が入っていないと不安かもしれませんが、大丈夫。ちょっとしか使わないんですから。それから、マーチのスタイルにもよりますが、この曲や『エンターテイメント・マーチ』では、拍の真裏よりもほんのちょっとだけ前に吹く感じでいくと軽やかさが出ると思います。

 [G]アウフタクトから、[C]の部分で書いたことにも留意してください。調性がどんどん変わっていきますから、ちゃんと音がとれるように。冒頭に書いたように、楽器を使わなくても声で歌えるようにしましょう。

 さて、替えポジションの提案です。[G]1小節目3拍目裏、16分音符のB音は1ポジションに戻るよりF管のままで3ポジション(かなり遠めでほとんど4に近い)を使うほうが吹きやすいです。左手親指の操作が減りますから。1stと2nd、[G]6小節目最後のD音は4ポジションがオススメ、同じく1stと2nd、[I]6小節目2拍目のB音は5ポジションがオススメです(1拍目のB音は1ポジション)。

 それから気をつけるポイントは、F管2ポジションで吹く下のCes。F管を押した時は普通の2ポジションのままでは高くなりますから、かなり遠く、2.3ポジションくらいの感じ。よく合わせてください。[G]2小節目のFes→Cesは、おんなじ2ポジションではダメです。Cesのほうが遠くになります。よくつかんで。[H]6小節目のベルトーン、意思を持った音で、よく合わせて。

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