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行進曲「希望の空」

トロンボーンパート解説

 航空自衛隊中央音楽隊の和田信さんが書かれた曲。英題にある『Silver Lining』というのは、『悪いことの後にはいいことがある』という英語のことわざから来ているのだそうです。オーソドックスなマーチですが、拍子が6/8拍子。6/8のマーチは課題曲としては久々ですね。『さくらのうた』の解説にも書きましたが、この拍子、なかなかの曲者です。しっかり攻略しましょう。トロンボーンにはマルカートのメロディやオブリガートが目白押しで、なかなか吹き甲斐がありそうです。では、こまかく見ていきましょう。

 まずイントロです。拍の頭に音がない形。油断すると8分休符がのびて遅れがちになります。この曲全編とおして大切なことですが、やはり最初は1小節を8分音符単位の6つにカウントすることが大切だと思います。8分休符で『うっ』という感じで流れが止まると遅れたり重くなったりしてしまいますから淡々と流れに乗る感じ。軽くクリアに。タンギングも軽く。トランペットやサックスなどのグループとうまくかみあうように。3小節目のヘミオレも重くなりそうですので、タイを取って練習してみるのもいいと思います。

 [B](21)、マルカートのオブリガートです。まず1小節目2拍目あたまの8分音符B音は5ポジションの使用を検討しましょう。そしてやはりイントロと同じく8分休符から始まる形。このリズムの攻略がこの曲のひとつのポイント。やはりタイミングを取るのではなく、その前から流れに乗ること。休符は『お休み』ではなく『音のない音符』だと思って。[B]8小節目(28)のフレーズ最後の音は8分音符ではなく4分音符であることに注意。低音群の4分音符と同じ感じだと思うと、つかみやすいでしょう。

 [C]の4小節前(33)、低音群とともにユニゾンです。やはりあたまが8分休符。そして、[C]の3小節前に向かっていく方向性を持ってアクセントしっかり決めて。ただしリズムは転ばないように冷静に。せっかく方向性を出しても転んでしまっては説得力がありません。

 [C](37)のアウフタクトから、ユーフォニアム、アルトクラ、テナーサックスとともに、マルカートのメロディ。2小節目(38)のD音は4ポジション(少し遠め)の使用も検討してください。そして1小節を6つにカウントしてリズムを正確にすることはもちろんですが、少しテンポを落としてテヌート、またはレガートでも練習してみることをオススメします。マルカートで吹いた時も、レガートで吹いた時と息の支えの感じは同じで。[C]の6小節目(42)はやはりタイを取った形でも練習してみましょう。

 [D](53)のアウフタクトからも[C]と同様。ただしアウフタクトの音が変わっています。ここのB音は5ポジションの使用も検討して下さい。そしてメロディはおんなじでも伴奏は[C]とは変わっていますよ。そんなところも感じながら吹いてみましょう。

 [E]の5小節前(64)のクレシェンドは場面のつなぎです。前後の場面をちゃんと感じて。2拍目の符点4分音符、長さとクレシェンドは小節の終わりまでしっかり保って次につなげましょう。そして[E]の4小節前(65)からはイントロと同じですが、強弱がここはフォルティシモに上がっていることに注意。でも、ていねいに。『大きく吹いてやろう』と思うと力が入ってかえって響かなくなってしまいます。力で押さず、響きが増す感じで。

 [E](69)は[B]と同じですが、ここも強弱がフォルテに上がっていますね。

 [F]の4小節前(81)も[C]の4小節前と同様ですが、ここは強弱がフォルティシモに上がり、そして音域は低くなっていますから[C]の4小節前より鳴らしにくいところ。雑にならないようにしたいです。響きや息に太さを持って。[F]の1小節前(84)2拍目は転びやすいので気をつけて。リズムとテンポは淡々と正確に。[F]のあたまは4分音符であることに注意。響きをもってしっかり決めて。

 [F](Trio)の2小節目(86)から、テヌートの8分音符。『ひとつひとつ置いていくようなイメージで』と作曲の和田さんは書いてみえます。1つ1つの音がオルガンのように。もちろん、ハーモニーを大切に。テューバ、コントラバスとも一緒にまずハーモニーを合わせてみましょう。各パート(1st、2nd、3rd)を複数で吹いているセクションなら、この部分は各1人ずつにするのもいいかもしれません。いろいろ試してみましょう。

 [I](121)から、低音群とともに流れに乗ってリズムを正確に吹くことはこれまでの部分と同様です。フォルティシモのアクセントですが、雑にならずちゃんと1つ1つの音程が聞こえるように。各音が短すぎないように気をつけましょう。[I]の7小節目(127)の2拍目あたまのB音、[J]の1小節前(132)の2つめ(2拍目直前)のB音は、それぞれ5ポジションの使用を検討して下さい。

 さらにここは[I]2小節目(122)や6小節目(126)、それに[J]の1小節前(132)に符点のリズムが出てきます。まず、16分音符でスライドが正確にそのポジションに行くように。そのためには右手の力を抜いて手首も生かして。右手の練習はゆっくりから。16分音符→8分音符だけとか、部分を取り出してた練習も。そして、こういう16分音符は弱くなりがちですから、逆に16分音符をしっかり大きめに吹きましょう。東京佼成低音セクションの演奏がYoutubeにあります。http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=SaYLU8kyvuE

 [J](133)から、マルカートのオブリガート。ここは強弱がワンフォルテに落ちますから、軽く。ここでも仲間はユーフォニアム、アルトクラ、テナーサックス。ユニゾンをよく合わせて音程注意。たとえば2小節目(134)の3つの音はどれも3ポジションですが、おんなじ3ポジションではないですよね。特にCとEsの場所は、楽器にもよりますが、けっこう違います。[J]9小節目(141)~11小節目(143)にかけてのF→Fes→Esの流れは大事にしたいところ。ていねいに合わせましょう。10小節目(142)のFesとDesの両2ポジシションの場所も、きっと同じではないですよ。気をつけて。

 [K](149)の前のクレシェンドもちゃんと小節の終わりまでしっかり保って次につなげましょう。[K]からは強弱がフォルティシモに上がります。雑にならないように。このようにこの曲、形は同じだけれど強弱が変わるというところがいくつか出てきますから、それがちゃんと表現できるようにしましょう。

 [L](157)の前のディミヌエンドは行き先の[L]がメゾフォルテで楽器も少ないです。クレシェンドやディミヌエンドは行き先を意識して、ちゃんと渡してあげるようにしましょう。

 それでは、いい演奏になりますように…。

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