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さくらのうた

トロンボーンパート解説

 2004年の課題曲『吹奏楽のための「風之舞」』の作曲者、福田洋介さんが書かれた美しい曲。やわらかく、なんだか映画音楽のような印象もありますね。6/8拍子で書かれています。今年の課題曲には6/8拍子が2曲ありますが、この3連符系の拍子、じつはなかなか曲者です。4/4、4/3、4/2などの拍子では1拍が2つに分けられますが、8/6では1拍が3つに分けられます。しっかり感覚をつかんでください。

 この曲でのトロンボーンはハーモニーが主体です。曲想に合ったやわらかく澄んだ響きで。決して硬い感じや荒い感じにならないように気をつけましょう。こういうハーモニーやコラール調のパッセージでは、パート練習(トランペットやホルンなどとも一緒に)では楽器で合わせるだけではなくて、ぜひ声でもハモれるように練習することを勧めます。必ずプラスになると思います。3rdは低音群との共同作業の部分も多いです。低音と音形は違っても音が同じ箇所もありますね。それを把握することは当然大事です。それから、この曲は課題曲としては珍しくトロンボーンのソロも出てきますね。それでは、こまかく見ていきましょう。

 5小節目、1stトランペットの旋律と音符の形や音のスピード感や響きをそろえて、澄んだ響きにしましょう。3rd、5小節目2つめのDesの5ポジション、ピッチが不安定にならないよう、2ndとの5度をよく合わせて。そして流れの中で響きがつくれるように。6小節目2ndのAs→Gの動き、大事です。2拍目できれいに第3音に解決するように。ここでホルンも合流してきます。

 [A]の9小節目(17)、トランペット2nd、3rd、ファゴット、バスクラリネットとともにハーモニーです。メロディ(クラリネット、サックス)に対してのハーモニーだということを意識して。17は第3音が、18は第5音が省かれています。それぞれメロディの中にあるからですね。ですのでハーモニーパートの音は2つしかありません。そのユニゾン、そしてそれぞれの音の関係(4度、長3度)をきちんと合わせて。ただ、ハーモニーでは縦の響きだけにとらわれるのではなく、横の流れを感じることが大切です。そのためにもやはり、歌って合わせることも有益です。

 [B]の5小節前(20)の3rdの動き、低音群とともにきちんとテンポに乗って。こういう拍のあたまが8分休符の音形では、その拍のあたまを感じようと意識しすぎてしまうと逆に流れに乗りにくく、重くなってしまいます。小節を2つではなく6つにこまかくカウントして、しかもそのカウントを身体の表面に出さないように、つまり拍のカウントが身体の動きに出ないようにし、身体の中で拍を感じることがポイントです。ただし、身体が動かないように固めるわけではないですよ。[B]の1小節前(24)、2ndのA音はトランペットも聴いてください。

 [B]の5小節目(29)から、やはり小節を6つにこまかくカウントしましょう。少なくとも最初のうちはそうしないとリズムがつかめないと思います。そして慣れてきたら、各拍が3拍子になっている、拍が回る感じがつかめるといいと思います。そして、拍ごとに音は変わりますがハーモニーはそれぞれの1小節の中では変わらないことに注意。[B]の9小節目(33)から、Tuttiのハーモニー。強弱指示はフォルテになりますが、あくまでやわらかく。3rdは低音とよく合わせて。

 [C]の6小節目(46)、この部分はトロンボーンだけではなくホルンやユーフォ、テューバなどと一緒に合わせてみましょう。46小節2拍目のハーモニーはCaug7です。ホルンの旋律線(1st、3rd)は#9th。[D]の5小節目(53)から、トランペットとバランスやクレシェンド、音形などよく合わせて。トランペットには拍のあたまにスラーがありますから、符点8分音符は短くならないほうがいいでしょう。[E]1小節前(56)のディミヌエンドもよく合わせて音の終わりまで意識を持って。

 [E]の5小節目(61)から、ここもトロンボーンだけでではなくTuttiの中で響きをつかんでください。ちなみにここのハーモニーはG♭m7に9thと11thが入ります。音が6つもありますがそんなに難しい響きではありません。フォルテですが硬くなく。3rdは低音と共同作業。

 [G]の5小節目(82)からは[D]の5小節目と同じで、符点8分音符は短くならないほうがいいでしょう。調性が変わって、楽器も増えています。[H]の4小節前(84)のテヌート、3小節前(85)のフォルテシモ、どちらも硬くならないようにしたいです。8分音符の長さに注意して。[H]2小節前(86)の3rd、低音群とともにアクセントですが、こういうアクセントを舌で表現してはいけません。ここに限らずですが、息がメイン。舌は軽く付けるだけ。硬くなったり荒くなったりしないように堂々としたアクセントで。

 [H]の8小節目(95)から、さて、ソロです。まず、[H]の10小節目(97)2つめ、16分音符のC音、それから次の小節(98)2拍目のC音は、6ポジションも考慮しましょう。その次の小節(99)あたまのB音は、F管の3ポジション(ただしかなり遠くて、ほぼ4ポジションに近い)も考慮しましょう。音程や音の抜け、スライドの動きなどを考慮して、どちらのポジションで行くかを決めます。

 このソロ、音域が低いです。特に[H]の10小節目(97)の動きなど、これをきれいにスラーで吹くのはかなり難しいと思います。息をたっぷり流して、舌は軽く。切りすぎると音程が聞こえなくなってしまいます。もちろん拍は6つにカウントして、まず息の流れとスライドを練習するために、タンギングなしでポルタメントのようにして練習することをオススメします(ブレス後だけはタンギングあり)。息の流れが音の変わり目でやせたり段になったりしないように、ずっと流したままで。途中に出てくる低いFisもちゃんと響くようにします。ただしアクセントではなく。そのためにはどう息を流したらいいのか、どうコントロールしたらいいのか練習します。

 息の流れと右手の練習をしたら、その息の流れのまま、そこにタンギングをつけて普通に吹いてみます。もちろん右手はリラックス。タンギングは軽く。リップスラーでいける箇所でタンギング(レガートタンギング)をするかどうかは人によっていろいろですが、ぼくがもし吹くとしたら、全部タンギングします。伴奏リズムのかみ合わせも複雑ですので惑わされないように、自分の中にちゃんとテンポを持って自信を持って吹くことが大切です。右手を動かしながら歌ってみることも有益な練習です。

 それでは、いい演奏になりますように…。

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