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マーチ「ライヴリー アヴェニュー」

トロンボーンパート解説

 今年の課題曲もマーチが2曲。この、マーチ「ライヴリー アヴェニュー」は、明るく軽快なマーチですね。トロンボーンの役割はきわめてオーソドックス。全体としてはクリアで歯切れのいい明るい音、澄んだハーモニーや軽やかなあとうち、旋律やオブリガートはクリアに、そして力強さも欲しいですね。パート譜をみていくと、ユニゾンのところと、音がわかれてハーモニーになっているところとありますから、まずはそれを把握すること。そして、それぞれの部分で、それが旋律なのか、オブリガートなのか、あとうちやハーモニーでの伴奏の役割なのかを把握することが当然大事です。それでは細かく見ていきましょう。

 イントロ、力強くクリアに、でもだからといって発音がきつくなったりせず、軽やかに吹きたいですね。アクセントやスタッカートは必要以上に意識しすぎず自然に。トロンボーンの中でのハーモニー、そしてトランペットやサックスとのユニゾン(オクターブ)音程にも気を配ります。誰が自分と同じ音を吹いているのかを意識しましょう。1stトロンボーン、2小節目あたまのDは当然4ポジションで。

 ところで、このイントロに限らず、こういうスタッカートを昔は、「音の終わりを舌で止めてはいけません。音の終わりには少し余韻をつけて。」などと言われたりしましたし、ぼくも過去の解説でそう書いたこともありました。でも、ずばり言うと、舌で止めていいんです。というか、自然に吹くと、おそらく誰でも舌で止めていると思います。ただし、舌はきわめて軽くです。響きを止めない、よく響いた音というのは、意識して不自然に余韻を付けるような音の終わりの処理とは全然違うことです。

 [A]、[B]は、おもにあとうちですね。過去の解説にも書いてきましたが、あとうちもハーモニー。長い音にして和音の響きを確かめましょう。比較的すぐれた演奏をするバンドでも、マーチであとうちがハーモニーしていない演奏があったりします。えっ、なんで!? と思います。それから、8分休符ごとにブレスをしたり支えを抜いたりしないで、フレーズを感じること。そして、マーチのスタイルにもよりますが、この曲のように軽やかなマーチでは、決してあとうちが拍の裏よりもうしろにならないように。重くなってしまいます。逆にドイツスタイルのマーチなどでは、少し重めの方がいいと思います。

 もうひとつ、あとうちのポイントを。あとうちって、そんなに息を使わないので息が余ったりしませんか? 息が足りなくて苦しくなることはありませんよね。逆に息が余って苦しくなったりする。肺が満杯な状態を10、逆に空の状態を0とします。あとうちを吹くのに必要な息は、4小節一息でも多分せいぜい2ぐらい。その2を出すのに、肺の10~8や9~7のあたりを使うと苦しくなる。普段の呼吸に近いところ、6~4とか5~3とかあたりを使うと、らくに自然に吹けます。図に書くと分かりやすいんですが…。

 [C]のアウフタクトからは低音軍団とのメロディです。力強さは欲しいですが、ffではなくfですから、軽やかさも持って。特に付点のリズムで重くならないよう、右手をリラックスさせて。力が入ると重くなってしまいます。[D]からの対旋律も、軽く。

 Trio~[E]の4小節間、ベースラインとトロンボーンのあとうちだけでハーモニーが聞こえなければなりません。ゆっくりハーモニーを確かめてみましょう。そのハーモニーの変化を感じて。3rdトロンボーン、3小節目2拍目裏のGes、大事です。ハーモニーをよく感じて。それからそのすくあとのFは6ポジションも試してみましょう。

 [F]の13小節目から、トロンボーンの澄んだハーモニーを作ってください。パート練習でチューナーを使っているバンドも多いと思いますが、こういうハーモニーを合わせるのにチューナーに頼るのはあまり意味がないかもしれませんよ。チューナーで針がセンターに来る高さがハーモニー的に正しいとは限らないですし、チューナーの針にたよって、音や響きを聴くことがおろそかになってしまっては逆効果です。さらに、ハーモニーが合うために必要なことは、正しいピッチだけではありません。もしかしたらもっと大事なことがあるかも…。ポイントは、響きを聴いて合わせること、毎日一緒に合わせること。楽器でだけでなく、ときには声で合わせてみるのもいいんですよ。ハーモニーはトロンボーンの大切な役割です。3rdトロンボーンですが、[G]4小節前のFは6ポジションも検討しましょう。ハーモニーの移り変わりをきれいに。そして、そのF→Ges→Fの動きは2ndトランペットとオクターブですね。トランペットとも合わせておきましょう。

 [G]から、イントロもそうですが、付点のリズムが鈍くならないように、軽やかに。いろいろな箇所でポイントになるこの付点のリズム、リズムをきちんととるためには、パートで8分音符単位で手拍子をしながら楽譜を歌ってみる練習もいいと思います。その手拍子がパート全員でそろうように。3rdトロンボーン、9小節目のFはどちらも6ポジションがいいと思います。1stトロンボーン、10小節目から、Dは4ポジション、13小節目のFも4ポジションを検討してください。高音域も響きを失わずに。そして、細かい動きでもタンギングは軽くです。舌を強くしてもクリアには吹けません。むしろ逆効果。

 [H]から、クライマックス。ユニゾンのメロディです。マルカートでクリアに。クリアに吹くのと発音をきつくするのとは全然違うことですから、発音、タンギングは常に軽く。8分音符でも響き、音程がきちんと聞こえるように、響きでクリアに。そして伸びやかに。[H]の8小節目と10小節目、最後から7小節前と9小節前のDは4ポジションも試してみるといいと思いますが、1ポジションより音程は難しくなると思いますのでユニゾンの音程が合いにくくなるリスクはあります。そのあたりも考慮して替えポジションを使うかどうか決めてください。13小節目からのクレシェンドは押し付けがましくなく自然に。息の支えが足りないと音に伸びがなくなります。息の余裕が大事。そのあとのffも、力が入って余裕のない音にならないように気をつけましょう。

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