FUKUMI, Yoshiro's Homepage

汐風のマーチ

トロンボーンパート解説

 今年の課題曲のマーチのうちのひとつ、田嶋勉先生の曲です。田嶋先生といえば、2004年の「エアーズ」、また、2007年の「ピッコロマーチ」が思い出されます。この「汐風のマーチ」も、「ピッコロマーチ」とどこか似たキャラクターを感じますね。ちなみに余談ですが、ぼくも「しおかぜのマーチ」という曲を書いたことがあります。2006年の朝日作曲賞に出品し、「ピッコロマーチ」とともに最終選考で競い合いました。落ちてしまいましたが…^^;

 さて、マーチの課題曲の時にはいつも書きますが、基本はテンポキープ。走ったり、重くなったりしないこと。それができてはじめて、表現の段階に進むことができます。さらに、マルカートの吹き方、クリアな発音、それから澄んだハーモニーなどが求められます。田嶋先生の曲の場合、あとうちも含めたハーモニーが、トロンボーン3本で常に3声とは限らず、時に1stと2nd、2ndと3rdがユニゾンになっている部分もよくあります。ホルンなどと一緒に合わせる練習も必要になると思います。

 イントロです。冒頭の付点のリズム、曲の性格を決定づけます。なんとなく吹いてしまわず、ちゃんと意思を持って。軽やかな、でもはっきりした音形になるように。もちろんユニゾンやリズム、音の形をそろえることは大切です。そして2小節目は乗り遅れないように。そのためには、身構えて待つのではなく、リラックスして、休符の間も流れの中にいることがコツ。その流れで吹く。これはここに限ったことではなく、吹いている間も休符のときも、常に流れの中に身を置いている感じが大切です。短い休符は「お休み」ではなく、「音のない音符」です。

 [A]はあとうちですね。これまで何度も書きましたが、まずあとうちは、強弱記号よりも少し小さめ、静かに吹く感じ。ブレスは8分休符のたびにではなく、たとえば2小節とかの単位を一息で。そして、息の支えは音符ごとではなく、一息で吹いている間ずっと支えたままで。休符でも支えは抜かずに。ただし、軽い支えで。難しい言い方ですが、1つ1つの音符ではなくフレーズを吹く意識を持って。

 さらに、これはマーチの性格によっていろいろですが、少なくともこの曲の場合は、拍の裏よりも音がうしろに行かないように。ちょっと早めにつかんで発音するような意識を持つと軽やかさが出ると思います。そして当然、スタッカートの意識で。ただし、その短い音がちゃんとハーモニーになっていること。長い音にしてハーモニーを合わせる練習も有益です。

 さて、[A]、[B]は、2ndと3rdが部分的にユニゾンになります。当然それを把握して吹くこと。ユニゾンは音程が少しでもずれると濁ってしまいますのでよく聞いて合わせますが、まずは、「ここはユニゾンだ」という意識を持って。

 [C]アウフタクトから([D]も)、低音群とのメロディです。4小節間を一息で吹けるのが理想ですが、3rdは難しいでしょうね。フォルテは力が入ると響きませんから、リラックスして。大きな音は力で出すものではないです。そして、マルカートでクリアに。ただし、発音をきつく、ではないですよ。「痛い音」にならないように。響きでクリアに。2小節目ですが、3拍目の前をフレーズの切れ目にしないように。

 さて、このメロディ、3rdは音が低くて大変ですね。下のBはF管の3ポジション(遠めでほとんど4に近い)でも出せます。試してみましょう。さらに、2小節目4拍目のCは6ポジションに行った方がいいかもしれませんね。この音域は、はっきり吹こうと思いすぎてきつい音にならないよう気をつけましょう。

 さて、[C]と[D]の5~6小節目などに出てくる、16分音符2つ、8分音符2つの、「ンタカタッタッ」のリズムは、16分音符よりも8分音符のほうが軽くなるイメージで。

 [E]です。ここに限りませんが、1st、上のFやEsは高くなりがちです。気をつけて。もちろん、この箇所のようなTuttiのときには、自分と同じ音を回りに見つけて合わせることが大切。たとえば[E]1小節目なら、1stトランペットや1stホルン。そして、高い音だからといって細くならないように豊かに。身体がちゃんと使えていることが大切です。

 [F]の2小節前からのような動きは、楽譜どおりのスタッカートだけではなく、テヌートでも練習してみましょう。楽譜どおりスタッカートで吹いても、テヌートの時と同じ息の支えの感じで。[H]の2小節前からも同様です。さらに[H]の2小節前は、1stと2nd、3拍目のDは4ポジションがおすすめです。ただし音程注意。普通の4ポジションよりちょっとだけ遠く。

 [J]アウフタクトからのユニゾン(オクターブ)、ここも1stと2nd、Dは4ポジションがおすすめ。さらに、[J]5小節目のFですが、1stは4ポジション(近め)、2ndと3rdは6ポジションがおすすめです。そして、[J]から[L]にかけてはどんどん転調を繰り返しますから、音程をちゃんととることが大切。楽器まかせにしないで、楽器を使わなくても音がとれるように。すこしゆっくり声で歌って合わせてみる(1stは音が高くて大変ですが…)ことも有益です。

 そして[J]の3~4小節目や7~8小節目では特に、音の形や吹き方のイメージを持って。さらに、トランペットやホルンとそろっていることが大切。でないと、1つのセクションとして聞こえてきません。

 [K]のハーモニー、1小節目と2小節目、それぞれ3拍目は2ndと3rdは合流してユニゾン。注意ポイントです。同じ小節の前半のそれぞれ完全4度も、よく合わせて。特に2小節目の3rd、Gesの5ポジションは音程注意です。もちろん全体を聞いてください。3小節目からは1stと2ndの完全4度、よく合わせて。1stは高くなりがちな音ですから気をつけて。3rdは3小節目から低音やユーフォに合流です。

 [L]アウフタクトからはトランペット、サックス、ユーフォなどとともにユニゾンのメロディ。吹き方をそろえてマルカートではっきり。はっきりといっても、舌に力が入らないように。響きでクリアに。この箇所も、テヌートにして練習してみるのも有益だと思います。それから、付点のリズム正確に、軽やかに。やはり、舌に力が入るとうまくいきません。タンギングは軽く。スライドの動き的に4小節目のほうが難しいですね。右手のリラックスがポイント。

 さて、[L]の5小節目からのハーモニーはトロンボーンだけ。透明感のあるハーモニーに。[L]の6小節目、1stと3rdはオクターブになることに注意。よく合わせて。1st、上のFは高くなりがち。気をつけて。[L]の7小節目1拍目の2分音符、3rdのGは他パートのAsとぶつかりますが、トロンボーンパートのハーモニーがしっかりしていれば、違和感なく行けると思います。

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