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オーディナリー・マーチ

トロンボーンパート解説

 今年の課題曲も、マーチが2曲。その中の1曲、高橋宏樹さんの曲です。高橋さんといえば、2003年の「イギリス民謡による行進曲」、2005年の「ストリート・パフォーマーズ・マーチ」が思い出されます。今年の「オーディナリー・マーチ」はスーザスタイルのマーチ。まず、オーケストレーションが厚く書かれてありますので、全部をがんばって吹いてしまうのではなく、出るところは出て、そうでないところは軽く吹く。そして、この曲の3rdはバストロンボーンでなくテナーバスでいいと思います。ただし、わざわざ持ち替えたりする必要はないですよ。

 この曲では3つの調性が出てきます。2回、転調するわけです。フラットが1つずつ増えて、最後にはDes-dur(変ニ長調)になります。トロンボーンにとっては少し音程の難しい調になります。これを機会にDes-durの音階をよく練習しましょう。

 冒頭の2分音符、スピード感のある音でクリアに。ただし、強弱はffではなくfであることに注意。1stは音程が高くなりがちな音ですから気をつけて。それから、2小節目2拍目裏が乗り遅れないよう気をつけましょう。その前の4分休符で身体も「お休み」してしまうと遅れてしまうと思います。ここには、「音のない音符」があると思って、身体はお休みしないように、支えは保ったままで。

 [A]から、頭打ちの4分音符は低音に軽く乗っかる感じ。あくまでも、軽く。強弱はバンド全体としてmfということですので、それよりさらに一段小さいくらいでいいと思います。そして、ハーモニーの意識。短い4分音符のきざみでも、ハーモニーが聞こえなければなりません。これはあとに出てくるあとうちの形でも同じです。長い音にして合わせてみましょう。1stと2nd、EsとBの4度がきれいに合うように。Esは高くなりがちなので気をつけて。

 [A]の7~8小節目、15~16小節目の、低音群との動き、合いの手。ここは、出るところです。バンドとしての強弱も一段上がりますね。出るところと引っ込むところのメリハリをつけて。ただしユニゾンですから、音程にも気を配って、そして全体で1つの音になる意識。がんばりすぎてバラバラの響きにならないように。

 [B]から、1stはトランペットの3rdと一緒にファンファーレキャラクター。クリアに、軽やかに。トランペットとよく合わせてください。これは大事なパッセージですし、[B]に入るときに音が飛びますから、[B]の前はあまりがんばりすぎず、少し他の人に任せる感じでもいいと思います。

 [C]のアウフタクトから、低音群と一緒にメロディ。ここはもちろん「出るところ」です。力強く。学校バンドに行くと、はっきり吹いたりしっかり吹いたりということが必要な箇所で、よく「息のスピードを速く」という合言葉?が聞かれます。でも、息のスピードが速すぎてうまく当たらなかったり響かなかったりということもあります。その音に合った息のスピードで。この箇所のように音域が低いところでは、むしろ息はあまり速くなく。しかし、太く。

 音程要注意ポイントは[C] 7~8小節目のCes。F管のこの2ポジションは、楽器にもよりますが、普通の2ポジションよりけっこう遠くです。あっ、ここ、F管のない楽器の人は大変ですね。ぜひヒモを使うことをおすすめします。そのあと、[C] 11~12小節、Desの5ポジションも、もしかしたら合いにくいところです。よく合わせてください。

 さて、替えポジションです。[D]4小節前のCはF管を使わず6に行くのも試してみてください。その次の小節のF、やはり6ポジションも試してみてください。ただし、使うかどうかはお好みで。それから、[D]2小節前は、場面の変化が感じられるようなディミヌエンドになるといいですね。

 Trioから、少し変形の、あとうち。ひじょうに軽く。静かに。もちろん、ハーモニーを合わせてみましょう。4分休符のたびにブレスをしてはダメ。たとえば4小節くらいの単位を、一息で吹きます。4分休符でも身体がお休みしないように、支えはそのまま保ったたままで。身体の感じはロングトーンをしている時のように。

 [G]から、勇壮な対旋律。トロンボーンのほかにはテナーサックスにしかありません。Tuttiの中でもしっかり聞こえるように、マルカートでクリアに。力が入ると音は響きません。ffだからといって力まずに。身体はmfで吹いているような感じで。音を、押し出すのではなく発射するイメージで。

 リズムにも気をつけて。付点が甘くならないように。前半の[C]の部分もリズムがいい加減になりがちだと思います。この箇所にしても、たとえば4分音符単位で手拍子をしながら楽譜を歌ってみる練習などをするといいと思います。正確なリズムで歌えなければ、正確なリズムで吹けません。その前にまず、そのときの手拍子が正確になるように。これ、ポイントです。

 そして、ユニゾンよく合わせて。特にポイントになりそうなのが、[G]8小節目のEs。楽器にもよりますが、その前のAsと全く同じ3ポジションではないと思います。よく聞いて合わせてくださいね。[G]の13小節目はpに落ちます。こういうところでメリハリをしっかりつけて。

 [H]からも同様ですが、7~8小節目は音程要注意ポイント。As、Es、Gesのそれぞれ3ポジションは、楽器にもよりますが、それぞれ違う位置になると思います。音程調節をしっかりしましょう。そのときできればチューナーを見ながら吹くのではなく、回りの音やハーモニーディレクターなどの音を聞いて合わせられるようにしてください。聞きながらスライド位置を調節する。そして、7小節目最後の8分音符のFは、4ポジションがおすすめです。3rd、optionで書いてあるオクターブ下の音を吹くのなら、Fは6ポジションも試してみてください。

 そのあと、[H]9小節目からのあとうちも、やっぱりハーモニー。1stのFは高くなりがちな音ですが、ここは長三和音の第3音です。それから、11~12小節目の1stと3rdの完全5度、3rdはGesの5ポジションがちゃんととれるように。こういうハーモニー上の落とし穴ポイントがたくさんあるのが、Des-durとかGes-dur(フラット6つ)などの調性です。他の曲でもこういう調性が出てきたら、特によく合わせることが必要だと思います。

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