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躍動する魂 〜吹奏楽のための


 今年から、課題曲Vは高校も選べるようになりました。課題曲Vは、『吹奏楽曲の開発を意図した現代的な傾向のもの』という条件で公募された作品です。この曲も、いわゆる『現代音楽』に属する作品ですので、演奏に際しても当然、他の4曲とはちがったアプローチが必要になります。

 具体的にはまず、この曲はほとんどの場面で、他の曲のようにいわゆる『メロディ』と『伴奏』とにわけられません。作曲の江原さんも解説に書いておられるとおり、すべての楽器が主役です。ところが、トロンボーンのパート譜だけを見ていても、いったいどんな音楽なのか、合奏でどんな形ができあがっていくのかは見えてきません。ですので必ずスコアを見て、自分たちの音が全体の中でどんなふうに組み合わさって音楽を作り上げていくのかを理解しておく必要があります。

 作曲の江原さんにお聞きしたら、ある意味ではこの作品は『知的な』音楽だと言われました。ジグソーパズルの一片だけを見ていても、全体の絵はわかりませんよね。全部組み上げて初めて、その絵の姿が浮かび上がります。その最終的な絵の姿、その中で自分たちの音1つ1つがどんな位置にあるのかを、ジグソーパズルの一片一片があらかじめイメージしていなければならない。ジグソーパズルのそれぞれのピースが知性を持たなければならない。そういうことだと思います。

 そして、『躍動する魂』というタイトルが示すとおり、とてもエネルギーを秘めた曲です。スコアの解説にもあるとおり、音楽の持つエネルギーを感じて演奏することが重要です。ではこの『音楽のエネルギー』は、どこから生まれてくるのでしょうか?

 1つ1つの楽器の音がパズルのように組み合わさって音楽を形作る。そのためには、ひとりひとりの中にあるテンポ、タイム、リズムがゆるぎなく安定している必要がある。それが全体でひとつになっていく緊張感。これが、この音楽の持つエネルギーなのではないでしょうか。この曲のトロンボーンはどんなふうに演奏するのがいいのか江原さんにお聞きしたら、『一番重要なのはリズム感と正確な休符です。縦の響きがずれると音楽が一気に崩れ落ちてしまいます。』と言われました。このことはどの楽器にも言えることですね。

 この曲は拍の単位が8分音符で書かれています。もちろん楽譜のリズムを正確に理解することがまず大切ですが、その拍の中で、3連符、4連符、6連符が正確に取れなければなりません。正確に3等分、4等分、6等分で。これがアバウトにならないようにしなければなりません。そういう意味でも、メトロノームを使った練習がとても重要になると思います。

 そして、各音の発音、アーティキュレーションについても、トロンボーンだから、とか、音域が低いから、とかの癖が出ない方がいいと思います。正確で、クリアな発音。音域が低いからといって発音が鈍くなってしまっては、パズルがうまく組み上がりませんし、この曲の緊張感、エネルギーが希薄になってしまいます。特に3rdトロンボーンは音域が低いですので、低音域での破綻のないクリアな発音をマスターする必要があります。

 [1]、[2]、さらに後半の[9]からの部分も、トロンボーンに書いてある32分音符の間にある休符には他のパートの32分音符が並んでいて、全体で1つのラインになっています。ですのでやはり、この休符、それからリズムを、とても正確に取る必要があります。他パートを聞くことも大切だと思いますが、リズムがきちんとかみ合ってバンドとして1つの流れになるために最も大切なことはやはり、一人一人が正確なテンポとリズムで自信を持って演奏できることです。他パートの音を聞いて、それに付いていったのでは遅れてしまいます。

 安定したテンポ、その中で、正確な連符。メトロノームは16分音符単位(テンポ160)で鳴らして練習しましょう。そして、それぞれの音の入りをブレスなどでタイミングを取るのではなく、休符の間もずっとテンポの流れの中にいる感覚。その流れに乗って演奏する。さらに、短い休符では息の支えを抜かないで。もちろん、テンポに合わせて身体が動いたりしてはいけません。かえって遅れたり、重くなったりしてしまいます。また、16分音符単位でメトロノームを鳴らすと、[10]の1小節前の1stと2ndは2拍3連になります。難しいですが、正確に。スコアを見てわかるとおり、ティンパニーなど他パートと合うのですが、だからといってあてにするのではなく、それぞれがちゃんと正確に3連符を感じて。

 さらに、[1]、[2]、[9]、[10]は、トロンボーンだけではなくバンド全体がほとんどの部分でユニゾンやオクターブです。その一体感が大切です。フォルティシモのアクセントですが、ユニゾンですので自分だけでがんばろうとせず、トロンボーンセクション、また、ホルンやテューバ、コントラバスなども含めた全体が一体となってフォルティシモのアクセントになるように。エネルギーは大切ですが、聴衆にそれが伝わるために、また、ユニゾンが一体になるためにも、演奏する方は力が入ってしまってはダメです。

 [3]からは、それまでの緊張感がゆるみ、少しやわらかい感じの場面になっていきます。でもテンポ、リズムは身体の中にちゃんと持っているように。[3]1小節目の急激なディミヌエンドは、バランスに気をつけて、さらにピッチやハーモニーがぶれないように。そして、クラリネットのソロを消さないように。

 [3]3小節目1st、こういうリズムがアバウトにならないように。32分音符の6連符に当てはめると、3つめと6つめの位置になりますよね。16分音符単位できざむと3連符2つのそれぞれ3つ目の音の位置になります。1stトランペットと合わせて正確に。

 [7]3小節目4小節目、フォルテピアノクレッシェンドでピッチやバランスがぶれると緊張感がそがれてしまいます。気をつけて。そして、タイで行った先の32分音符はスコアを見てわかるとおり、動きの始まりです。あたかもその続く32分音符まで吹くような意識で。[11]からの部分も同様です。

 [10]1小節目4拍目、また、[12]2小節目以降の3rdなど、6連符は発音がにぶくならないようにクリアに。シングルタンギングで追いつかなければトリプルタンギングを練習しましょう。「TTKTTK」または「TKTTKT」。

 [13]2小節目の2ndと3rd、最後のB音は5ポジションがおすすめ。[13]3小節目からがこの曲のクライマックスです。16分音符の音型をそろえて、エネルギーを持って。


I   16世紀のシャンソンによる変奏曲/諏訪雅彦

II  コミカル★パレード/島田尚美

III  ネストリアン・モニュメント/平田智暁

IV  マーチ「青空と太陽」/藤代敏裕


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