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セリオーソ

トロンボーンパート解説

 今年の委嘱作品。浦田健次郎氏の曲。『セリオーソ(Serioso)』とは、作曲者の解説にもあるとおり、『厳粛に』という意味です。こういうタイプの曲でいちばん気をつけなければならないのは、自分たちは今、どのパートと同じグループなのか、同じ動き、ちがう動きを必ずちゃんと把握して、同じ動きの中で強弱の表現やニュアンス、音のブレンドなどをきちんと合わせるということ。特にバランスや強弱の表現は、厳密に合わせます。

 [A]ですが、ここはトランペットと同じグループ。まず1stと2nd、上のD、さらに1stはFも、4ポジションの使用も検討してみてください。Dの4ポシションは少し遠く、Fの4ポジションは逆に少し近めです。さらに、[A]6小節目、1stに出てくる上のFisは3ポジションですが、通常の3ポジションより近くなので気をつけて。音程をちゃんとつかんでください。なにしろここはトランペットとトロンボーンの6人が6人とも違う音を吹いていますから、一人一人が正確に音程をとれるようにしましょう。

 そして、レガートはとってもなめらかに(そのためにも、替えポジションを検討してください)。音の変わり目で息の流れが止まらないように気をつけましょう。音が変わる瞬間にも息は流れ続ける。1つのフレーズは1本の息で吹くのがポイント。クレシェンドで1つ1つの音があとぶくれになってはダメですが、そうなる原因のひとつは、『1つのフレーズは1本の息』ができていないことだったりします。ただし、グリッサンドは入らないように、右手をリラックスさせてスライドはすばやく動かすこと。

 さて、そのあと吹奏楽曲にはめずらしい20小節以上の長い休み。こんなとき、何を考えますか? きっとミュートを付けたまま待つことになるので(外しておいてもいいけれど…)、転がさないよう気をつけましょうね。もちろん、ちゃんと休みを数えるのは当然です。『100%間違いない』という確信を持って数える。99%ではダメです。これ、ポイント。でも、たくさん練習しているうちにきっと休みなど数えなくても出られるようになってしまいますよね(それでもちゃんと数えましょうね)。と、手持ち無沙汰です。ここで、『あそこが難しいな…』とか、『あの高い音ちゃんとあたるかな…』とか、『自由曲は…』などと先のことを考えるのは、集中力が乱れるだけです。では、どうするのか…。『音楽の中にいる』こと。

 [D]もまだミュートをつけたままですね。ここでは今度はホルンと同じ動きです。ホルンは『ゲシュトップ(gestopft)』という、右手でベルの出口を塞いでしまう奏法。これは金属的な音なので、トロンボーンのミュートも、同じストレートでももちろんファイバーや木製ではなく金属製ストレートがお薦め。

 クレシェンドは、行き先をはっきり。そして機械のような正確さで。吹き終わりがわずかでも抜けるような柔らかい感じにならないこと。さらに、クレシェンドしても決してピッチが変わらないよう気をつけましょう。[E]3小節前の4拍目4分音符は、まっすぐフォルテでつめたく音価いっぱい。ただし、力が入ってつまった音にならないよう気をつけましょう。1stは、このDも4ポジションを検討してください。

 [E]2小節目(49)からはオープンになって、トロンボーン単独でオクターブの動き。まず、強弱の変化を独立してきちんと出せるように気をつけます。クレシェンドはパートでそろえて機械的正確さで。3rdは弱くなりすぎないように、オクターブのバランスに気をつけます。3rd、[E]3小節目のCは、F管を使わず6ポジションがベターですね。

 [F](56)からはホルン以外の金管セクションで同じ動きですね。まず、強弱や発音、アーティキュレーションがよくそろうように。同じ動きといっても、音はみんな違う音を吹いているので、それぞれがちゃんと自分で正確に音程をとることが大切。それから、レガートの動きのクレシェンドは、1個1個の音が『あとぶくれ』にならないように気をつけましょう。そんなふうになるとかっこ悪いですね。息や息の支えは、1つ1つの音にではなく、スラーのついているフレーズ全体に対して。息の重心(身体の重心)が高くなったり、上半身で吹くような呼吸になったりすると特に『あとぶくれ』になりやすいので、やっぱり、いい呼吸が大切。1st、上のD音は、4ポジションの使用を検討してみてください。

 [G](60)、トランペット、ユーフォと一緒に、ハーモニーで16分音符をきざんでいます。ここも7人(7声部)それぞれちがう音なので、それぞれが音程を正確に。そして機械のように冷たく正確なテンポ、正確な発音で。タイの箇所でリズムがもたれたりしてはダメです。もしどうしてもそうなってしまうときは、練習としてタイを取って、全部の16分音符をタンギングで合わせてみましょう。それとおんなじニュアンスで、タイを付ける。

 テンポはゆっくりですので、書いてあるように16分音符をちゃんとテヌートで保って。でも、発音はぼやけないようにしたいですね。4小節間、クレシェンドはありませんが、1小節ごとに音程が上がっていくので音楽のテンションも上がっていきます。ですので、息切れして途中で弱くならないように気をつけます。そしてこの4小節、一体どこでブレスしたらいいのでしょう。やっぱりタイのところでブレスするしかないのですが、ブレス直前の音を、ある程度(16分音符1個分くらい)保って、それからブレス。テンポはゆっくりですからあわてなくて大丈夫。ブレスする瞬間に、身体が脱力できているかがポイント。息を吸うのに必要なのは、『力』ではなく『脱力』です。

 [G]5小節目(64)、3連符は正確に1拍を3等分。もたれないように。[H]2小節目から、ffは少し豪華に。硬い音にならないよう、響きのある音が大切。そのためには、上体に力が入らないように。自然な息の流れが大切。

 [I]2小節目(75)から、トロンボーンだけでのオクターブの動き。神秘的に。テヌートが書いてあるので当然各音は十分に保って。各音があとぶくれにならないこと、クレシェンドやディミヌエンドをパートの中でよく合わせることなど、これまでの部分と同様に気をつけてください。もちろんユニゾン(オクターブ)の音程もよく合わせて。トロンボーンは、右手に力が入ると音程は合いません。

 [E]の部分もそうですが、[I]でも、トロンボーン単独の単純なオクターブの動きなので、テクニックというよりも、基本的な音色、響きが問われますよね。逆に聞かせどころでもあります。薄っぺらな細い音ではなく、響きの多いしっかりしたトロンボーンらしい音で。

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