架空の伝説のための前奏曲
トロンボーンパート解説
"特に具体的な物語のイメージが有るわけではない"と作曲者は書かれていますが、タイトルの"架空の伝説…"からもわかるように、軽々しいイメージの曲ではないと思います。楽譜中にアクセントやスタッカートの音も多く出てきますが、決して軽々しい響き、軽薄なサウンドにならないように。しっかり曲の構造やイメージを把握して演奏に生かすことが大切だと思います。さらに、オーケストレーションが大変緻密に書かれています。強弱そのほか、楽譜に書かれていることをしっかり見て、パートとしてきちんとそれが演奏に表せるように。自分のパート譜だけではなくスコアも見てください。
序奏6小節目からですが、フルート群、クラ群、サックス群、そして金管と、それぞれ違う強弱のうねりで絡み合っていきます。トロンボーンは、ユーフォ、8小節目からはホルンと、書いてある表現をよく合わせてください。ユーフォと3rdの5度、そして3rdと1stの5度、よく合わせて、そこから2ndが音をとってみてください。クレシェンドやディミヌエンドでバランスやハーモニーが乱れることは許されません。よく合わせてください。姿勢や呼吸など基本が利いてきます。上体呼吸になってしまうとうまくいきません。アクセントは鋭すぎず、鐘のように。この部分は打楽器とも合わせてみてください。
[A]の4小節前から、3rdはユーフォ、バリトンとのユニゾン、よく合わせること。特に最初の音はほかの楽器もみんなAs。そして3拍目~、Desのユニゾンから始まって、だんだん音が分かれていきます。2ndと3rdは、1stのクレシェンドを決して追い越さないこと。よく聞きましょう。もちろんユニゾンをよく合わせること。ひとりひとりが音を"張り"すぎると、ユニゾンは合いません。"みんなでひとつの音"という意識が大切。そして、この2小節間はテヌートの8分音符(と4分音符)のモチーフが各楽器にリレーされていきます。各楽器がおなじ"しゃべり方"になるように発音も注意深く。
[A]以降の伴奏形ですが、"メロディとハーモニーのバランスに気をつけ…"とあるように、伴奏形の部分ではメロディをよく聞いて、バランスをとってください。[A]の3小節目からはトランペットのメロディはフォルテ、伴奏はメゾフォルテです。一段下がってメロディを立ててください。休符のあとの裏拍が遅れないように。休符で"タイミングをとる"感じになってしまうと、うまくいきません。8分音符単位のビートを感じて淡々と吹く。練習で使うメトロノームも8分音符単位で鳴らしてみてください。特にここでは、決して身体を動かして拍を取ったりしないこと。
[A]5小節目は合いの手的な部分ですね。しゃべり方をよくそろえてください。テヌートの付点4分音符をどうするか。響きは保って、でも2拍目裏の16分音符との間をちょっとだけセパレートにするのもアリだと思います。[B]2小節前は、サックスやホルンなどの流れに乗ってください。
[B]1小節前、2分音符のクレシェンドですが、ホルンなどはその小節最後の16分音符にクレシェンドの目標としてのフォルテが書いてあります。ですので、トロンボーンのクレシェンドは、他パートに合わせることはもちろんですが、音符の終わりにディミヌエンドのニュアンスが入ることも、[B]の小節に音が残ることも許されません。注意深く。このクレシェンドで、[B]のクラリネットの旋律にうまくつなげてください。
[A],[B]の部分は、多くの部分ではごく普通の3和音が中心です。ゆっくりのばしてハーモニーを合わせてみましょう。
[C]ですが、8分音符単位のビートに乗ることは[A]と同じです。ホルンの旋律はフォルテ、伴奏はメゾフォルテ。でも、3小節目からは、伴奏もトランペットのメロディと同じフォルテになり、アクセントかつきます。つまりここで、伴奏形も旋律と対等な場所に出て行く感じ。そしてこの部分は[A]とちがって、sus4の響きが中心。つまり、完全5度と完全4度でできたハーモニーですね。5小節目など長い音は特によく響きをたしかめてみましょう。
[E]はトロンボーンだけの動きです。そのあと同様の音型がホルン、トランペットとリレーされていきます。特にここは"なんとなく"吹いてしまわないよう、パートで意思を持ったパッセージにしてください。2小節目のsfもトロンボーンだけです。はっきり。そして、このsfを引き出すためのクレシェンドがありますね。なので、sfの音だけ突然… にならないように。もちろんそのあとのホルンやトランペットともニュアンスをそろえること。
[G]5小節前から、ユニゾンをよく合わせることはもちろん、力強く、ただしきついサウンドではなく深い音で。息のスピードではなく、息の太さで鳴らす感じ。地声では響きません。そのあとのベルトーンのバランスや発音もみんなでよく合わせてください。
[G]は、ほっとする中間部です。澄んだハーモニーにしてください。各音はベタではなく、少しだけセパレートにするとリズムが生きると思います。ハーモニーに関して、1小節目と7小節目それぞれ後半のGm、第3音のBがスライドで上げきれなければ近めの5ポジションを使ってもいいと思います。響きをよく聞いてください。それから6小節目、1stのFと2ndのCは特に気をつけてください。広がらないように。そして大切なのが、8小節目([H]1小節前)のCsus4からCに解決するところ。ここは特に注意深くハーモニーを合わせ、美しいディミヌエンドにしてください。ここがハモらないと、ここまでの8小節が台無しになってしまいます。
[I]の1小節前、ユーフォ、トランペットとのユニゾン(オクターブ)ですが、ユニゾンを合わせることはもちろん、ここもやはりきついサウンドではなく、深みのあるアクセントで。もちろんこれはここだけではないですが、地声にならないように。[I]以降も、ハーモニーをよく合わせてください。[J]のミュートは、その前の休みが2小節しかありません。左手でつける技も試してみてください。