マーチ「春風」
トロンボーンパート解説
この曲はオーソドックスなマーチですね。旋律、あとうち、後半に出てくるオブリガートとも、クリアで歯切れよく。マルカートの吹き方が中心になります。タイトルのとおり、爽やかな春風のような明るいマーチになるといいと思います。
冒頭は他の金管群と一緒です。クレッシェンドは3小節目からですが、"気持ちは"最初から、4小節目のフォルティシモに向かっていくつもりで。ほかのパートと吹き方をそろえますが、各音はベタ吹きにならないよう、クリアに発音したら(タンギングは軽く)そのあとすぐに抜くこと。ただし、息を後ろに引いたような、あるいは押さえ込んだ感じの抜き方ではなく、のびやかなサウンドで。上体のリラックス、自然な息の流れが大切。1stは3rdトランペットと、2ndは1stトランペットと、3rdはユーフォ、テューバと(2小節目以降)合わせて、ユニゾンやオクターヴの音程を確認してみましょう。もちろん、そのほかのパートとも合わせてみてくださいね。4小節目の8分音符もほかのパートと吹き方を合わせますが、各音を"止めて"短く吹くのではなく、短い音にも一瞬の余韻があること。止めずに短く。支えの瞬発力で吹く感じ。
[A],[B],[D]はあとうちですね。それぞれ強弱は違いますが、書いてある強弱より少なくとも1段小さいくらいのつもりでちょうどいいと思います。らくに、軽く。休符があるからといって、音符1個吹くごとに毎回ブレスをしてはダメ。2~4小節程度の長さでブレスの場所を決めておきましょう。それと関連して、あとうちでも『音符1個1個』ではなく、横の流れ、『フレーズ』を感じること。それから、音は上体で止めないで。上体はラクにして、支えの瞬発力と敏感なくちびるでクリアに吹く感じ。そして、『前向きに』吹くこと。拍の真裏よりもわずかに前で発音する感じ。テンポは正しく、音符はわずかに早めにつかむ。そのほうが歯切れよく聞こえます。各7小節目2,4拍目の4分音符は、他パートと合わせますが、押し付けたり止めたりした吹き方ではなく、『伸びのあるマルカート』で。やはり、上体のリラックスと自然な息の流れがポイント。これらのあとうちの部分は、伴奏グループ全体(低音群とパーカッション)で合わせてみましょう。
[C]のアウフタクトから、低音楽器群(ファゴット、アルトクラ、バスクラ、テナーサックス、バリトンサックス、ユーフォ、テューバ、コントラバス)とともにユニゾンで旋律です。低音グループで吹き方をそろえますが、マルカートで歯切れよく。硬い音になってしまうとブレンドしませんから、歌ったマルカート。伸びのあるサウンドで。もちろん、止めた音にならないように。上体のリラックスが大切。この部分は、吹きながらテューバ(ユーフォ)を聞けるように気をつけてみてください。それから、特に5小節目のF、6小節目のEs、音程に注意して(高くならないように)、合わせてみてください。7小節目の2分音符のDは別として、それ以外のDの音には4ポジションの使用も検討して下さい。
[E]の2小節前ですが、ここからトリオなので、それまでのBdur(変ロ長調)から下属調のEsdur(変ホ長調)に転調しますね。そのEsdurの主和音が、トロンボーンで示されます。きちんとハーモニーさせましょう。1stのEsと2ndのBは広くなりがちです。まず、そこを正確に合わせてみましょう。1stは高くならないように気をつけてください。3rd第3音のG、小さすぎないようにバランスよく。そして、そのバランスとハーモニーが、ディミヌエンドしても決して乱れないように気をつけます。ただし押さえ込まないで、解放されていくイメージ。『リラックスしたディミヌェンド』で。体が硬くならないように。さらに、マルカートですが2小節間が1つのフレーズになるようイメージしてください。2拍ずつ別々になってしまってはダメ。ただしベタ吹きではなく、やはり冒頭と同じく抜く感じで。
[F]のアウフタクトからのファンファーレキャラクターですが、トランペットと一緒なので、よく合わせること。この曲、3連符が出てくるのはこの箇所が初めてですね。しかも、全編とおして3連符のキャラクターが出てくるのは、この[F]の部分だけです。クリアに、そして正確に3等分した3連符で吹きましょう。全音符と付点2分音符ですが、ベタ吹きしてしまうと、間に入っているベルトーンや木管のパッセージが聞こえなくなってしまいます。長い音は、抜いてラクにのばして下さい。
[G]の2回目、トロンボーンだけでユニゾンの対旋律が出てきます。とてもトロンボーンらしいパッセージで、曲の終盤を盛り上げます。マルカートで、高らかに、でも硬くならないように演奏したいですね。ところどころに書いてあるアクセントですが、そこだけ大きくするのではなく、少しはじけるような瞬発力のある発音でクリアに吹く感じにするといいと思います。タンギングは軽く。それから、長い音はハーモニーになっている箇所もありますね。あたりまえですが、それをちゃんと把握しておくこと。3,4,7小節目のハーモニーは、少しソフトに吹くくらいでいいと思います。
音程で特に陥りやすい箇所は、2小節目16分音符のAs、6小節目16分音符のEs、それぞれ高くならないよう気をつけてください。4小節目、下のCからの動きで上体が硬くならないように。吹いている音を同時に歌うつもりで。それから、特に付点のリズム、16分音符が鈍くならないように気をつけてください。歯切れよく。Tu-TuTu-のタンギングだと、16分音符が鈍くなりがちだと思います。Tu-TuDu-にするとうまくいくと思います。タンギングは息の流れに乗って。上のD音は、どれも4ポジションの使用を検討してみてください。特に1,8,11小節目。それから9小節目のBは、5ポジションを検討してみてください。ただし、ユニゾンなので各替えポジションは音程に特に気をつけてくださいね。それから、インラインダブルのバストロで2つ目のロータリーがG管なら、9小節目16分音符のGは、中指を押さえて1ポジションで吹く技が使えます。
それでは、爽やかなマーチにしてくださいね。