吹奏楽のための「風の舞」
トロンボーンパート解説
この曲は、おそらく今年の4曲の中でいちばんたくさん演奏されるんではないかと思います。が、トロンボーンにとっては、もしかしたらいちばん難しいのではないでしょうか? 全体的な注意点は、速い部分は主に"マルカート"の吹き方が中心、その反面、特に中間の部分では"音を保つ"感じ。レガートの美しさも要求されます。
9小節目からのハーモニーは、クリアに吹くことは必要ですがアクセントではないので、ハーモニーを"保つ"ように。1st、2ndがユニゾンで3rdと1小節ごとに4度→5度→長3度と変化します。特に4度、5度はきちんと合うように。ユニゾンは、2人の音を溶け合わせる感じ。"がんばり"すぎてはいけないのです。
[A]の5小節前、何度か出てくるそのアクセントの8分音符の動きは、タンギングでアクセントをつけるのではなく、"息"をちゃんと使ってマルカートアクセントにしてください。その後、[A]の前まで続く伴奏形は、8分休符を休みすぎないこと。休符で支えを抜いてしまわない。なにより、休符で気持ちが抜けてしまわないこと。フレーズが切れているわけではないのです。3rdはテューバと吹き方を合わせて。
[A]の部分のハーモニーも音をちゃんと保って。2小節目、1stのみ4拍目休符です。決して音が残らないように。なぜなのかはホルンと合わせてみるとわかりますよ。3小節目、4拍目の裏が遅れないように。8分休符を機敏に感じて。"ンタ"ではなく"スタ"って感じ。わかります?
[B]1小節前の全音符、オクターヴとユニゾンです。この伸ばしはトロンボーンのみなので、響きのクオリティが要求されます。fzアクセントよりも伸ばしの響きを重視して。
[C]から1st2ndのテヌートとスタッカートの8分音符ですが、テヌートをより生かすために、"TuTu"よりむしろ"TuDu"という感じでタンギングするといいかもしれません。試してみてください。そしてサックスに合わせて。3rdはやはりテューバと合わせて。休符を休みすぎて伸びないこと。機敏に感じる。
[D]のハーモニーはトロンボーンのみなので、クオリティが大切。息を押さえ込んだ抑圧された音ではなく、美しいピアノで。言うまでもなくコードはGマイナーですが、第3音になる2nd、低すぎる場合は5ポジションを使うのもアリです。
[D]の5小節目からの1stと2nd、ユーフォのパッセージは、張ったり押したりしないでマルカート。上のDは2回とも4ポジションがいいと思います。ただしGと同じ4ポジションだと高くなりますよ。同じ箇所、3rdはテューバと合わせてみてください。
[E]からは8分音符2つともアクセントですから"TuTu"で。2小節目3,4拍目のような形は"Tu-TTuTu"というタンギングだとリズムが鈍くなってしまうので、"Tu-TDuTu"という感じのタンギングにするといいと思います。そして[F]の前、ミュートの1stですが、1つ1つの音をはっきりしゃべる感じで。先行するホルンは山型アクセント、トロンボーンは普通のアクセント。風がおさまっていく感じ。
[G]のところはまるで"与作"みたいな感じですね。知ってます? グリッサンドはアクセントやクレッシェンドみたいにならないように、"一定の音"という感じになるといいと思います。あまり鋭く速くなく、かといってゆっくり過ぎず。"与作"ですから(^^)。どのくらい下からグリッサンドするのかも揃えましょう。1音(2ポジション分)下からくらいがいいと思います。
[G]6小節目などのレガート、切れないように。息を流したままで"Tu--RuTu--Ru"という感じ。[H]2小節前1st、レガートの中にある装飾音の処理ですが、装飾音が4拍目の頭でいいと思います。息をロングトーンのようにちゃんと流したまま(でこぼこしないように)、装飾音のDはレガートタンギングで4ポジション。4分音符のCに行くところはタンギングなしでリップスラー。なのでその小節は"Tu---Ruu"という感じ。
[H]5小節目、1stと3rdの完全5度、合いにくいと思います。よく合わせてみてください。7小節目と8小節目、16分音符がクリアに聞こえるように、1つ1つはっきりしゃべる感じ。8分休符、機敏に感じて。無意識に体を動かしたりしてタイミングを取ると、必ず遅れてしまいます。この箇所に限らず、拍に合わせて体を動かすことはいけないことです。
[I]フォルテシモですが、がんばりすぎないこと。[J]1小節目、ここもGマイナーですが、トランペットがオクターヴ上にいます。それを聞くこと。この箇所はミュートのつけはずしが忙しく面倒ですね。自分に合った方法を工夫して、おちついて。
[K]3小節目から。さて難所です。まず、上のDは2ヶ所とも4ポジションがいいと思います。このテンポでスライドをちゃんと動かすには、まず右手をリラックスすること。腕の動きだけで強引に持っていこうとすると、楽器がゆれてしまいます。手首をある程度有効に使って、"運ぶ"というより"引っかける"感じ。スナップをきかせる。しかもここはレガートがかかっています。レガートタンギングで。そして息がでこぼこしないように。 裏技を1つ。F管付きの人、Hの音はF管を押して2posと3posの中間くらい。そこにもあります。使えればスライドの動きは少し楽になるし、バルブで切り替える部分はタンギングも省略できる(2分音符はタンギング必要)。ただしこの技は、外れやすく響きにくく左手親指の動きも要練習です。
[L]1stと2ndのシンコペーション、8分音符は4分音符より大きくならないこと。3rdは低音楽器と合わせて。[M]からは、ワンフォルテです。長い音は迫力より響きの厚さが大切。
では、トロンボーンにとっては技術的になかなか難しい曲ですが、力を抜いてがんばってください。