【1】楽器の取り扱い


 講習会などで受講者から意外とよく聞かれる言葉に「楽器の扱い方がわかってよかった」というのがあります。ホントに基本的なことなのですが、これがあまりちゃんと理解されていないことが多いのです。スライドなどのメインテナンス、クリームやオイルの塗り方…。この章では、それらの基本的なことを書いていってみたいと思います。

  1. スライドのお手入れ
  2. スライドの動きが悪いのは…
  3. スライドの取り扱い注意事項
  4. ロータリーのお手入れ
  5. チューニングスライド、楽器のそうじ
  6. マウスピース
  7. 歯について 

1. スライドのお手入れ

 トロンボーンのスライドは、もちろん常にスムーズに動くようにしておくことが大切です。スライドの動きが悪い楽器で上達は望めない、といっても過言ではないでしょう。でもこれができていない人が意外に多いんです。垂直にしてもスライドが下がらないようなものはもはや論外ですよ。楽器を水平から少し傾けただけで自然にスライドが下がっていくくらいでなければならないのです。

スライドクリーム

スライドオイル

 写真は、各種スライドクリームとスライドオイルです。スライドクリーム(スライドオイル)は、少なくとも2〜3日に1回は塗り替えましょう。塗る前に、必ずガーゼでインナースライド(内管)表面を拭き取ること。上塗りしてはいけません。上塗りを続けていると古いクリームや汚れがスライドの中で固まってしまいます。アウタースライド(外管)の内側もガーゼと掃除棒で掃除した方がいいです。そして、多すぎず少なすぎず(白いクリームなら、塗りのばして透明になるくらい)クリームを塗ったら、必ずウォータースプレー(霧吹き)をしましょう。

 スライドクリームやスライドオイルは各種出ています。どれを使うかは楽器の状態や好みによります。傾向として、スライドクリームよりスライドオイルのほうが軽めで、塗るのが簡単ですが、持ちはスライドクリームのほうが良いようです。クリアランスの狭い精密なスライドにはスライドオイルのほうが、ガサガサ音が気になるならスライドクリームのほうがいいかもしれません。スライドクリームの塗り方も、ストッキング部分(インナースライド先のわずかに太くなった部分)にのみ塗るのか、それを全体にのばすのか、また、つける量も、楽器の状態や好みによります。それぞれ自分に合ったやり方を見つけてください。

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2. スライドの動きが悪いのは…

 さて、スライドの動きが悪い原因にはどんなものがあるのでしょうか?

 まず、クリーム(オイル)が少なすぎる場合。そして、逆に多すぎる場合。少なすぎるとなめらかさがなく、多すぎるとスライドがねばる感じになります。多すぎたときは拭き取って、しばらくウォータースプレーだけ吹きかけて使ってみましょう。

 次に、汚れ、錆び。汚れは洗ったり掃除することである程度きれいにはなりますが、ひつこいものや錆びは楽器屋さんに任せたほうがいいでしょう。

 それから凹み。小さいものでも引っかかりの原因になります。スライドの凹みを見つける方法は、薄いガーゼかクロスを使ってアウタースライドを指先で軽くつまみ、端から端までゆっくり移動してみましょう。凹みがあると指先の感覚でわかります。小さな凹みでも、その部分でスライドが引っかかる原因になります。

 そして歪み。これは見ただけではまずわかりません。見てわかるくらい歪んでいたらかなりひどい状態です。凹み、歪みとも、やはり楽器屋さんでなければ直せません。取り扱いには充分注意しましょう。

 そして、何ヶ月も楽器を使わないときは、インナースライドとアウタースライド内側をきれいに拭き取って、なにもついていない乾いた状態で保存するようにしましょう。クリームやオイルが残ったまま長い間しまっておくと、中で固まってしまいます。また、湿気が残っていると錆や腐食の原因にもなります。

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3. スライドの取り扱い注意事項

 さて、スライドの取り扱いについて、いくつか注意事項です。

 まず、楽器をケースから取り出すときやしまうときなど特に、スライドの直線部分は持たないように、両端を持つようにしましょう。また、ぶつけたり落としたりしないようにくれぐれも気をつけましょう。スライディングの項でも書きますが、落としそうで心配な人は“ヒモ”を使うといいでしょう。スライドはトロンボーンの命です。

 スライドを拭くのに使うガーゼは、チューニング管などのグリスを拭き取るものとは別にしてください。スライドにはグリスやほかのオイルなどがつかないように気をつけましょう。

 それから、屋外で吹くこともあるかもしれません。屋外は、砂やほこりなどが多いものです。風のある日は特に、それがスライドに付着します。屋外で吹いた後はスライドを水洗いして砂やほこりなどを洗い流してください。スライドの中に砂が残ったままで使っているとスライドを傷つけてしまいます

 そして、あとで“姿勢”や“スライディング”のところでも書きますが、スライドを動かすとき、楽器の重さは左手だけで支え、右手では支えないように気をつけましょう。右手、つまりスライドに楽器の重さがかかった状態でスライドを動かしていると、スライドの磨耗を早める原因にもなります。インナースライドにはメッキが施されているものが多く、これが磨耗してすり減ると、再メッキはできないといわれます。また、アウタースライドはさらにやわらかく(真鍮のものが多いです)、その内面はインナースライドよりも早く磨耗します。

 さらに、学校の備品などだと同じモデルが何本かあったりすると思います。当然のことですが、スライド(インナースライドとアウタースライドの組み合わせ)は、決して入れ替えないようにしましょう。同じモデルでも1本1本調整されて組まれています。

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4. ロータリーのお手入れ

スピンドルオイル表側

スピンドルオイル裏側

 テナーバス、バストロンボーンなどにはロータリーがついています。それらには適宜オイルをさしてやる必要があります。通常のロータリーの場合、まず軸部分には『ロータースピンドルオイル』を、ふたをはずして中の軸部分に、そしてその裏側の軸部分にもさします。それから、中のローターには『ローターオイル』を、これはスライドとのジョイント部分から1〜2滴さすといいと思います。ローターオイルがスライドの先にまで流れていってしまわないように、さし過ぎには注意しましょう。

 ロータリーで大切なのは『』です。軸部分にオイルがあるか、気をつけてください。ふたを開けてみたら軸部分がカラカラに乾いていた… なんていうことがないように、ロータースピンドルオイルは週に1回はさしましょう。また、昨今見られるセイヤーバルブは軽めのオイルがいいといわれます。ローターオイルの粘度(粘り気)が選べる銘柄なら、軽い方を使うといいと思います。

 そして、何ヶ月も楽器を使わないような場合、ロータリーはスライドと違って『オイルをさした状態で』しまうほうがいいでしょう。

 スライドクリームもそうですが、オイルがちゃんとさしてあるかどうかで楽器の鳴りも変わります。また,オイルの銘柄、このあとに書くグリスの硬さなどでも鳴りは変わります。メンテナンスは欠かさないようにしましょう。

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5. チューニングスライド、楽器のそうじ

 チューニングスライド(チューニング管)もちゃんと動くようにしておかなければなりません。何ヶ月に一回か『スライドグリス』を塗ります。そのときもやはりまず、ティッシュ、ガーゼや掃除棒などを使って古いグリスや汚れを拭き取ってから塗ってください。

 それから、チューニングスライドはケースにしまうときは全部入れて、吹くときは、たとえ一人で吹くとき(音合わせの必要がないとき)でも、必ず少し(1cmくらい)抜いて吹くようにしてください。

 チューニングスライドは、通常だいたい1cmくらい抜くとA=442Hzあたりに合うメーカーが多いと思います。気温などにも影響されますが、あまり極端な場合(4〜5cm抜かないと合わないとか…)は、吹き方やマウスピースの選択などを疑ってみる必要があると思います。

 さて、楽器のそうじですが、管の内側でいちばん汚れるのはマウスパイプ(マウスピースをはめる部分の内側にある管)です。管楽器の内側は入り口に近いほど汚れやすいのです。時々スライドを抜いてマウスピースの方から中をのぞいてみてください。汚れていませんか? 月に1回くらいスライドの片側に水道のホースをつないで水を流してやります。ぶつけたり落としたりしないよう、くれぐれも気をつけて…。また、今はスライドにとおすスワブなども出ています。これを毎回とおしておけば、管内も汚れずにすみますね。

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6. マウスピース

 マウスピースは、ケースにしまう前に必ず水洗いしましょう。楽器の内面は入り口に近いほど汚れやすい… ということは、マウスピースの内側がいちばん汚れるということです。そして、スロート、バックボアは、10日に1度程度は『マウスピースブラシ』を使って水洗いしましょう。マウスピースは直接口に当たるところです。いつも清潔にしておきましょう。ただし、タワシでこすったりはしないように。

 それから、くれぐれも落としたりしないように気をつけてください。リムに傷がついてしまいます。また、シャンク(先の部分)が変形してしまいます。マウスピースが楽器にぴったりフィットせず少しでもガタついたりすると、鳴りにも影響があります。もっとも、もともとシャンクの相性が悪く、楽器にぴったりフィットしないマウスピースもあります。このあたりもマウスピース選びの基準になります。

 それから、メッキがはがれたマウスピースはくちびるが荒れる原因になることもありますので使わないようにしましょう。マウスピースにもよりますが、メッキがはがれたら、かけなおしてもらうよりも新しいものに買い換えた方がいいかと思います。メッキをかけなおすにはどうしても表面を磨かなければならず、微妙に口当たりなどが変わってしまいます。

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7. 歯について

 楽器と同様、日頃から『歯』の手入れにも気をつけましょう。歯と歯茎はアンブシュアの土台です。マウスピースのサイズがコンマ1ミリ違っても吹き手にはわかります。歯も同様に微妙だということです。たとえ悪いところがなくても、最低一年に一度、できれば半年に一度は歯医者さんに行き、虫歯がないか、歯茎は健康かチェックしてもらいましょう。その時、歯の『大掃除』もしてもらいます。

 毎日の歯磨きですが、食後すぐの歯磨きはかえってよくないという最新の研究もあります。食事や飲みものの酸にさらされてエナメル質がやわらかくなった歯をすぐに磨くと、それを削り落としてしまう可能性があるのだそうです。食後の歯磨きは30分以上待つのが良いそうです。

 また、1日3回なんとなく磨くよりも、1日1回ていねいに磨いて、口の中の汚れ(歯垢)を徹底的に取り除くほうが良いという説もあります。口の中の食べカスが歯垢になるまで48〜72時間かかるのだそうです。特に寝ている間は唾液が減って口の中に菌が増えやすくなるので、寝る前に徹底的に汚れを落とすのが効率的なんだそうです。ただし、毎食後歯磨きをしないにしても、食事をしたら楽器を吹く前にしっかり口をすすぎましょう。口の中の酸を洗い流すことにもなり良いと思います。

 歯と歯の間、歯と歯茎のすきま(歯と歯肉の間には誰でも必ずすきまがあります)の汚れは歯ブラシだけでは届きません。歯ブラシだけで落とせる汚れは、どんなにていねいに磨いても、せいぜい60%程度なのだそうです。歯間ブラシ、デンタルフロス(糸ようじ)を併用しましょう。薬局に行けば売っています。

 歯ブラシを使う時には『毛の弾力』を生かして、歯だけではなく歯茎もマッサージするように磨いてください。歯並びが入り組んでいるところや届きにくい奥歯などは、特に念入りに磨きましょう。

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