2013/08/30(金) 生演奏とレコーディング
 群馬県高崎市が整備する録音スタジオ,『高崎サウンド創造スタジオ』の運営責任者に,音楽プロデューサー多胡邦夫さんが就任なのだらそうだ。

 ぼくはほとんど聴かないけれど,今,J-Popなども打ち込みが主流。コンピューターが作った音だ。昔,冨田勲さんという巨匠がモーグ・シンセサイザーを使って音楽を作ることを始められた。あの頃は,生音の楽器にはない音,現実には存在しない新しい音を作り出して創作範囲を広げることが,コンピューターを使う大きな目的だったはず。

 ところが現代の打ち込み,コンピューター音楽を見てみると,生音の代用,つまり,実際に存在している楽器の音をただ『まねる』だけになってしまっているように見える。生演奏でできる音楽の,良く言えばレプリカを,ただコンピューターで作っているだけだ。そんなものは創造でもなんでもないと思わないか。

 コンピューターで作ったほうがコストは安く上がるかもしれない。が,所詮は『真似』でしかないので,生の楽器の演奏には絶対に勝てない。コンピューターはミスはしないかもしれないけれども,そんなことは音楽とは関係がない。コストのことばかり考えて,大切なことを切り捨ててきたのだから,J-Popがダメになるのも当然だ。

 こうして生演奏が廃れていき,工業製品をつくるのと同じようにして音楽が作られていくことが多くなってしまったせいで,たとえば一口坂スタジオなどの老舗スタジオが廃業に追い込まれてしまった。そんな中で,自治体がこうして生演奏志向のスタジオを運営するということはとても有意義だと思う。


記事はこちら
『音楽で「高崎ブランド」発信…サウンド創造スタジオ』
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20130829-OYT8T01442.htm?from=tw