2012/02/21(火) ことばの呪縛
昨日とおとといの日記で奏法のことを書いた。そこで、イメージと実際の身体の動きが混同されていると書いたけれど、実際に楽器を演奏するときに身体がどういうふうに働いているのか、正確に知っている人って専門家でも少ないと思う。もちろん、自分も含めて。
脇腹を強く押さえてブレスをすると、脇腹が押し返してくる。これ、横隔膜が下がって腹圧が上がるから脇腹が膨らむんだ、との説明と、脇腹の筋肉(腹斜筋)が横隔膜を下げるために働いているんだ、との説明と、2通りある。そもそも、横隔膜は筋肉だという人と、ただの膜だと言う人とがいる。
医科学や解剖学と管楽器の演奏、そのどちらにも精通している人ってめったにいないから、こんなことになっているんだろうね。まぁ、理屈を理解したからどうなんだ? とも言えるけれど、でも、自分の身体を正確に知る、認識することは、大きなプラスになると思う。だからボディ・マッピングが成果を上げるわけだ。
感覚的表現の定説が、時には実際の身体の働きを邪魔することもあると思う。たとえばアンブシュア。『くちびるで掴んじゃいけない』とか、『くちびるの中心はやわらかく』など、よく言われることだ。これはたしかに正しいと思うのだけれど、だからといって、くちびる中心の筋肉を使っちゃいけないって思ってしまったら困ったこと。そこの筋肉が働かなければアンブシュアはできない。
アンブシュアでもうひとつ…。『口角が動いちゃいけない』というのはよく言われるし、ぼくもよく言うのだけれど、だからといって、口角に力を入れて固定するわけではない。そう思ってしまうと、かえってよくないと思う。いろんな流派があるから絶対そうではないけれども、そこは固定されているというより、結果的に動かないだけなのだ。
書けばまだまだ出てくると思うけど、こんなふうに、ことばの呪縛ってたくさんあると思う。伝えるのって難しい。