2012/07/15(日) 金管楽器を吹くということ(2)
 なにも悩まずすくすく育った天才肌の人って、いる。でも、そういう人は、一回壁に当たったりつぶれたりすると、理論を持っていないものだからそこでどうにもならなくなるんだと、昔聞いたことがある。ぼくも、そういうものなのかもしれないと思っていたけれど、そもそもそういう天才肌の人って、ハウツーや理屈で育ったのではないのだから、つぶれることはありえないと思う。

 理屈で自分の身体を強いてきて、その結果ゴミが山ほどたまってにっちもさっちも行かなくなるっていうことが、つぶれるっていうことなんじゃないかと思う。解剖学の知識で、ゴミにならないで役に立つのは唯一、ボディ・マッピングだけだと思う。自分の身体の構造について無意識に間違って認識してしまっているところを修正していこう、っていうのが、ボディ・マッピングだからね。

 何年も教えに行っている小学校ブラスがある。そこの子たちにはぼくは、アンブシュアや奏法の理屈を教えたことがない。でも、たとえばホルンの子はハイFを高らかに吹き鳴らすし、トロンボーンだって、吹いて聞かせればハイBやハイCをばんばん吹く。もちろんそんな子はごく一部だけれども。顧問の先生に、「ぼくのほかに誰か教えに来てるんですか?」って聞いても、いいえ福見先生だけです、との答え…。

 そういうのは天才で、それ以外の凡人には理屈が必要なのか…。いや、凡人に貶めないでも導く方法が、きっとあると思う。たとえば、隣に座って吹いて聞かせただけで、別人のようになる子たちをこれまで何人も目撃してきた。音楽はお勉強じゃないし、楽器はハウツーじゃない。

[明日の日記に続く…]