2011/11/16(水) 音色
 音色の話だけれども、近くで聴くとどちらかというと線の細い音でも、残響の多いホールだといい感じに聞こえたり、逆に近くでは響きが多く聴こえる音が、ホールに行くと輪郭がぼやけて聞こえたりすることがある。

 バロック時代のトロンボーン、サックバットという楽器がある。細いボア、とても小さいベル、浅い小さめのマウスピース。近くで聴くと明るい線の細い音だが、これは中世ヨーロッパの教会で演奏される前提の楽器だ。あの残響たっぷりの教会では、とてもいい感じに聴こえる。逆にモダンの楽器をそんな残響の多いところで吹いたら、ボワンボワンして何だかわからなくなるかもしれない。

 われわれ現代の演奏者はいろいろな時代の音楽を演奏するし、いろいろな条件の会場で演奏する。と、音色的にはほんとうは大変な吹き分けを要求されることになるよね。太くて響きの多い音が常に良いかというと、必ずしもそうではないだろう。自分に聞こえる音と会場で聞こえる音はずいぶん違うという問題もある。

 聴衆として聴く立場になると、いろいろ考えさせられる。勉強になります。