2010/12/11(土) 身体で
競艇界のトップに君臨する松井繁という選手がいる。なにしろ『王者』の称号で呼ばれているレーサーだ。強い。ぼくはどっちかっていうとアンチ松井なのだけど(強すぎるから)、その松井選手のインタビューが雑誌に出ていた。その記事を読んで、やっぱりトップの選手なんだ、と感服した。
ボートレーサーは、レースで自分が乗るボートのエンジンなどの調整も自分ですることになっている。調整しては試運転に出て、セッティングを仕上げていく。松井はインタビューで、『それを体で感じるかどうか』だと言っている。『結局は自分の体で感じなければいけない』のだと…。あぁ、音楽と同じだ、と思った。
音楽も、自分の耳で感じられなければ意味がない。理屈で捉えているだけでは、まったく無意味だ。演奏の現場でも、指導の現場でも。たとえば『長三和音の第3音だから低め』だと理屈で知っているだけでは、意味をなさない。それはもうあらゆることがそうだ。耳で感じて耳で判断できて初めて、役に立つし生きる。結局はそれが『聴こえ』なければ何も始まらない。
でも、これはそうすぐにできるものではない。ぼくにもまだまだ聴こえていないこともあると思う。松井も『回数を重ねること』だと、『それを感じようと思って試運転に行くかどうか』だと言っている。音楽も同じで、何かに取り憑かれたような集中力で聴いて聴いて、とにかく聴くことだと思う。近道はない。音楽も頭でおぼえるのではなく、耳で感じるものだ。