2008/03/03(月) 歯の話(2)
 八重歯を抜く決心をしたのが、高校2年の秋、定期演奏会の1ヶ月半前だった。今考えれば無謀なことをしたものだ。トロンボーン吹きのみなさん、こういうことで悩んだら決して一人で考えず、必ずプロのレッスンを受けてくださいねっ!!
 ぼくは、思い切って歯医者に行って八重歯2本抜いてしまった。で、どうなったか…。音が出なくなってしまった!! なんとか出るのはせいぜい1オクターブ。チューニングBも出ない…。高校2年の秋。あと1ヶ月半で定期演奏会…。今でこそぼくは、『調子がいい』とか『調子が悪い』などと人に言うのが嫌いだが(調子を訊かれれば良かろうが悪かろうが『普通』と答える)、当時は調子が悪いと「ああ調子が悪いっ!!」と、もろに感情に出す子だったので、トロンボーンパートはそのたびに泣く思い(だったと定演プログラムのパート紹介に書かれた)。オレって最低のパートリーダーやね(泣)。
 学校の書庫に『マジオ』(金管教本)があった。わらにすがる思いで、それを読み、練習した。楽器を持って帰って、夜中まで練習した。『これをやれば絶対吹けるようになるんだ!!』と信じた。信じるしかなかった。
 マジオはアメリカの名トランペット吹きで、ある日凍結した駅のホームで転倒、くちびると歯を痛め、音が出なくなってしまった。そこから『マジオメソッド』を開発し、奇跡の復活を遂げた人。ひどい音を他人に聞かれたくなくて、湖の真ん中までボートを漕ぎ出し、そこで練習したのだという…。そんなマジオの姿をあのころの自分に重ねていた。

(明日に続く…)